小説ブログ 「GO!GO!花園」

2010/03/30(火)15:10

(1)嘘も方便 (前編)

迷える羊の幸恵さんの巻 (完結済)(11)

C国Q市に駐在する日本人駐在員の集まる駐在員団地で奥様たちが繰り広げるオムニバス物語。フツーな人がいないといわれるGOGO団地。人の多く住まうところ、愛あり、憎しみあり、噂あり。駐妻の秘密の花園。 GOGO花園って何?って方は、第一回のコチラから  ○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●  迷える羊の幸恵さんの巻     (1)嘘も方便 (前編)     小学一年生のまどかが登校して行った後、秋元幸恵と亨夫妻は朝食のテーブルを囲んでいた。まどかの通う日本人小学校は二人の住まう豪豪花園からバスで30分。Q市の科学技術開発地区にあるので、7時20分には登校のバスに乗って行ってしまう。幸恵が子どものころは子どもの脚でも徒歩10分の小学校に通っていたことを引き合いに、小学一年生になったばかりの子どもに30分のバス登校はかわいそうと実家の母などは言うのだが、当人は同級生や大きいお兄さんやお姉さんとバスに乗り合わせていくのが楽しいらしく、毎朝喜んで乗車している。   夫の亨は、豪豪花園に住む会社の人たちと車に乗りあって8時過ぎに出社するのでバスを見送ってかえってきた幸恵とすごす時間が毎朝30分弱ある。この習慣は日本にいた当時はなかったもので、当初は二人とも戸惑ったのだが、帰りの遅い夫と夜に話をする時間はほとんどないので、ちょうどよいコミュニケーションタイムになっている。   とはいっても、子どもがいないのをいいことに、二人して食卓に新聞を広げ、読みながら朝食を食べるあいまに、ちょっと話をする程度だ。 「このパンおいしいね、どうしたの。」 「でしょ。だって、手作りだもん。後藤さんていう、川向の大吉城に住んでる人にいただいたの。」 「なにそれ、だいきちじょう?」 「ほら、暇日ホテルの斜め向かいぐらいにあるじゃない、黄色い6階建てくらいのマンション、あそこ結構日本人住んでいるのよ。」 「ふーん。その人、パンなんか自分で焼いちゃうんだ。すごいね。」 「そう、お教室でもひらけばみんな行くのにって言ってるんだけど、大吉はあんまり広くないし。それにやっぱり材料手に入れるのが面倒なんだって。」   しばらく、無言が続いて、お互い新聞に集中する。読んでいるのは日経新聞だ。会社の福利厚生の一部として、社費で家庭における日本の出版物の定期購読が認められていて、駐在員家庭は大体みんな新聞や月刊誌を取っているのだが、日経新聞は他紙よりも割高で、日本円で月々2万円近くかかる。2万円もするのがもったいない気がするのと、ほかに日本語の読み物があまりないせいもあって、Q市に越してきて以来、幸恵は以前よりずっと熱心に新聞を読んでいる。 (つづく)先週末にすっころびまして、PCの前に座っている時間が限られて 更新が遅れてます。とーっても情けない状況です。来てくださってる皆さんごめんなさい。    

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