カテゴリ:その他、芝居(ドラマ・映画・舞台)
四つの紙屑。
四つに引き裂かれた、守るべき者達の名を、次郎は硬く握り締める。 「明日なんて、来なけりゃいいのに」 家族が引き離される、その手助けをしなくてはいけない。言葉に込められた血を吐くような思いが、テレビの前の自分の心も抉りました。 「確かに、今までの私はダメダメでしたから」」 ダメダメな人間は多いし、朋美と同じ駄目な部分を持つ自分は思わず肉親憎悪を抱いていたのは秘密です(←…己の方が駄目人間だろ)。 だけどその理由を自分で学び取り、克服できる彼女は本当に偉いですよね。 まっすぐさに『諦めない』強さ、それに柔軟さも学んだ今の朋美は、凛々しいぐらいです。 本当に魅力的な女性に成長しましたよね。 その一方で次郎もまた、成長の兆しが見えます。 「やってられるかよっ!」 そんな本音を、彼は冗談で誤魔化して逃がしていきます。それができる分だけ、社会に適応できたんですね。 その一方で、”自分の全てである夢”と同じだけ、”家族の事”も大事にしたり。 まだまだ子供っぽくはあるのですが、それでもしっかり大人になっているのを感じます。 「子供達の中に土足で入っていく」 でも次郎もまた子供達に、心の中へ土足で入られていましたよね。 互いに土足で入られながら、互いにその窓を開けて、”行き場を失って澱んだ空気”を入れ替えていきました。 その過程の中で、互いに家族として認め合っていったことを、ふと思い返しました。 「一度ゆっくりと話をしてみたかったですね」 …嫌味なぐらい爽やかに元一郎は去っていきました(笑)。きちんと自分の限界を認める、大人の部分を見せ付けていきましたよね。 元一郎を始めてかっこいいかも、と思っちゃったり。 でもそんな言葉の裏には、『自分も風を入れ替えて欲しい』という思いがあったのかもしれない。そう感じました。 「お前、そんな言葉どこで覚えてくんだよ」 この年で大の大人を振る少女、葵(笑)。 将来が楽しみすぎます、本当に。 ナナエを説得するちひろ。 それは”理”を説くのではなく、少女の”悲しみ”を共有することでした。 そして頑なな心を、”悲しみ”を通して自分の心と重ね、さらに重ねていくことで、支えることでした。 短いシーンですが、その手腕に感心してしまいました。 「何でそんなに急いで大人になりたがるんだよ!」 子供なのに、大人にならなければいけない。そんな”歪み”を次郎は告発します。 少女は大人になることで、多大なる痛みを受け止めようとしていたのだと、言い返します。 この出来事で、家族の抱えた”歪み”とその原因を、次郎は始めて実感します。彼は少女をその”痛み”ごと受け止めます。 そして、家族がその”歪み”を抱えることに疑問を覚えます。 ”歪み”を抱えたまま、バラバラになることなど、彼には耐えられなかったのです。 ”歪み”を吐き出し、子供本来の姿に戻る少女を見て、次郎は感じていたはずです。 まだ”歪み”は正せると。 ならば、まだもう一度”家族”に戻る『最終のバス』も出ていないと。 「まだ間に合うよね…最終のバス」 彼は、最前の朋美の言葉から救いを見出します。 「経営が成り立たなくなってしまえば、どうしようもないのよ」 彼は分からないと言い切ります。 『どうしようもない』という言葉を受けれないために。 経営という言葉によって、家族の”歪み”を肯定しないために。 そしてまた、朋美も一緒に『最終のバス』に乗るといいます。 それは次郎の決意を肯定することでもあります。 何度も繰り返してきましたが、”他人を肯定することは、癒しでもある”んです。 次郎は家族との別れや両親達の諦めから傷ついた心を、朋美の”肯定”によって癒されたんですね。 …子供達のエピソードでは涙腺が硬い自分ですが、次郎が子供を見て硬く決意するシーンには涙が滲んでしまいます。 『絶望的な状況の中で、本当に大切なものを選び取り、そのために茨の道を歩くことを決意できる』 それは人間が追い求め続ける、普遍であり理想である強さ。 子供の頃のコンプレックスじゃない。惚れた腫れたのごたごたじゃない。ちっぽけな個人的なプライドじゃない。 ”家族全体の存在全てをひっくるめて肯定して、彼らを拒絶する世間や経済の困難を受け止めること。” そんな『矜持』と呼ぶに値するだけの、でかい代物を次郎は背負うつもりでいます。 確かに大人の癖にとんでもなく子供っぽくってかっこ悪い次郎だけれど。 でもその分だけ、とんでもなくカッコ良過ぎる。 その強さが眩しすぎて、涙腺が緩んでしまうんです。 「最終のバスに、私も乗っていいですか?」 家族を守るために、彼は足掻く。 その背中を押すように、朋美は囁く。 ――今、二人の戦いが始まる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/06/08 09:00:20 PM
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