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カテゴリ:特許法・実用新案法
MANAMOさんのブログ「DEAR MANAMO:弁理士とアクアリストへの道」をお気に入りに追加しました。
そのMANAMOさんのブログからのトラックバックです。 MANAMOさんが以下の案件について検討されていましたので、それに対してコメントさせていただきます。 最後の拒絶理由通知に対する意見書提出期間に「誤記の訂正」(17条の2第4項2号)を目的とする補正をする場合、独立特許要件は不要となっている(17条の2第5項)のに対して、 「誤記又は誤訳の訂正」(126条1項2号)を目的とする訂正審判を請求する場合、独立特許要件を満たす必要があり(126条5項)、 同じ「誤記の訂正」であっても、審査の場面と審判の場面で独立特許要件が必要とされたりされなかったりするのはなぜか、という疑問を持たれています。 これへの検討結果として、 (1)最後の拒絶理由通知に対する意見書提出期間に「誤記の訂正」(17条の2第4項2号)を目的とする補正をする場合、独立特許要件が課されない理由は、 「新たな審査を必要としない」とともに、「新たな拒絶理由が発生しない(*)」からであり、 (2)「誤記の訂正」(126条1項2号)を目的とする訂正審判を請求する場合、独立特許要件が課される理由は、 「当初明細書等に記載した事項の範囲で訂正を認めることとした」ところ、「訂正の遡及効(128条)により、審査されていない発明が特許となってしまうことを防止する(*)」ため (*)基本書の言葉ではないので注意! と解されておられます。 私はちょっと違う考えで、この問題を捉えていました。 (手元にある基本書等には直接的な記載はなく、下記は、審査基準や審判基準、青本等の記載から得られた私の理解です。) すなわち、両規定の違いは、そもそも、 審査過程における補正制限の趣旨、 訂正審判における訂正目的制限の趣旨、 もう少し突っ込めば、 審査・訂正審判の各々趣旨 に基づくのではないかと思います。 審査の目的は最終的には、査定(49条、51条)であって、そのために特許要件が制限的に規定されています(49条各号)。 したがって、審査過程における補正は、あくまでも最終的な査定へと導く途中経過に過ぎないということです。 よって、原則は、特許要件は、補正のときではなく、査定時に判断すればいいということです。 では、審査過程において、最後の拒絶理由通知時(17条の2第1項3号)の限定的減縮(同条4項2号)において、特許独立要件(同条5項)が課されているのは何故でしょうか。 それは補正制限(17条の2第4項)の趣旨、すなわち、「制度の国際的調和、迅速、的確かつ公平な権利付与等の観点から、特許請求の範囲についての補正は第1号から第4号に限定し、補正を、既に行った審査結果を有効に活用できる範囲のものとする。」(青本)から導き出せると思います。 すなわち、早期権利付与を前提とする審査促進のため、例外的に、補正を制限したものと解することができます。 そのため、「既に行った審査結果を有効に活用できる範囲のもの」ということを前提に、法17条の2第4項各号をみれば、 ・1号:請求項の削除なので、活用範囲内のため、制限必要なし。また、特許要件を判断する必要もなし。 ・2号:発明特定事項の直列的付加等の補正がなされると、新たな公知文献等の調査・比較が必要になることとなり、審査をあらためてやり直す必要が出てしまうことから、審査促進のためには補正制限しておく必要がある。限定的減縮であれば、これまでの審査結果を活用可能。ただし、限定減縮した場合、特許として成り立たなくなる可能性があり、そのような補正は認める必要はなく、また、審査促進の見地から、本号については独立特許要件(同条5項)を課しておくことで、出願人のそのような補正手続請求の件数を抑える(牽制する)ことが可能となる。 ・3号:「記載不備についての軽微な補正は、これを認めても審査・審理の対象を変更するものではなく」(審査基準)、したがって、これまでの審査結果を活用可能なため、制限する必要なし。また、審査・審理対象に変更はない、と認識していることから、この段階であらためて独立特許要件を課しておく必要はない。 ・4号:「釈明」であって、特許請求の範囲(審査対象)を直接的に補正するものではないので、ここで、独立特許要件を判断する必要なし。 ということから、法17条の2第4項2号の場合のみ、独立特許要件(同条5項)を課しておけばいいことになります。 次に、訂正審判時の独立特許要件規定(126条5項)についてです。 そもそも訂正審判の趣旨は、「本来、既に権利として成立している以上、その権利範囲を定める特許請求の範囲の訂正をみだりに認めることは、第三者に不測の不利益を与えることから、妥当ではない。ただ、特許付与後の訂正を一切認めないとすると、当該特許権の一部の瑕疵のために、特許権が無効にされてしまうこととなってしまい、特許権者にとってあまりにも酷である。したがって、第三者に不測の不利益を与えず、また、その瑕疵を取り除ける、最小限の範囲での訂正が認められている。」であると思います。 すなわち、訂正審判の対象は、「特許権」なのです。 なので、訂正後の特許請求の範囲の記載事項が独立特許要件を満たさない、すなわち、「特許権」とならないような訂正は認める必要がないことになります。 また、上記趣旨にもあるように、瑕疵是正のために訂正しようとした、その目的が達せられていないような請求は認めるべきではないことになります。 したがって、特許請求の範囲の減縮(126条1項1号)のみならず、誤記又は誤訳の訂正(同項2号)であっても、特許独立要件(126条5項)が判断されることになります。 また、審判運用手続の面からみると、訂正審判においては、「審判合議体は、審判請求書及び添付した全文訂正明細書等の記載をもとに、訂正審判の請求が特許法第126条に規定する要件を満たしているか否かの判断を行います。この判断では、第3項乃至第5項の要件の判断に先立ち、第1項の要件を満たしているか否かが判断されます。これらの要件についての審理は、審判合議体の職権探知により行われ、訂正が目的要件に合致するものであるか、新規事項を含まないか等はもとより、独立特許要件(無効理由がないかどうか)についても職権で審理されます。」(審判運用基準)という過程をふみます。 すなわち、無効理由有無については、法126条1項の要件に係る審理において判断されるということになります。 その他の訂正審判上の過程において、無効理由が検討される部分はありません。 したがって、法126条1項の要件に係る審理において、特許独立要件を判断しておく必要があります。 (これは少々、後付的な解釈ではありますが。) 以上が理由になります。 私の表現が不十分な部分があり、わかりにくいかもしれませんが、要は、補正・訂正各々の趣旨にかえると、おかしな規定になっているわけではなく、合理的に規定されているということです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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