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テーマ:お勧めの本(7892)
カテゴリ:大人の読書感想文
また、ネタバレありますよ。 「嫌われ松子の一生」下巻は、故郷を後にして転がり落ちて いく松子の人生と、叔母である松子の一生を調べていく笙の ストーリーが徐々にオーバーラップしていく。 松子は中学校教師から風俗嬢となり、そして痴情の縺れから 殺人を犯し、服役囚となる。8年もの間収監されて、出所後には 美容師としての再出発をするものの、また事件を犯してしまう。 彼女の人生が転がり落ちて行く原因は男だ。松子は誰よりも深い 情で、男性を愛するのだが、騙され、逮捕され、暴力を受け、 いつまでたっても本当の安息を得ることができない。松子は ただひたすら男性を信じてすがり付くのだが、結果的に男性は 松子から離れてしまう。クライマックスは、50代になった松子 が殺された事件の真相が明らかになっていく。 昨日のエントリーでも書いたのだが、松子の流転の人生は、 ただの駄目女の自堕落物語ではない。不器用な一人の女性が、 不器用なりにも一生懸命に愛を求めた激流のような物語だ。 本来、手先が器用であり、単純な仕事であればその才能を発揮 できる松子が、あまりにも不器用な生き方しかできなかった。 なんとなくではあるが、「そういう人、いるよなぁ」と思った。 頭が良くて正しいことが言えるのだが、他人から愛されない人。 重すぎる情で、好きな人が離れてしまう人。「嫌われ者」という 一言でくくることは簡単ではあるが、本質的には良い人なんだと 思う。ただ不器用なんだと思う。 終盤、歳をとって昔の美貌が崩れ落ち、不潔で不細工になり、 精神的にもおかしくなっていった松子。その瞬間だけを切り取れ ば、確かに目を背けたくなるような人かもしれない。そんな松子 の人生が、波乱に満ちた愛憎あふれる人生だったのだ。 以前観た映画、「ヨコハマメリー」にも共通する何かを感じた のだが、他人の人生は自分が思うほど単純ではないのだろう。 基本的には全く真似をしたいと思えない松子の人生ではあるが、 唯一"ひたむきに生きる"ということには共感を感じられた。 そして、確かな読み応えを感じられた、凄い物語でした。 面白かったっす。 GOLA お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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