ねこのばば
畠中恵の「しゃばけ」シリーズ第三弾、「ねこのばば」読了。史上最弱の主人公、長崎屋の若だんなこと一太郎。江戸の町で起こる事件を推理し、妖怪達の力を借りて解決していく、大江戸人情推理帳です。本編は、茶巾たまご/花かんざし/ねこのばば/産土/たまやたまやの五つの短編で構成されており、いつものとおり洗練された推理と、江戸情緒たっぷりの物語となっている。シリーズを重ねる毎に、それぞれのキャラクターを深堀する内容が盛り込まれており、次も読みたくなってしまう展開が心憎い設定となっている。また扱っている題材も、程よく洗練されており、読み手にとっては面白くなるばかりだ。例えば、ある物語で殺人を起こした犯人が語る言葉。「なぜ人を殺してはいけないのか?」という言葉。このような言葉は、ここ数年実際に起きている無差別殺人の犯人が語っている言葉と微妙にリンクしており、現実社会が抱えている病的な現状を風刺していると思われる。また、ある物語でも、殺人事件の犯人は「人助け」の為に金が必要だから人を殺したと言う。これもまた視野の狭さから事件を起こしてしまう最近の若者の事件を思い起こさせる。読者を楽しませ、ぐっと引き付け、ちょっと考えさせる。そんな軽さと深さを兼ね備えた一冊でした。すごく面白かったです。GOLA追伸:試験勉強の為、しばらく読書から遠ざかります。11月になったら読書を再開予定です。