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カテゴリ:ショートショート
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数世紀に及ぶ人類の環境破壊に、大自然の神の怒りが頂点に達した。 大都市を狙う地震、島々を飲み込む津波、全てを破壊する台風…。人類の数は減少の 一途を辿り、もはや存亡の危機であった。 そして神は人類に対して最後の言葉を告げるべく、国々の代表者を招集した。 「貴様ら人類は私の大地を血で汚し、母なる海を薬で汚した。その罪は人類全員に等しく 存在する」 「神よっ、どうかお慈悲をっ、お慈悲を頂けないのですかっ?」 ひと際大きな体格をした白人の、金髪の紳士が叫んだ。どうやらこの男が人類の代表者らしい。 「ならぬ。貴様らは己らの分をわきまえず、森を焼き、氷を溶かした。その罪は永遠に 償われるべき大罪。絶望の末に滅びるがいい……」 赤いネクタイをした金髪の紳士も、その威厳ある声に怯え、必死に命を乞いた。 そうしなければならぬほど、神の力は絶大であった。 「お情けを……お慈悲を……偉大なる自然の神よ……」 自身の敬愛する神とはまるで次元の違う真の神に、人類はひれ伏し恐怖した。 神はそこでひとつの考えにたどり着いた。 ……人類も私が生み出したひとつの生命、ならば私自身の贖罪の意味も込め、最後の時間を 与えよう。 「貴様らが生み出した核物質、放射能という科学によって汚染された土地がある。 我が地球の地表にして0.1%未満の狭い土地だが、そこに全人類を集めて暮らせ。周囲には 8000mの断崖を形成し、4000mを超えた先は真空状態にして生命を遮断する。貴様らは そこで互いに滅ぼし合えばいい……戦争が好きなのだろう?私はそれ以上干渉はしない。 好きなように殺し合え」 これは傲慢ではない。私は大自然の神であり、全生物の生殺与奪の権利を持つ存在。 人類のこれまでの行為を、エゴを、罪を償わせなければならない。 「そんなっ!神よ!お許しを!」 金髪の紳士を始め、各国の代表者らしき人間たちが口々に謝罪と慈悲を乞う。だが、 そんなものは関係無い。人類は存在そのものが罪。滅ぶべき悪の結晶なのだ。 「……話は終わりだ。消えろ!」 その後は簡単に事が運んだ。津波・地殻変動を起こして人類の生活圏を奪い、 逃走する人間どもを一か所に誘導する。高濃度の放射線で満ちた土地に人類を閉じ込め、 蓋代わりに断崖の山脈を隆起させる。逃走を阻止するために中途から空気を操作し真空にした。 これで数十億の人類の処理は完成した。 そこでようやく神の怒りは静まった。神は改めて、人類に汚された大地と海を憂いた。 ……自然が自然に回復するには数万年はかかる。余計な細工はせず見守るのが正解か……。 ならば地球再生のため今しばらく眠りにつこう……この星が、また青く美しく輝くその日まで………。 神は眠りに入ろうとした。怒りはとうに消えて失せ、心には静寂が戻った。もはや人類の 存在など忘却の彼方に消えていた。 ――――― 人類との邂逅から何年が過ぎたろうか?数万年から数百万年、時間の概念すら意味を なさない膨大な時の果て、神は再び目を覚ました。 「……美しい」 その呟き通り、地球は見事に再生していた。青く輝く海、濁りのない空気と空、地平まで 覆う森林、そこで暮らす動物たち、躍動する昆虫、美しい花々……。 全てが理想の世界。大自然のあるべき姿。これこそが地球……神は感嘆し、誇らしげに 歓喜した。やはり知的生命体などこの世界においては無価値、根絶こそが必然だ。 それが私――端倪すべからざる存在、大自然の神の下した結論。世界の真理だ。 そしてふと、ほんの少しだけ――神は自身にそこまで考えさせた、とある知的生命体の 存在を思い出した。そう。人類だ。サルが進化しただけの下等な哺乳類。なまじ知恵が回る 習性があり、有機無機を問わず犠牲にする簒奪者の群れ。もうとうの昔に滅びたはずだが……。 ヤツらに残した土地も自然に返すべきだろう。さすがに放射線も消え、独自に発生した生命も あるかもしれない。私の地球に住んでも問題ないようなら、別に何百年か保護してもいいかもしれない。 神は自らが封鎖した、人類終点の地へと意識を飛ばした。 ――――― 「何だ?これは?」 思わず言葉が漏れた。それは驚愕の光景であり、およそ信じられるものでは無い。 私は未だ眠りの中であり、これは夢の世界か?いや……違う……これは……、生命?なのか?」 封鎖した大地の上を四足歩行で闊歩する、奇妙な金属の骨。一見すると機械仕掛けの 蜘蛛のように見えるが、昆虫類のようなロボットじみた動作ではない。明らかな知性と、 それに伴う生命のある動きだ。2mほどの足の付け根には胴体らしき球体があり、大きさは 人間の頭ほど。口や肛門などの器官は無く、眼球や耳に相当する部分も皆無。色は乳白色であり、 4本の足の先には細い指が5本揃っている。 封鎖した土地、その全土を見渡す。地面は全て平らにならされ、金属らしきプレートで 敷き詰められていた。草木は一本も無い。見る限り住居らしき建物も確認できず、その地の 上には奇妙な骨が数百体ほど歩いていた。何をしているのか見当もつかない。だが、神の目は 全てを見通す力があり、その正体もすぐに答えが算出された。 ………そのはずだった。 「……炭素と金属の加工物質だな。相当な硬度……ダイヤモンドの数十倍?胴体は……何だ? あんな鉱物は自然界には……おそらくは地下資源を加工したものだが……膨張率、純度、熱伝導率、 電気抵抗、結晶構造、磁性……はあ?何なんだ?この数値は?……あんなものは、私の自然界には……」 誰に対しての問いではない。神は神自身に問いた。……クソッ!人類は何を、何をしやがった! そして――はっきりと、 明確な意思を持つ何者かの声が、 神の、神の支配する意識の内に、 侵入した。 『正解は地球外金属です』 はあっ?ええっ?何でっ?何故だ、なぜ私に交信ができる?そんなバカな!私は大自然の、 いわば神!どこぞの矮小な存在が私に語りかけるだとぉ? 理解不能、予測不能の事態だった。驚愕、それは神にとっても初めての経験だった。 支配するべき存在からの通信……いわばヒトが、微生物であるミジンコから物事を教えて もらうような事。そんな事が可能であるハズがナイ。ありえない! 『地球外金属を複製し、炭素と結合させて精製します。原料は隕石を使用。無機物としては 自然界に存在しません。あらゆる元素との結合を防ぎ、半永久的に現存が可能。我々の身体の 95%がこの金属によって形成されます』 ち、地球外だと?そんな……そんな……。 『……地球のあらゆる環境変化に対処が可能……ちなみにこの金属の名前ですが……』 わけのわからない、生き物か機械なのかも判別できない存在の声を聞きながら……神は ようやくふたつの事を理解し、確信した。 ひとつは、どうしようもない後悔。やはり人類は殲滅するべきだった。 もうひとつは……人類の執念、その怨念は、あまりにも……神を超えて……。 『金属名は、〈カミヲナブリゴロス〉、です。理解したか?』 この声はどこかで聞いた気がした……そう。 最後に聞いた、あの、体格の良い、白人の金髪の紳士の声に……。 了 トラ〇プ大統領就任祝いのショートです。構想2日。書き4時間。少し疲れました。 誤字脱字あればすいません。文法的にも若干の編集ミスあり。難しいデス。 補足ですが…seesの楽天ブログ内の作品で最も好き、かつ、まともなショートショートが 本作であります。ジャンルという枠組みと考えるなら、コレが一番マトモです。 こちらは今話がオモロければ…ぽちっと、気軽に、頼みますっ!!……できれば感想も……。 人気ブログランキング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.05.04 23:06:18
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