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株式会社SEES.ii

2017.06.13
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―――――

 繁華街である門前町通りの近くのコインパーキングにフィアットを駐車する。時計を見ると、
時間は午後6時を過ぎていた。
「……これを、アンタに預ける」
 岩渕はスーツのポケットからフィアットのスマートキーを取り出し、掌を差し出した京子に
渡した。
「……これは?」
 助手席に座る伏見京子が、不思議そうに聞く。
「いいか、京子さん……よく聞いてくれ」
 京子の目を見つめ、幼い子供に言い聞かせるかのように岩渕は言った。「俺が戻って来る
まで、アンタはこの車の中で待機だ」
「私が? ……どうして?」
「……3店目の《プチタンジュ》……この駐車場の裏にある《天使》だが、たぶん……ここが
本店。山崎の酒があってもなくても、危険な店、だからだ」
「そんな……ここは日本、ですよね? ……そんなに危険なんですか?」
 京子が岩渕を見つめる。今にも泣きだしそうな、悲しそうな目をしている。
「……報道されない凶悪事件なんざ、名古屋じゃ日常だよ……それと、何が起こっても……
警察への通報は最後にしてくれ……俺の立場上の都合で申し訳ないが……」
「岩渕さん……」
 岩渕を見る京子の目から、涙がポロポロと流れ落ちる。「……情けないです。……悔しいです」
「まあ……確認してくるだけだ。それで、今日は終わりにして帰ろう、な?」
「……はい。お気をつけて……下さい……」
 今では涙だけではなく、鼻水までが流れ落ちている。
「ああ。一応、プライベート用の携帯電話の番号を教えるから……常に通話できる状態に
しておいてくれ。何か異常があれば、運転してくれて構わない……」
 岩渕はそう言うと、京子だけを残し、《天使》の1号本店へ向かった。


 ……俺は何をしている? 何で俺がこんなメに? 何でわざわざ虎の尾を踏みに行く?
 理由は、わからない。理由なんて、わからない…………。
 カネのために働くのはわかる。カネのために動くのは、慣れているし、理解もできる。
 だが、見ず知らずの女の頼みを叶えてやるため――そんなバカげたことのために危険を冒す
意味が……わからない。
 
 そう。しいて……しいて思うことがあるとすれば、あの女――伏見京子の声を聞くと……
何か、何か無性に働きたくなる……彼女のために働きたくなる……たとえ自分の命を捨てる
ことになったとしても、だ……なぜ? ……なぜ、こんな狂ったかのような考えに至るのか?
 
 ……惚れているワケでもなく、愛されているワケでもなく、莫大なカネが手に入るワケでも
ない。それなのに……なぜ? なぜ、俺は、こんなにも……イカれた行動を取る?
 まるで無意識……脳の記憶? ……細胞、遺伝子? ……もしくは、例えば――そう……体に
刻まれた、本能? ……のようなものかもしれない。 
 ……自分の行動が、理性が、感情が……わからない。
 わからない……意味も理由も何も、わからないまま――岩渕はすぐ目の前にある、《天使》
という意味の名の店の扉を開いた。

―――――

 岩渕がフィアットから出て行った後で、伏見京子は神に祈った。
「……伊勢の五十鈴の河上にます天照大神、また天神地祇、諸神明にもうさく。皇神の広き
護りによりて、彼の者、平らかに……彼の者、安らけく…………どうか……どうか……」

 天照大御神様……すべての過ちは私にあります……彼は本来、関係ありません……どうか、
どうか……彼の者の無事を……。
 これほど一生懸命に祈ったのは、生まれて初めてだった。
 それから私は、彼がそうしていたように――運転席へと座り直し、シートを倒して横になり、
携帯電話を握り締め、液晶の部分を頬に当てたまま――声を殺して泣いた。
 どうしようもなかった。どうしようもないくらい、自分の無力さが悔しかった。

―――――


 そこはとても洗練され、落ち着いた雰囲気の店だった。明るく、静かで、清潔で、広々と
していて、空気が乾いていて……ジャズの音色が響いていた。
 店に入ると岩渕は、真っすぐに『ご融資・買取・総合受付窓口』のプレートが吊り下がった
カウンターに向かった。そう。目的はひとつだった。
 店内には、他に客の姿はなく、コの字型にガラスのショーケースが配置され、それぞれに
高級ブランドのバッグや貴金属、腕時計や高級酒が置いてあり……そこに山崎の酒は置かれては
いなかった。
「いらっしゃいませ」
 カウンターの向こう側にいた中年の男が、酒のショーケースを見つめる岩渕ににこやかに微笑み
かけた。「……これはこれは、《D》の岩渕様。ようこそいらっしゃいました」
 はぁっ?……何だと?
 なぜ俺の名前を? 初対面じゃないのか?
「……ん、おひとり様、ですかね?」
 戸惑った顔の岩渕を見て、男は首を傾げ、そして――聞こえないくらいの微かな声で、
……まぁいいか、と囁いた。男の口元から微かにウィスキーの匂いがする。
 中年の男は……そう、まるで――爬虫類のような目で岩渕を見つめた。それから「……
《天使》のオーナー……経営をさせていただいている……と申します」と名乗って右手を
突き出した。
「……はじめまして」
 岩渕は男の細い目を見つめ返し、その右手を握り締めた。ヒヤリと冷たい感触――オーナーの
腕と服の隙間から《羽根》のタトゥーが彫られているのが見える。
「……何かお入り用ですかね?」
 薄い目の隙間から眼光をちらつかせてオーナーが言った。どこから来たのか、いつから
居たのか――オーナーの後ろには目付きの悪いチンピラ風の男が3人いて、それぞれが
思惑ありげに岩渕を見つめている。チンピラのうちのひとりは若く、ひとりは東南アジア系の
顔をしている。もうひとりは小柄で痩身な男で……まぁ、用心棒には違わないが……。
 それに……この男の雰囲気――……冷静で穏やかだが、間違いなく、犯罪者。……名前は
日本人風だが、国籍は不明……それでいて、カネと欲のためなら手段を選ばない、狡猾な、
ゲス野郎の雰囲気――……。
 ……これは、ミスだ。
 ……ヤバい、危険だ。
 ……しかも、致命傷か?
 一瞬間だけ、岩渕は呻いた。全身の毛穴から冷たい汗が噴き出した。
「あの……オーナーさん……単刀直入に聞きたいの、ですが……これを……」
 握手のあとで岩渕は上着のポケットから仕事用のスマートフォンを取り出し、予め用意して
いた画像を男の眼前へと見せ付けた。それは、オーク材の箱に納められた1本のウイスキー
の瓶だった。「……あなた方《天使》が入手したという噂を聞きまして……それで、そのう、
できれば……拝見させてはいただけないでしょうか?」
 声を震わせて岩渕が聞く。心臓が高鳴るのを必死にこらえ――画像を見つめるオーナーの
顔を覗き込む。オーナーの顔もまた、驚きのあまり引きつっているように見える。確かに
そう見える。けれど……真意はわからない。コイツが何を考えているかなど、俺にわかる
ハズがない。クソッ……どう伝わったかは知らないが、俺たちがココに来ることを察知して
いやがった可能性が高い……。
「……まあ、同業者のよしみです……嘘を言ってもムダなようですし……」
 ――いつの間にか、岩渕の背後に若いふたりの男が立っていた。ひとりは岩渕の背をじっと
見つめ、ひとりは店内の隅の壁に背を向けて立っている。男のすぐ横の壁には自動ドアと
シャッターのスイッチがあり、いつでも店を閉じることができる……。自身の置かれている
状況に、岩渕は一瞬にして――凄まじい驚きと恐怖に囚われた。……冗談じゃねえぞっ。
「……ご存知ないようでしたら、私も……すぐに……帰りますので……」
 かすれ、震えた声で岩渕は言った。正直、岩渕はオーナーが『ない』『知らない』と
言ってくれることを期待した。やはり、関わるべきではなかったのだ……そう思わざるを
えないほど――状況は最悪だった。
 だが――……
 やはり――……
 このオーナーと名乗る男の真意など――……
 岩渕には、想像もできないことだった――……。
「ん。コレのことですかね?」
 オーナーはそう言うと、カウンターにアタッシュケースを置き、そして……脅える岩渕の
眼前で――ケースの蓋を開いた。

―――――

 ――『『特別な、山崎の50年』を探しているヤツがいます……』
 
 それはやはり、この男のことなのだろう。
 あの家の娘と組み、私を疑い、取り戻そうとする輩――ヤツの報告に間違いはなかった。
 アタッシュケースから取り出した山崎の50年を、岩渕と名乗る男はじっと見つめている。
 男の年は……わからない。背が高く、やや痩せていて、肌が白い。この男が私の酒を狙って
いる? 取り戻そうと動いている?
 どんな人物、性格かまではさすがにわからないが……そんなことを許すわけにはいかないな。
しかし……そう。わかっている。私はすべてをわかっている。彼……いや、彼らが何の目的で
動き、何の理由で私の前に現れたのか……私は、知っている。私には、彼や彼女が何を考え、
何をしようと、すべて予想がつく。
「……どうです? とてもステキな箱ですよね? ……側面にホラ、菊の彫刻が彫られてるん
ですよ、コレ……とても貴重で、とても価値が高いとは思いませんか?」
 岩渕を見下ろし、オーナーは自慢げに笑った。
 笑う――そう。おかしくて仕方がなかった。おかしくておかしくて、腹がよじれるほど、
笑いを堪えるのが痛いほどおかしかった。
「……よ、よろしければ、ですね……」
 彼はどうやら、カネでこの酒を購入するつもりらしい。その行動が、あんまり私の予想した
通りだったので、私は思わず笑ってしまう。
 そう。彼は知らないのだ、この酒の価値を、この品の尊さを……だから、簡単にカネの話を
持って来ようとする……愚かな、本当に愚かな者だ。
「……1千万程度なら、ご用意できますが……」
「……ああ。はいはい――……」
 心の中で溜め息をつきながら、自分の幸運、不思議な偶然もあるものだと思う。
 そう。不思議な偶然――私は神も仏も信じないが、こんな時には、人は……みんな神の
描いた運命に従う奴隷のようなもの、と思ってしまう。


 込み上げる笑いを必死に堪えながら――私は努めて平静を装って、言った。
「それより、おたくの社長に電話してくれませんか? 伝えたいことがございますので……」
「……はい?」
 間の抜けた返事だ。どうやら、彼はこの酒の価値を知らない上に、自分の価値すら理解して
いないようだ。
「ん~内容はですね……まあ、大したことではありませんよ。簡単にまとめるとですね――……

『てめーが飼ってるペットのクソガキが、俺様を泥棒呼ばわりして、あげくにウチの品を激安
で買い取るとかヌかしてやがるのよ。このクソッタレのアホガキを名古屋湾に沈められたくねー
のならっ、てめーの《D》っ、名駅前店にある山崎の50年、あの酒を持って来い。このっ、
俺様がっ、わざわざっ、激安価格で買い取ってやるよ。まぁ……取引成立が今回のワビってことで
許してやる』

   ……――ていう感じですかね」
 私は微笑みながら、言った。
 とたんに、彼の顔が絶望に歪んだ。


―――――

 『姫君のD!』 eに続きます。









                  本日のオススメ→ でんぱ組.inc『WWDBEST』
              MV最高~→ でんぱ組.inc『でんでんぱっしょん』
           イイ歌詞!!→ でんぱ組.inc『ノットボッチ...夏』

   
  でんぱ組.inc様↑ 説明不要のスーパーアイドル。2008~だから、結構ベテランですよね(笑)
やはり実力と人気があればこそですね~…。seesが推すのは当然っ、夢眠ねむ(ゆめみ
ねむ)さんww(写真だと最左)。もがちゃん(右2の金髪娘)もカワイインすけどねw。
 それに、まあ……何ですケド……実はねむちゃんとsees、出身地が近いです……。





 お疲れサマですseesです。
 ヤル気出してれば3話で終われましたね、この話w。結局はメタメタな内容でベタベタ。
良かった点は……うん、無いかも(笑)。まぁ……文章作るための練習用短編ですね💦💦
 そうそう、この間――参考までに《大黒屋》さんと、《質ウエダ》さんのお店のぞきに
行きましたよ……いやはや、驚きの連続ですわ~……。グッチやらビトン、プラダ、ヘルメス
なんかの高級ブランドのバックやら財布やらがワゴンの上で特売セール!!『5000円均一』
ってww。すげー世界すね……。
 最近体調悪くなっちまって(*_*)テヘヘ…更新遅れてすいませんス。
 フォロワーの方々、失礼しました。

 でわでわ、ご意見ご感想、コメント、待ってま~す。次回はなるべく早く作りマス💦
 ブログでのコメントは必ず返信いたします。何かご質問があれば、ぜひぜひ。
 ご拝読、ありがとうございました。seesより、愛を込めて♪




 でんぱ様の最新アルバムと――DVDボックスに本に映画……幅広いビジネスですな……。


こちらは今話がオモロければ…ぽちっと、気軽に、頼みますっ!!……できれば感想も……。

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 sees 「ひいっ……しゃ、社長↗……何か……私に、ご用でしょう……か???」
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 sees 「…………は、はあ」
     ……何だ?……この、この、圧倒的モヤモヤ感は……?


                                                                                               了???







Last updated  2017.06.15 11:03:04
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