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テーマ:お勧めの本(7395)
カテゴリ:大人の読書感想文
「邪魔」下巻。 放火の疑惑をかけられた夫。マスコミと警察に追われる日々。 勤め先のスーパーでは、労働条件の改善を求めて闘争を始める 同僚があらわれる。当たり前に思っていた平穏な日々が崩れ始め、 自分の子供達にまで、その影響がおよびはじめる。信じたい心と、 信じることができない心が絡み合い、少しずつ壊れていく家庭と 自分の心。 一般的なミステリ小説であれば、刑事が犯罪を暴いて、犯人を 追い詰めてエンディングを迎えるのだろうが、この小説はちょっと 違う。暴くべき犯罪については大して触れず、そこから始まる物語 を細かく追い続けていく。そして、その物語は単に登場人物達の 物語だけではなく、警察や、マスコミや、政治活動家など、社会 組織が抱えている矛盾や欺瞞などへの嫌悪感が滲み出ている。ここ が作者の本音なのではないだろうかとも思えた。 最後の解説が結構面白く、作者がこの物語をどんな考えで書いて いたか。また、作者がこの小説で受賞したときのエピソードなど、 奥田英朗の人となりを知る上でも、楽しめる内容となっていた。 彼の作品は、いろいろと読んでいるが、本当にどんなジャンルでも 書くことができて、且つ奥田風の味わいをきっちり出している。 宮部みゆきと同じく、現代小説家の中ではもっとも優れた作家の 一人ではないかと思っている。 GOLA お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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