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カテゴリ:読書
『永遠の出口』
著者 森 絵都 集英社 大好きな森絵都の作品。小学校3年生から高校3年生まで、一人の少女が過ごしてきた日々が九つの章にわけて綴られている。 小学校3年生の第一章は、私は、<永遠>という言葉の響きにめっぽう弱い子供だった、という文章から始まる。 この第一章は素晴らしい。 大してとりえもないのに、なぜかクラスで一番モテる女の子、好恵と主人公は同じグループに属しているが、主人公はあまり彼女を好きではない。 その好恵から「お誕生会」に招かれ、グループの女の子たちは期待して出かけていくが、何のもてなしもなく、あげくは好恵の母親から冷たく「うちはお誕生会なんてやらないから」と言い放たれる。 プレゼントを渡したのに、何一つ見返りがなかった彼女たちは激怒し、クラスメイトたちに好恵と好恵の母親の悪口を言いふらすが、逆にみんなは鬼母を持つ好恵に同情してしまう。 幼い女の子の、不当に得をしていると感じる相手への真っ正直な残酷さや、いくら理不尽でも太刀打ちできない絶対的な存在としての大人などが本当にリアルに描かれている。 ラスト、好恵に母親の名誉挽回を頼まれて、必死で考える主人公が、「永遠も一生」もどうでもいい、とひとりごちるシーンが、これから人生の難題に備えて立ち向かっていく凛々しさに満ちていた。 で、第二章。 主人公は5年生に進学している。新しい担任は、生徒に対して独裁者のように振舞う黒魔女だった。あまりに理不尽な彼女に対して主人公は幼馴染の少年を動かし、クラスのみんなで立ち向かう。 あれ、これって・・・。 今年の秋に放送してた、天海祐希主演の『女王の教室』そっくりじゃないですか?? そう思って検索してみると、あのドラマ盗作疑惑があったんですってね。 全然知らなかった(世間に疎くなってるなぁ)。 いやー、ずいぶん気に入って見ていたのに。 随分物議をかもした、前半のあの鬼教師の描写ぶりは見事だなぁ、脚本家すごいなあ、と感心してたのにがっかりだー。(今頃) しかもテレビ局側は「そんな本見たことも聞いたこともない、100%オリジナル」と申されているそうな。 大嘘こきやがれー!!(怒) 土台、いまや児童文学の旗手、森絵都先生に対して失礼極まりないぞ。 テストの配り方とか、成績優秀者への優遇ぶりとかは見逃せても、クラスの人間関係やら少年のセリフやらそのまんまやんかー! そうはいっても、面白いドラマだったことに間違いはない。 テロップで「原作」とか「参考文献」とかでこの本の名前をあげときゃ済んだ話でしょうが、脚本家さんとテレビ局さんよ!それとも著作権料とか支払うのけちったんかい! で、第三章以降はというと、少しずつ主人公の感性と、私自身の少女時代がずれていってあまり共感できず、さほど印象に残らなかった。 親に裏切られて不良になっちゃう幼稚さとか、恋愛に夢中になる思春期とか、ひねくれ者だった私はあんまり理解できなかったからなぁ。 というわけで、この本は私にとって、第一章が宝物。 このひりひりした感じは大好き! ああ、子供の頃ってそうだったなぁ、としみじみ思い出しましたよ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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