910259 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【ログイン】

イクメンへの道 by 弁理士GolferPA

PR

Rakuten Ranking

Rakuten Card

2006.02.01
XML
キャノン・インクカートリッジ事件の知財高裁判決の裁判所判断部分について、3回に分けて引用掲載します。

主な構成は、以下となっています。

---

第3 当裁判所の判断

1 国内販売分の控訴人製品にインクを再充填するなどして製品化された被控訴人製品について物の発明(本件発明1)に係る本件特許権に基づく権利行使をすることの許否

(1) 物の発明に係る特許権の消尽

2 国内販売分の控訴人製品にインクを再充填するなどして製品化された被控訴人製品について物を生産する方法の発明(本件発明10)に係る本件特許権に基づく権利行使をすることの許否

(2) 物を生産する方法の発明に係る特許権の消尽

3 国外販売分の控訴人製品にインクを再充填するなどして製品化された被控訴人製品について本件特許権に基づく権利行使をすることの許否

(1) 物の発明に係る特許権について

(2) 物を生産する方法の発明に係る特許権について

---

今日から3日間、この項番ごとに引用文紹介いたします。

今日は「1」についてです。

なお、判決文全文は、
http://www.ip.courts.go.jp/documents/pdf/g_panel/10021.pdf

---------

第3 当裁判所の判断

1 国内販売分の控訴人製品にインクを再充填するなどして製品化された被控訴
人製品について物の発明(本件発明1)に係る本件特許権に基づく権利行使を
することの許否

(1) 物の発明に係る特許権の消尽

ア 特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が我が国の国内におい
て当該特許発明に係る製品(以下「特許製品」という。)を譲渡した場合
には,当該特許製品については特許権はその目的を達したものとして消尽
し,もはや特許権者は,当該特許製品を使用し,譲渡し又は貸し渡す行為
等に対し,特許権に基づく差止請求権等を行使することができないという
べきである(BBS事件最高裁判決参照)。

イ しかしながら,(ア) 当該特許製品が製品としての本来の耐用期間を経
過してその効用を終えた後に再使用又は再生利用がされた場合(以下「第
1類型」という。),又は,(イ) 当該特許製品につき第三者により特許製
品中の特許発明の本質的部分を構成する部材の全部又は一部につき加工又
は交換がされた場合(以下「第2類型」という。)には,特許権は消尽せ
ず,特許権者は,当該特許製品について特許権に基づく権利行使をするこ
とが許されるものと解するのが相当である。

その理由は,第1類型については,(1) 一般の取引行為におけるのと同
様,特許製品についても,譲受人が目的物につき特許権者の権利行使を離
れて自由に業として使用し再譲渡等をすることができる権利を取得するこ
とを前提として,市場における取引行為が行われるものであるが,上記の
使用ないし再譲渡等は,特許製品がその作用効果を奏していることを前提
とするものであり,年月の経過に伴う部材の摩耗や成分の劣化等により作
用効果を奏しなくなった場合に譲受人が当該製品を使用ないし再譲渡する
ことまでをも想定しているものではないから,その効用を終えた後に再使
用又は再生利用された特許製品に特許権の効力が及ぶと解しても,市場に
おける商品の自由な流通を阻害することにはならず,(2) 特許権者は,特
許製品の譲渡に当たって,当該製品が効用を終えるまでの間の使用ないし
再譲渡等に対応する限度で特許発明の公開の対価を取得しているものであ
るから,効用を終えた後に再使用又は再生利用された特許製品に特許権の
効力が及ぶと解しても,特許権者が二重に利得を得ることにはならず,他
方,効用を終えた特許製品に加工等を施したものが使用ないし再譲渡され
るときには,特許製品の新たな需要の機会を奪い,特許権者を害すること
となるからである。また,第2類型については,特許製品につき第三者に
より特許製品中の特許発明の本質的部分を構成する部材の全部又は一部に
つき加工又は交換がされた場合には,特許発明の実施品という観点からみ
ると,もはや譲渡に当たって特許権者が特許発明の公開の対価を取得した
特許製品と同一の製品ということができないのであって,これに対して特
許権の効力が及ぶと解しても,市場における商品の自由な流通が阻害され
ることはないし,かえって,特許権の効力が及ばないとすると,特許製品
の新たな需要の機会を奪われることとなって,特許権者が害されるからで
ある。

そして,第1類型に該当するかどうかは,特許製品を基準として,当該
製品が製品としての効用を終えたかどうかにより判断されるのに対し,第
2類型に該当するかどうかは,特許発明を基準として,特許発明の本質的
部分を構成する部材の全部又は一部につき加工又は交換がされたかどうか
により判断されるべきものである。したがって,特許発明の本質的部分を
構成する部材の全部又は一部が損傷又は喪失したことにより製品としての
効用を終えた場合に,当該部材につき加工又は交換がされたときは,第1
類型にも第2類型にも該当することとなる。また,加工又は交換がされた
対象が特許発明の本質的部分を構成する部材に当たらない場合には,第2
類型には該当しないが,製品としての効用を終えたと認められるときは,
第1類型に該当するということができる。

---

エ まず,第1類型にいう特許製品が製品としての本来の耐用期間が経過し
てその効用を終えた場合とは,特許製品について,社会的ないし経済的な
見地から決すべきものであり,(a) 当該製品の通常の用法の下において製
品の部材が物理的に摩耗し,あるいはその成分が化学的に変化したなどの
理由により当該製品の使用が実際に不可能となった場合がその典型である
が,(b) 物理的ないし化学的には複数回ないし長期間にわたっての使用が
可能であるにもかかわらず保健衛生等の観点から使用回数ないし使用期間
が限定されている製品(例えば,使い捨て注射器や服用薬など)にあって
は,当該使用回数ないし使用期間を経たものは,たとえ物理的ないし化学
的には当該制限を超えた回数ないし期間の使用が可能であっても,社会通
念上効用を終えたものとして,第1類型に該当するというべきである。

第1類型のうち,前者(上記(a))については,特許製品につき,消耗
部材(例えば,電気機器における電池やエアコンにおける集じんフィルタ
ーなど)や製品全体と比べて耐用期間の短い一部の部材(例えば,電気機
器における電球や水中用機器における防水用パッキングなど)を交換し,
あるいは損傷した一部の部材につき加工又は交換をしたとしても,当該製
品の通常の用法の下における修理であると認められるときは,製品がその
効用を終えたということはできない。これに対し,当該製品の主要な部材
に大規模な加工を施し又は交換したり,あるいは部材の大部分を交換した
りする行為は,上記の意義における修理の域を超えて当該製品の耐用期間
を不当に伸長するものというべきであるから,当該加工又は交換がされた
時点で当該製品は効用を終えたものと解するのが相当である。この場合に
おいて,当該加工又は交換が製品の通常の用法の下における修理に該当す
るかどうかは,当該部材が製品中において果たす機能,当該部品の耐用期
間,加えられた加工の態様,程度,当該製品の機能,構造,材質,用途,
使用形態,取引の実情等の事情を総合考慮して判断されるべきものである。

また,主要な部材であるか,大部分の部材であるかどうかは,特許発明を
基準として技術的な観点から判断するのではなく,製品自体を基準として,
当該部材の占める経済的な価値の重要性や量的割合の観点から判断すべき
である。

そして,特許権の消尽が,特許法による発明の保護と社会公共の利益の
調和との観点から認められること(BBS事件最高裁判決参照)に照らせ
ば,特許権者の意思によって消尽を妨げることはできないというべきであ
るから,特許製品において,消耗部材や耐用期間の短い部材の交換を困難
とするような構成とされている(例えば,電池ケースの蓋が溶着により封
緘されているなど)としても,当該構成が特許発明の目的に照らして不可
避の構成であるか,又は特許製品の属する分野における同種の製品が一般
的に有する構成でない限り,当該部材を交換する行為が通常の用法の下に
おける修理に該当すると判断することは妨げられないというべきである。

その点にかんがみれば,第三者による部材の加工又は交換が通常の用法の
下における修理に該当するか,使用回数ないし使用期間の満了により製品
が効用を終えたことになるのかは,特許製品に関する上記の事情に加えて,
当該製品の属する分野における同種の製品が一般的に有する機能,構造,
材質,用途,使用形態,取引の実情等をも総合考慮して判断されるべきも
のである。

さらに,後者(上記(b))については,使用回数ないし使用期間が一定
の回数ないし期間に限定されることが,法令等において規定されているか,
あるいは社会的に強固な共通認識として形成されている場合が,これに当
たるものと解するのが相当である。したがって,単に特許権者等が特許製
品の使用回数や使用期間を制限して製品にその旨を表示するなどしただけ
で,当該制限に達することにより製品がその効用を終えたことになるもの
ではない。

オ 次に,第2類型は,上記のとおり,特許製品につき第三者により特許製
品中の特許発明の本質的部分を構成する部材の全部又は一部につき加工又
は交換がされたことをいうものであるが,ここにいう本質的部分の意義に
ついては,次のように解すべきである。

特許権は,従来の技術では解決することのできなかった課題を,新規か
つ進歩性を備えた構成により解決することに成功した発明に対して付与さ
れるものである(特許法29条参照)。すなわち,特許法が保護しようと
する発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかった技術的課題の解
決を実現するための,従来技術にはみられない特有の技術的思想に基づく
解決手段を,具体的構成をもって公開した点にあるから,特許請求の範囲
に記載された構成のうち,当該特許発明特有の解決手段を基礎付ける技術
的思想の中核を成す特徴的部分をもって,特許発明における本質的部分と
理解すべきものである。特許権者の独占権は上記のような公開の代償とし
て与えられるのであるから,特許製品につき第三者により新たに特許発明
の本質的部分を構成する部材の全部又は一部につき加工又は交換がされた
場合には,特許権者が特許法上の独占権の対価に見合うものとして当該特
許製品に付与したものはもはや残存しない状態となり,もはや特許権者が
譲渡した特許製品と同一の製品ということはできない。したがって,この
ような場合には,特許権者は当該製品について特許権に基づく権利行使を
することが許されるというべきである。これに対して,特許請求の範囲に
記載された構成に係る部材であっても,特許発明の本質的部分を構成しな
い部材につき加工又は交換がされたにとどまる場合には,第1類型に該当
するものとして特許権が消尽しないことがあるのは格別,第2類型の観点
からは,特許権者が譲渡した特許製品との同一性は失われていないものと
して,特許権に基づく権利行使をすることが許されないと解すべきである。






Last updated  2006.02.01 23:15:26
コメント(0) | コメントを書く
[特許法・実用新案法] カテゴリの最新記事

Rakuten Profile

設定されていません

Category

Archives

・2017.11
・2017.10
・2017.09
・2017.08
・2017.07
・2017.06
・2017.05
・2017.04
・2017.03
・2017.02

Freepage List

Favorite Blog

ぱてんと@お兄 ぱてんと@お兄さん
弁理士試験短期集中 YKK2008さん
2010年,神戸の弁理… kobe2010さん
弁理士を目指す銀行… 多摩三郎01さん
☆たんぽぽ荘☆ ☆めぐたん☆522さん

Copyright (c) 1997-2017 Rakuten, Inc. All Rights Reserved.