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今日のヘンな人

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gomagoma0205

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2004年05月06日
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カテゴリ:犯罪者系
 「ヘンな人」というトピックで何か書こうと思いはしたものの、次から次へと、これほど多数の思い出が甦ってくるとは、と、我ながら驚いている。どのタイトルにも「(1)」と付けざるを得ないほど、各項目に該当するヘンな人たちは大勢いるのだから、イヤになってしまう。

 以前、電車の中で詐欺師につかまった。

 仕事で大宮に行った帰り、始発の電車に座っていたら、網棚に置き忘れられたスポーツ新聞を手に取ったおじさんが、「おっ」と言った。そしてきょろきょろと辺りを見回し、その車両に一人で座っていた私に、「ちょっとちょっと」と手招きをしたのだ。「大変なんだよ。ちょっとこっちに来て」

 のこのこついて行った私も私だが、とにかくそのおじさん、人なつっこい笑顔で、害の無さそうな人柄に見えたし、他人を自分のペースに乗せるのが上手いというか、人を引き込むような雰囲気があった。

 隣の車両に移ると、おじさんは3人がけの座席に座り、私を手招きした。「大変なんだよ。ほら、見てごらん。これ、30万はあるよ」

 おじさんが指し示したのは、折り畳んだスポーツ新聞の中に挟まれた封筒だった。封筒の中には紙幣らしきものが入っていた。おじさんが封筒から何枚かを引っ張り出すと、なんとやっぱり一万円札だ。

 そこから延々と、おじさんの独演会が始まった。誰かが置き忘れたのだろうが、駅員に届けるのはどうかと思う。ここで会ったのも何かの縁だから、いっそ二人で分けよう。だがあいにく、自分は急いでいる。今ここで分けるのは人目に立っていけない。自分はアンタ(私のことだ)を信じて、この封筒を預けておくから、明日、落ち合って二人で中身を分けないか。

 「でも」とおじさんは、愛嬌のある大きな目で辺りをきょろきょろ窺って、一段と声をひそめた。「アンタはいい人だと思う。でも、これだけの金額を預けるんだから、自分としても何か保証が欲しい」 もっともな話だ。

 「ついては、今、アンタがオレに三万円を渡す、というのはどうだろう。アンタのお金だ。いや、恥ずかしい話だが、オレは今、手持ちの金がない。三万円あったら助かる。だから、もし今アンタが三万円オレに渡して、明日、約束の場所に来なくても恨みはしない。そんな人じゃぁないと、信じてはいるけどな」

 なんでもおじさんには、我々がいま乗車している電車が通過するある駅の近くに暮らす、別れ別れになった妻子があるのだそうだ。「ばくちに明け暮れて、ふっと家を出たっきり、戻らなかったんだよ」 今となっては後悔している。こうして大金を拾ったのも、何か意味のあることなのに違いない。みやげでも持って、女房子どもを訪ねてみようかと思う。手をついて謝ったら、もしかしたら許してくれるかもしれない。。。

 ビビッドな話だ。私はかなりの抜け作なので、人の話を頭から信じ込む傾向がある。おじさんが目に涙をうかべて、ひっそりと話すその物語に、同情を禁じ得なかった。「おじさん、そのお金を見つけたのはおじさんなんだから、それを持ってお行きなさいよ。私は良いから」 私は心を込めて、そう言った。ところがおじさんは、大きな目をぎょっと見開き、こちらを凝視している。ついでぶるぶるとアタマを振ると、「いけないよ。それはいけない。それじゃあ泥棒だ。オレはろくでなしだが、泥棒にはなりたくない」

 そこで私はとうとうと、おじさんを説得した。スポーツ新聞に挟み込んだ札束なんて、どうせ持ち主は見つからない。駅員さんに届けても、持ち主が現れず、ある時期が過ぎたらおじさんのものになる。いや、もしかして、警察に届けた遺失物と同じ扱いではないとしたら、おじさんのものにならないかもしれず、それは非常に不公平だ。運が悪ければ、どうせゴミ箱行きだった新聞を、おじさんが見つけたのも何かの縁だろう。ここはひとつ、それを持ってご家族のところへ帰りなさいよ。

 そのころ、電車はすでに走り出していて、おじさんは何故か、疲れたような顔をしていた。そして、我々の乗った特別快速がようやく、最初の停車駅に近づくと、「分かった、もう良い。オレはこれを駅員に届ける。アンタと分けられれば良いと思ったのに、残念だよ」と言い、振り返りもせずに電車を後にしたのだった。

 私がヘンだと思ったのは、おじさんの妻子が住むという駅を、電車が通過したときだ。小さな駅だから、私たちの特別快速は止まらない。あれ? この電車でこのまま、にょうぼうこどものところへいく、って言ってなかったっけ? 

 東京に戻りつくまでの間に色々考えあわせた結果、私はおじさんが詐欺師であると、判断せざるを得なかった。封筒の中身はたぶん、ニセの紙幣だろう。一番上にあったのは本物のお札だったようだが、私が三万円渡せば、差し引き二万円のもうけになる、という寸法だ。

 精神的成長が全く無いのか、またもや息せき切って家に帰ると、私は母に、ヘンなおじさんとの遭遇について熱く語った。「いやあねぇ」 出だしは初変質者遭遇体験の時と同じだったが、さすがにそれから20年もたって老けた母の、後続する言葉はキツかった。「あんたって本当に間抜けなんだから。ぼーっとした顔してるから、つけ込まれるのよ。気を付けなさい!」

 あーあ、怒られちゃったよ。面白いおじさんだったんだけどなぁ。





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最終更新日  2004年05月19日 14時40分42秒
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