H18 再現答案(商標)■商標法(4ページ) 評価:B1.設問(1)について (1) 拒絶理由(15条)の検討 丙の出願は、乙の出願に対して先願先登録(4条1項11号)である。 両出願の商標は「CBA」で同一、指定商品は「家具」は同一、 「マグカップ」は「家具」とは非類似である。 よって、指定商品「家具」については法4条1項11号違反の拒絶理由 は妥当である(15条1号)。 (2) とりえた対応策 1 意見書提出(15条の2) 以下の対応策によって、拒絶理由(15条1号)が解消した旨を 主張できる。 指定期間内に提出する必要がある点に留意する(15条の2)。 2 権利譲受 丙から当該商標権を譲受けられれば、「他人」の要件がはずれ、 法4条1項11号の拒絶理由は解消するからである。 移転は登録が効力発生要件である(準特98条1項1号)。よって、 乙は、丙から商標権を譲受けた旨の譲渡証書を添付して、移転登録 申請書を提出する必要がある点に留意する。 3 商標権消滅に係る措置 丙の商標登録に、無効理由(46条1項)、異議申立理由 (43条の2)、取消事由(50条等)があれば、乙は、申立て、 審判請求をすべきである。 認められれば、丙の商標権は消滅し(43条の3第3項、46条の2、 54条)、拒絶理由は解消するからである。 なお、申立可能期間(43条の2)、除斥期間(47条、52条等)に 留意する。 また、法4条1項13号違反に留意する。 更に、決定、審決確定まで審査を中止してもらえるよう請求する こともできる(準特54条1項)。 4 手続補正書提出(68条の40) 前述の対応策は、「家具」についても権利取得するためのもの であるが、「家具」については断念し、「マグカップ」のみ 権利取得する場合には、指定商品「家具」を削除補正する (68条の40)。拒絶理由は解消するからである。 審査に係属中にする必要がある点に留意する(68条の40)。 5 分割(10条1項) 「家具」と「マグカップ」を分割することもできる(10条1項)。 「マグカップ」については、出願日の利益(10条2項)を得つつ、 早期に権利取得を図ることが可能となり、拒絶理由を有する 「家具」については、ゆっくり争えることが可能となる。 2.設問(2)について (1) 「マグカップ」について権利取得するためには、前述のように、 分割出願(10条1項)を利用することができる。 分割出願は、審査、審判、再審、又は拒絶審決取消訴訟の係属中に できる(10条1項)。 よって、甲は分割出願を行うために、拒絶審決謄本送達日より 30日以内に、拒絶審決取消訴訟を提起する必要がある(63条1項、 準特178条3項)。 (2) 「マグカップ」を分割出願とし、「家具」は原出願に残して おくべきである。 逆の場合には、拒絶理由を解消するために、原出願から「家具」を 削除する必要がある(準特施規30条)。 ここで、法68条の40の補正は、遡及効を得られるが、審査、審判、 再審に係属中にしかできない。 よって、この「家具」を削除する補正は、法68条の40の補正とは いえず、遡及効を得ることができない。よって、拒絶理由は解消 できないからである。 (3) 他に拒絶理由(15条)なければ、乙は、指定商品「マグカップ」 について商標登録を受けることができる。 3.設問(3)について (1) 侵害成否 1 差止請求とは、商標権の侵害、又は侵害のおそれがある場合に、 その侵害の停止又は予防を請求することをいう(36条1項)。 侵害とは、権原又は正当理由なき第三者が登録商標若しくは その類似商標を指定商品等若しくはその類似範囲において 使用することをいう(25条、37条1号、2条3項)。 2 甲が顧客に無償提供するマグカップに表示している商標 「CBAコーヒー」は乙の登録商標「CBA」と類似している。 商品は「マグカップ」で同一である。 甲の顧客へのマグカップの無償提供は、商標の形式的使用に 該当する(2条3項1号)。 3 よって、甲の当該行為は、甲に権原等なければ、形式的には、 乙の商標権の侵害を構成する(37条1号)。 (2) 甲の主張 1 広告的使用 甲は自己の役務である「コーヒーの提供」の顧客に対して、 そのサービスとしてマグカップを無償提供している。 よって、「マグカップ」は、甲の役務「コーヒーの提供」の 広告媒体にすぎない。 商品「マグカップ」と役務「コーヒーの提供」は必ずしも類似 するとはいえないから、その場合は、甲の当該行為は、乙の商標権 の侵害とはならない。 よって、甲は、非侵害の旨主張できる。 2 無効理由に係る抗弁(準特104条の3) 甲の商標「CBAコーヒー」は全国的ではないものの、周知と なっている。 よって、乙の出願時(4条3項)に周知となっていた場合には、 乙の商標登録は、法4条1項10号違反の無効理由(46条1項1号)を 有することになる。 この場合は、乙は権利行使できない旨の抗弁を甲はすることが できる(準特104条の3)。 3 商標権の効力が及ばない旨の抗弁(26条1項1号) 甲の商標「CBAコーヒー」は自己の名称の略称といえる。 よって、この略称が著名になっている場合には、乙の商標権の 効力は及ばない旨の主張を甲はすることができる(26条1項1号)。 以上 |