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テーマ:お勧めの本(7884)
カテゴリ:大人の読書感想文
時代は江戸末期。剣の腕もさることながら、学芸にも 人並み以上の才覚を持ち、武士の鑑と周囲からも囁かれる 程の人物であった、御家人の別所彦四郎。度重なる不運により 出世の道を絶たれ、実家に出戻って僅かな備蓄で酒をすすり 蕎麦を食う生活となる。その彦四郎が酔った勢いで祈った祠は 神は神でも貧乏神の祠だった…。 昨年映画化されて少し話題にもなった、浅田次郎の「憑神」を 読み終わりました。内容はなかなかコミカルで、楽しめる作風。 次から次へと襲い掛かってくる不幸に対し、侍ならではの馬鹿が つくほどの生真面目さで対峙していく彦四郎。貧乏神達は彦四郎 の実直な性格と誠実な対応に心を打たれ、難を逃れる秘術を伝え て彦四郎の力になろうとする。中盤までは、まぁ結構軽い感じの 話ですんなり読めて、クライマックスはやや真剣な雰囲気が漂い 面白さが増しました。 面白いなぁと思ったのは、当時の武士の世界というのが、基本的に 今の会社の世界とさほど変わらないということ。能力だけで出世 するのはなかなか難しく、時には運や縁がないと思うようには いかない社会なのである。義を貫こうと思えば思うほど、体制から は疎まれたり、やっかいもの扱いを受けることもある。現代の 社会では、「空気よめよ」で終わるかもしれないが、武士の世界 では、義に生きることこそが武士の本来の生き様でもあり、ここで 苦悩する彦四郎の姿がなかなか良い感じなのである。いや、僕も そうやって、微動だにしない信念を持って行動できたらいいなぁと 思わせる部分もありました。 浅田次郎という作家は、本当に天才だと思う。舞台が江戸時代 だけに、多少わかりにくい表現もあるのだが、末端に拘らずとも 読み進めていくことで、世界感や雰囲気は十分に伝わるレトリック を持っている。文章の達人と言っても過言ではないだろうな。 そうそう。今日の昼に病院に行って薬を貰って服用しました。 かなり喉の痛みがあって、頭痛もあったんですけど薬を飲んで 数分であっという間に痛みが消えて元気になっちゃいました。 なんだろこれ。 何だか僕に憑いていた疫病神が逃げ去ったような気がして、変に 気分が高揚してしまいました。が、数時間後薬の効力が弱まると、 また痛みが出てきたので、人間の体は正直だなぁという結果に 終わりましたけどね。 幸運の女神にとり憑かれたいですなぁ…。 GOLA お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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