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カテゴリ:ラグビー
43対0、これがまぎれもない現実である。
王者東芝府中は、史上最強といわれる早稲田大学を粉砕した。 ここまで完璧にチンチンにされると、かえってさばさばして、冷静に敗戦を受け止められる。 昨秋の東芝Bチームとの対戦が、確か66対17くらいだったと思うが、その差をどれだけ縮められるかと思ってみていたのだが、東芝も万全の準備で早稲田に敬意を払い、しかして手を抜かず、圧倒的なパワーと技術で受け止め、そしてノックアウトした。5トライ取れば早稲田にも勝機があるかな、などというのは淡い春の夢物語。 早稲田のラインアウトは通用しなかったし、どでかい外国人には吹っ飛ばされた。自慢のバックス陣は厚い壁に止められ、逆に東芝は早稲田のお株を奪う早い展開で、ディフェンスラインを打ち砕いた。 しかしながら、前回のトヨタ戦、そしてこのたびの東芝戦は、早稲田の歴史においても、日本選手権の歴史においても記憶に残る名勝負だったと思う。早稲田にこだわりがない人でも、「いいゲームを見た」と満足できるのではないか。 早稲田も知恵を使いながら攻め続け、勝算がなくなった後半20分過ぎも、最後までトライを狙ったし、「決して勝負を捨てない」「少しでも点差を縮める」という意識の高さは、高校、大学のラグビー部に所属する選手には参考になったのではないだろうか。 それのみならずトップリーグの選手たちにとっても、特にトライ数や得失点差が順位に影響するのだから、なおさらだ。これまでどれほどの選手たちが、途中で試合を投げてしまったことか。どれほどの選手が意識がばらばらになり、チームとしての機能を失ったか。たとえ大差で完封されても、これだけのスピリットを見せつければ、お客さんは次の試合もスタジアムに足を運ぶ。サポーターの気持ちは途切れない。 その意味では、前回のトヨタ戦の後、トヨタはともかくトップリーグの幹部には「決してあってはならないこと」などと言って欲しくなかった。日本ラグビーの再生の鍵を、また人気復活への道筋を清宮監督とその仲間たちが指し示したのだから。 清宮は春からサントリーの監督になる。それはそれでトップリーグをかき回してくれるものとして期待したいのだが、邪道とか、何を馬鹿なとお叱りを受けるかもしれないが、いずれ清宮には、法政とか、同志社とか古豪、強豪と呼ばれるチームの監督として早稲田に挑んでもらいたいという気持ちがする。大学スポーツが基本的に自大学OBによって指導されていることは承知しているし、宿敵チームOBを迎え入れるということは抵抗が強い。 裾野が広がらなければ、競技人口は先細りする。(一方で高く強く頂点を引き上げようと努力しなければ裾野も広がらない。)早稲田だけが改革しているというのでは、これからの時代早稲田が常勝軍団となっても、競技全体はしぼむことになりかねない。 日本ラグビー界が、圧倒的な指導者不足を抱える中で、どのようにして次の世代の高校、大学、社会人の監督・コーチ陣を養成して行くのか、残念ながら日本協会には全く将来への展望がないように見える。 清宮が三人いれば、大学ラグビーはもっと人気が回復するのに。清宮が五人いれば、秩父宮も花園も観客が入るのに、などどたわけた事をこの数年感じてきた。 史上最強の早稲田と、史上最強の明治が対戦していたらどうだったのか、史上最強の早稲田と史上最強のタイガージャージが激突していれば、その勝敗の行方は。などなど。 大学選手権の八強のチーム、トップリーグの四強のチームは、この日本選手権での早稲田大学の二試合を、クラブチームはタマリバを一つの羅針盤としながら新しいシーズンの準備をしてもらいたいと思う。 早稲田の皆さん、三十名弱のスタッフ、そして百四十名の部員の皆さん、お疲れ様でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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