カテゴリ:分類不能系
昔の同僚で、どこからどう見ても、そのスジの方にしか見えない人がいる。本人は至って礼儀正しく、穏和な常識人なのだけれど、人相がまず、そのスジっぽい。
本人はわざとやっている訳ではないのだが、レンズに色の付いためがねをかけており、それがサングラス的な印象を与えるので、なおさらただ者では無い感じがする。 さらに、いつもお葬式もしくは結婚式出席OK態勢、みたいな色合いのスーツ姿なのも、素人さんぽく見えない原因の一つだ。 テレビのCMで(確かアメの宣伝)気の弱そうな小さな男の子が、タレントの力也に変身してしまう、というのがあったと思う。すると、そのおっかない容姿に、いじめっ子たちがわーーーっと逃げ出してしまう(ついでに彼は、元の姿に戻れず、おうちに帰れない、というオチがつく)というのがあった。 あれと同じで、外見が怖そうだったり、迫力があったりすると、ニンゲン生きやすいよなあ、と、その同僚を見ていると思う。本人は全然、怖くもなんともない人だが、仕事相手はもちろん、街中で遭遇する通りすがりの人たちにも、非常に非常に丁寧に遇されるからだ。私のように、すぐ他人からナメられるような者にとっては、うらやましい限り。 でも、その容姿のために、彼が割を食っていたことも確かだ。とても仕事のできる人だったのだが、ひじょーに低レベルな作業に招集されることが多かったのだ。 たとえば、会社のビルの前に、違法駐車の車があったとする。その会社は、あんまり良い場所になかったので、そういう駐車の仕方をするヤツは、たいてい、あんまりマトモな連中ではない。警備員もびびって、見て見ぬふりをするような、そういうタイプが多い。そんな時が、例の同僚の出番である。 「ここにとめられちゃ、困るんだよねぇ」 彼がぼそぼそっと言うと、百発百中で先方がペコペコとあやまりながら、「すんません、すぐどけますっ」と退散する。 と言っても、駐車したままいつ戻ってくるのか、分からないヤツもいる。だから、会社の車が入れないほど邪魔な車が現れた場合、彼はいつその車の主が戻ってきても良いように、一階の空き部屋に一人で移動し、そこの窓際で外を見張りながら仕事をする、ということさえあった。 まあ、仕事のできる人だし、一人でいることは苦にならないタイプだったから、もしかしたら本人は、そんな風に「個室」が与えられることになって、歓迎していたのかもしれないけど。 そんな調子だから彼は、ビルのオーナーとの賃貸料交渉にもかり出されていた。月額100万円浮かせた、というのが、ある年の彼の実績。「1200万とは言わないけど、10分の1くらい、ボーナスにしてくんないかなぁ」とぼやいていたのが、結構かわいかったのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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