093975 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

株式会社SEES.ii

株式会社SEES.ii

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X
2017.02.11
XML
カテゴリ:ショートショート

―――――

 午後23時――。
 陸橋の上に誰かが立っているのが見える。男性のようだ。
 最初――彼女はそれを見かけた時、ただ陸橋の上を歩いているだけの人かと思い、
すぐに視線を外し、いつものようにランニングを継続させた。
 だが――瞬間、誰かは、唐突に、高さ15m以上はあろうかという高さから、飛び降りた。
「えっ?ええっ?」
 頭の中が真っ白になり、全身が総毛だった。
   次の瞬間――何かがコンクリートの上に激突し、パァンッ!!と、まるで映画で聞くような銃の
発砲音が聞こえた。
「ひっ」
 思わず身を引き、息を飲んで様子を見た。
 微かに男性が動いているのがわかる。彼女は「ああっ!」と叫ぶと我を取り戻し、
駆け足で男性に近寄った。
 血だまりが広がる地面の上で、男性は無残な姿を晒していた。片腕と両足は折れ曲がり、
肘と膝から骨の先端が飛び出している。全身から出血しているように見え、顔は地面に
伏せていて見えない。唯一傷の無いように見える右手だけがピクピクと動き、アスファルトを
血の滲む指で掻いていた。
 猛烈な吐き気に耐え、「だ、大丈夫ですかっ?」と言って男性を抱き起す。動かさない方が
良いとは思うが、うつ伏せよりは良いはずだと信じて。「しっかりして下さいっ!!しっかり
して下さいっ!!」
 ポケットからスマホを取り出し、液晶を起動させる。
 青白い街頭が男性の顔を照らす。しかし顔面は血に塗れて赤黒く、目や鼻の区別すら
困難だった。
「どうして?……何で?……」
 その時、男性が口を開いた。虚ろな目で彼女を見る。
「…………ここ……は……どこ……だ?……」
 救急への電話マークを押しながら、彼女は、「大丈夫ですからっ!!大丈夫ですよっ!!」
と繰り返した。
 男性は口からゴボリと血を流しながら、呟いた。
「……ここは……ふ……じ………じゃ、な、い……」
 えっ??何か言ったの??――救急の担当との通話中、男性は微かに何かを呟いた。
 現在地と大まかな様態を緊急隊員に伝え、これから彼らの指示に従って応急手当をする
はずだった。
 そこで――……男性の体から全ての力が消えた。触れているだけで彼女にはわかった。
男性がそこで息絶えたのが、彼女にははっきりとわかった。そして――男性が最後に告げた言葉も、
彼女にははっきりと聞こえていた。
『ここは富士山じゃない。俺はそこで死のうと思ったのに。何で、俺は、こんなところで……』

―――――

 翌日、午後22時――。
 すでに路面は清掃され、男性が飛び降り自殺をした痕跡など一切が消えていた。こんな
場所にはもう二度と来る気は無かった。別のランニングのコースもあるし、何よりも、
そう…怖かった……しかし……。
 昨日は警察の調書につき合わされ、睡眠もロクに取れぬまま出勤した。体調不良を理由に
早退させてはもらったが、いてもたっても落ち着かない……原因はわかっていた。
『こんなところで死ぬつもりは無かった……』
 男が最後に告げた言葉が心にひっかかり、彼女はもう一度だけ足を運ぶ事に決めた。
 別に探偵ごっこに興じるつもりは無い。また、なぜ助けられなかった、だとかの罪悪感は
毛頭無かった。ただ気になっただけだ。この場所には何かがある、とだけ感じた。
 彼女は生来、霊感が強いほうだとは思っていた。霊だとか妖怪だとかの存在は別に
否定はしないが、肯定もしなかった。ただ見た場所、感じた場所に、何らかの未知の
エネルギーが存在する事だけは理解していた。著名な神社仏閣に足を運ぶと、そこでエネルギーの
強弱を感じる事が出来た。それは普通の、自分が普通の人間だと自覚している者が説明する、
例えば……悪い予感、そんなものが強く心にひっかかる。
 自宅から持参した懐中電灯のスイッチを入れる。LEDの無機質な光が辺りを照らす。
 
 名古屋市へと通ずる周辺自治体、ベッドタウンからの幹線道路が架かる、とある地区の
とある陸橋、その高架下に、彼女は立っていた。周辺は全て水田であり、建築物は一切無く、
片側一車線の道路が伸びていた。
 昨日、男性が飛び降りたのはちょうど道路と交差するアスファルト舗装の中心線付近。
 この場に到着してから数分、交通する車両は皆無だった。
 彼女は唇をなめた。ここに何かがあるのは間違いなかった。ひんやりとした冷気が
背筋に走る。
 何かあるはずだ。何か……そう、思いついたのは、アレ……。
 彼女は昼間、早退したまま図書館へと向かい、そして、この場所を改めて調べていた――。
 ライトを当てる。そこに――それがあった。

 祠――そう。それは相当に古い、小さな犬小屋のような祠だった。
 彼女はゆっくりと歩を進め、祠に近づいた。そこで初めて、すぐ横に電柱が立っており、
街頭が灯っているのを確認した。ライトの光量をしぼりつつ、中をのぞき込んだ。
 彼女は思い出した。正確には、地元の郷土史を頭の中で反芻した。
 かつてこの水田地帯には狐塚があり、お稲荷様の像があった事。陸橋の建設工事に伴い、
そこから移設された事。お稲荷様の特徴、伝承、伝説……導き出された答えは……。
「……どうして私がここに来たか、教えてやろうか?」
 彼女はひとり、呟いた。
 自分のしている事――自分がこれから、この狐の石像に何かを話す事――……。
 それら到底、誰からも理解されはしないだろう。
 何の意味も無いこと、なのかもしれなかった。だが、彼女にはそうしなければならない理由は
あった。それは……どうしても……。
 眼前の稲荷像に向けて、再び言葉を発しようと口を開いた、次の瞬間――。
 あああっ!!!
 心の声が、叫びをあげる。
 何かとてつもなく不吉で、とてもおぞましい、忌まわしいものが――彼女の背後から感じられた。
 恐る恐る背後を振り向く。陸橋の照明灯がいくつも見える。
 
 薄い光の中で、細い女の体が、宙に舞う。
 肉が地面に叩きつけられる、あの、あの衝撃音を……彼女はまたも耳にした。
 同時に――どこかで、楽しげな、ケダモノの、鳴き声を聞いた。

―――――

 翌日、午後22時30分――。
 彼女はまたひとり、祠の前に立った。本当は昼間に来たかったのだけど、《狐》は夜行性だから、
という理由で昨日も今日も同じ深夜に訪れた。稲荷様に気を使う、それが少しだけ可笑しかった。
もちろん、笑顔など絶対に見せはしないけど。
 ……ひとつ、はっきりとさせたい。
 彼女は言った。
「私は別に正義感ぶるつもりは無いし、死にたがるバカを助けようだなんて思わない。
バカなヤツは女も男も大嫌いだ……ねえ、聞いてる?」
 返事が来るとは思ってもいないので、彼女は続けた。
「昼間、一応、いろんな人に頼んだわ。警察・病院・友達……みんな結構真剣に話を聞いて
くれたんだけどね……ダメだね。この近くに一緒に来たら、みんな帰っちゃった」
 そう。彼女が頼ろうとした人々は、別に彼女を疑っていたわけでは無かった。
 誰もが真剣に彼女の話を聞き、彼女に協力しようと動いた人々がいた。しかし、この陸橋の
近くに来た瞬間、誰もが彼女の話を忘れ、呆けたような表情をし、「何だかわからないけど、
帰ろうか」と言った。
「稲荷神……水の神であり、田の神。反面――いたずら好きな神様であり、人心を惑わす事もある、か……さすがだね」
 当然、返答は無い。まあ、別に何も期待しちゃいないんだけどね。
 彼女は指で陸橋を示し、続けた。
「……今、あの陸橋の上、誰かが歩いてるんじゃない?……車かもしれないけど、たぶん、
自殺願望のある人が…さ」
 彼女は、ふぅ、と溜め息をついた。そして、決意したかのように、腕の袖をまくった。
白く細い腕と、細い指の連なる手の甲が露出する。やがて膝を屈すると、頭を下げた。
「私があなた様、稲荷大明神ゆかりの方に、お願いするなど、ふ、不敬の極みでございますが、
どうか、お願いしたい事がございます……」
 我ながらふざけた言い回しだ、と思いつつ立ち上がる。辺りに誰もいないことを確認し、
目を見開き、息を大きく吸い、心の中で気合を入れ直し――彼女は叫んだ。
「死にたいヤツを殺すのをっ、金輪際ヤメろっ!!死にたいヤツにはっ、死に場所くらい
選ばせろっ!!」

 彼女は――
 これまで誰にも見せてこなかった――掌の中央から肘にかけての傷、リストカットなど
という生ぬるいものではない。刃物で切り裂き、死のうとした、自身の自殺の痕跡を、
石像の前に突き出した。
 どうせ死ぬから殺してもいい。なら、ここで飛び降りて楽しませろ。
 そんな考えを、断固として、認める訳にはいかなかった。
 神様だからって……絶対に、絶対にっ、許せる所業ではなかった。


 
 その日も、その数日後も、その数年後も、その陸橋では何の事故も自殺も無く、平和で
安全な交通が流れていた。高架下では今でも街道が通っており、周辺では美しい水田が
広がっている。
 水田の傍には祠があり、お稲荷様の石像が建立されている。像の手前には定期的に
地元住民がお供え物をしていた。油揚げやお菓子、米や餅が供えられていた。その中でひとつ、
奇妙な小瓶があった。牛乳瓶程度の大きさで蓋もきちんとしてある。中央には針で開けた穴が
空いていた。
 誰がお供えしているのか?
 地元の住民は不思議に思ったが、別に不審だとは思わなかった。特に危険物ではなさそうに
見えるし、水田では毎年のように豊作が続いている。誰も小瓶の中身などには興味も無く、
せいぜい酒か水、そんな認識しか持たなかった。

「……新しい市長が都市開発を進めるって話、聞いた?ここもいつまでも水田じゃいられない
かもね?……そろそろ勘弁してあげましょうか?もうイタズラは、やめる?」
 彼女は優しげに問うと、像の手前の小瓶を取り上げた。中身はまだ少しだけ残っている。
 彼女の飼う犬の小便……オシッコが入った小瓶を――。



                               
                                    了


 
 
 
 どんなヤツでも弱点てありますよね(笑)……しかし、ちょっと適当すぎたな、この話。句読点が多くて読みにくいかな??いつか気が向いたら修正しマス。
 名駅地下でミソカツ定食を食べながら構想。書きは7時間!!腰イタイ…。添削校正無し。ブラッシュアップすると1日仕事になってしまう……どうにも時間が無いス……。
 シマらない文章ですいません。アドバイス・感想あればぜひ、コメント頼みます!!
 話と全然関係ないけど、今日のオススメ曲はコレ↓ 青春ス。
                また君に番号を聞けなかった

 情緒あふれる歌声にシビれる。買ってしまった……。オススメでっす↓

↑Aimer(エメ)さん。試聴だけでも価値ありますよマジで。
こちらは今話がオモロければ…ぽちっと、気軽に、頼みますっ!!……できれば感想も……。

人気ブログランキング





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2017.05.04 23:08:36
コメント(4) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.
X