S RED
ザ・スニーカー100号記念アンソロジー
著:吉田直&安井健太郎・三田誠・岩井恭平・林トモアキ・沖方丁・森岡浩之
角川スニーカー文庫編集部=編
角川スニーカー文庫 角川書店
『トリニティ・ブラッド』と『レンタルマギカ』、私の大好きな二作品が載っていることから購入を決定。
実際に読んでみると、『消閑の挑戦者』も『オイレンシュピーゲル』も面白そうで、すごく気になりました。えー、これ以上読むものを増やしても読み切れないので自粛しますが(汗)。
……でも、私が個人的に好きだった短編はBLUEの方にも載っていないのが残念。そんなに『超能力×諜報機関』ネタって需要が無いんですか(涙)。
<トリニティ・ブラッド
appocrypha Hard Rain>
……ああ、やっぱり違う。
亡き著者の親友が筆を取ったとしても、やはり文体が、エピソードの描き方が。
最後のトリニティ・ブラッドということで、大切に読み進めました。
その愛しさが、いつしか切なさに変わり……読み終わったとたんに泣きそうになりました。
代筆してくれた安田さんも今は休筆して久しく、続編を読める可能性は閉ざされたままです。
それでも。
このお話が読めたことは本当にうれしい。収録してくださって本当にありがとうございました。
<レンタルマギカ
魔法使いの祝祭>
魔法をめぐる物語の短編です。
本編は第三部に突入してどんどんハードになっていますが、こんなにふんわりとした展開も『レンタルマギカ』の魅力ですよね。
また、魔法の理論がこのお話にも散りばめられてたり、アディと穂波の友情と恋愛もしっかり描かれていたり。……珍しく穂波が可愛いのもポイントです。
この物語、一読の価値あり、です。
<消閑の挑戦者
夏のドミノ>
シリーズの主軸である、”超飛躍(ウルトラジャンプ)”と呼ばれる能力と、その持ち主達の特徴についての説明に当たる短編です。
うん、どちらもすごく面白いギミックですよね。
むろん、小説である以上はギミックとは別にテーマがあるべき……とは他人からの受け売りの言葉ですが。
道徳心や倫理観の欠如してしまった少女が周りの人と関わる姿に何を感じるか、それを問われているように私は思いました。
<パリエルがしがしいきましょう>
ほのぼのとブラックユーモアの融合した、不思議なファンタジー。
読み終わった後で、ほんわりした気分になれる一編です。
<オイレンシュピーゲル
三匹のタンタン・タカタカ・タンタンタン>
完全に腐敗した社会と、その警察に属する三人の少女の物語。
SF的なフレーバーも、視覚的な要素も、過激な言葉も、この物語の本質では無いんですね。
ヒロイン達の必要以上に退廃的な服装も、過激すぎる言動も、社会の歪みや心の悲鳴に直結している必然性がある故のもの。
彼女達の目に余る『悪ふざけ(オイレンシュピーゲル)』が、実は悲壮な生い立ちや現状からくる悲鳴であり、その理性と感情をつなぎとめるための行動であるのが悲しいですね。
序盤の数ページで眉根を潜める人も、きっと終わりの頃には彼女達に共感することでしょう。
<いつものように爽やかな朝>
個人的に最も苦手とする内容なので、レビューは割愛。
読むんじゃなかった。(←トラウマが増えて号泣中) |