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カテゴリ:短編 03 『激昂するD!』
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――――― 10月20日。午後3時30分――。 ついさっきまで凪であった瑞穂区には、今、南からの木枯らしが吹いていた。 安藤浩司は《ユウリクリニック》の玄関の前のベンチに座り込み――まるで座禅を組む僧侶の ように――神経を集中させて駐車場を眺めていた。 安藤浩司は下僕であった。永里家に仕える下僕――。ただ、一般的な下僕と違うところが あるとすれば……その報酬は莫大なものだということだった。 そう。陸上自衛隊を除隊したあと、彼は永里家にスカウトされて警備部門の要職に就いた。 文句や意見は何ひとつなかった。 永里家の警備部長――報酬は規格外だった。月給で数百万、年で億のカネを受け取った。 それには満足している。だが……しかし……。 誰もいない駐車場を眺めて、安藤浩司は考える。これから、私は、また永里のための汚れ 仕事をこなさなくてはならないのか……。 永里家の警備部長として彼は20年以上、永里家の闇の部分を仕切ってきた。裏金のマネー ロンダリングや納税の操作、関連企業との癒着や国税局への根回し、敵性組織や暴力団への 示威行為。破壊、暴力、数々の違法行為への加担。 そして――……《花火師》と呼ばれる名古屋の武器商人との取引にて制作した爆弾の手配を し――……《ゲンタツ》と呼ばれる名古屋の地下ブローカーと協力しての違法薬物・催眠療法を 多用して特定の人物の思考を洗脳し――……自衛隊のコネを使い用意した特注のドローン―― ……遠隔操作で爆弾を起動させ、証拠の隠滅の実行……。 そんな彼に自分の時間はまったくなかったし、有り余るカネを使う暇もなかった。今の 彼に必要なカネは、離婚した妻への慰謝料と年老いた両親への仕送りだけだった。 そして現在の任務は――自衛隊に所属していたころの彼は、この国を守るという使命感に 燃えていた。……そうだ。天皇陛下と我が国に命を捧げる――自己犠牲の精神、誇り高い 仕事とやりがい……。だが、今――彼は自分の仕事に誇りを持てないでいた。それは社会に 対して、背信する行為であることが間違いなかったからだ。たとえどんなに卑しく、苦しく、 ひもじい仕事に就いている者でも、自分よりは正義であるハズだ。安藤浩司は思った。 現在の主人である永里ユウリという女は異常だった。何もかもが異質で、危険な思想の 持ち主だった。他の永里家の者とも違う、ヒトならざる者にさえ思えた。今まではカネの ため、仕事だと思って我慢を続けた。けれど、最近の永里ユウリの異常さは常軌を逸して いた。特に、伏見宮の皇女殿下が《D》の話をされてからの永里は、安藤の理解を遥かに 超えて異常だった。 ……なぜ、ここまでする必要がある? ……恨み? いいや……違う……。これは…… まるで――……挑戦? わからない……。 永里ユウリは何も教えてはくれなかった。 トラックの排気音が轟く……。 「……来たか」 安藤は静かに呟き、顔を上げた――。 ……もう、嫌だ。もう、うんざりだ。 ……できることなら、足を洗い、田舎で静かに暮らしたい……。 それがいつになるのかは、安藤浩司自身にもわからなかった。 ――――― 永里ユウリに私室の隣にある院長室で待機するよう言われ、岩渕はこれから起こるで あろう惨劇に思いを巡らせながら、駐車場を望める巨大な窓のブラインドを上げた。 ……これでいい。……これで、いいんだ。 《D》の連中を返り討ちにするため、ユウリは警備の担当者を30人以上招集したと言って いた。玄関の自動ドアの陰に、それらしき男たちが待機していたのは知っている。タダの 警備員でないことは一目瞭然なのだが――今の岩渕には関係がなかった。……関係がないと 思い込もうとした。岩渕がユウリに命令されたことはひとつだけ――……。 『……――京子様と院長室に籠って、外の様子を一緒に見続けること。これが達成された なら、例のモノをプレゼントします……』 岩渕はぐるりと周囲を見まわした。来客用のソファの上に、起動済みのノートパソコンが 見えた。そして、液晶には監視カメラの中継らしき映像が流れ続けていた。 岩渕はパソコンのマウスを操作して、音量を上げ――楽しそうに身をよじる若い女と、 怒りに身を震わせる愛しき女の姿を見て、聞いた……ただ見て、聞き続けた。 『言いなさい……こんなことをした理由を言いなさい』 『理由ですかぁ? ……理由は、《佐々木亮介クンのため》ですよ』 『佐々木亮介……あの者の……ため?』 『彼は元々、私の担当する精神疾患の患者です。彼ねぇ、面白いことを言ったんですよぉ』 『……?』 『自分が不幸なのは奪われたから。他人が幸福なのは奪ったから。世界の《幸福》は石油の ように絶対量が存在し、人々は限りある《幸福》を奪い合うために生きている……みたいな 理論です』 『……』 『……実験、してみたくなっちゃったんですよぉ。……神武天皇、神道における初代の天皇。 つまりは神々を先祖とするあなたの幸福を奪ってしまえば――ついでにぃ、幸福を謳歌する 名古屋の富裕層たちの命を奪えば、いったい、どこで、何人もの人々が幸福を取り戻せるのか? ……私は、ただ、実験してみたかっただけなんですよぉ』 『……どうかしている……あなたは……狂っている……』 『いやあ、でもねぇ、いろいろと想定外のコトや、計算外? 稚拙で粗末な実験しかできな かったワケでして……特にアレ、丸山佳奈さんのアレ? ……彼女がいなければ、本当は 熱田神宮の宝物殿――《神器、草薙の剣》を爆破する予定だったのに……残念ですぅ』 『あなたにそんな権利がっ……罪のない人々を殺す権利がっ……我が国の宝を汚す権利がっ、 あなたにあるとでも?』 『……あはっ、殺したのは私じゃあないですよ。私はただ、準備をしただけです。私は、 亮介クンの願望を叶えてあげただけ……。彼の破壊衝動の手伝いをしてあげただけ。後、 彼の自殺願望の手伝いをしてあげただけ。……見ます? 彼の自殺願望を記録した音声や 動画や実際の自殺未遂のキズ痕……証拠なら腐るほどありますから……』 『……私から……何を奪うつもりですか?』 『そうですねえ……やっぱり、岩渕さんと《D》、ですよねぇ』 『岩渕……さん……』 『はい。あなたは自身の身分を鑑みず、どこの馬の骨ともわからない男を愛した。しかも、 それだけでなく、反社会的かつ中途半端な中小企業まで愛してしまった。ですから、その 愛も情もすべて捨てていただけませんか……?』 『……卑怯者め………彼らのことを何も知らないクセに……佳奈さんは……丸山佳奈さんは、 命を賭けて《D》を守ろうとしていたのに……』 『まあまあまあ……説教が始まりそうなので止めておきますが――少なくとも、これから 京子様には最高のショーをお目にかけたいと思います』 『……ショー?』 『はい。それが終われば、京子様は岩渕さんと幸せに暮らせるハッピーエンドが待ってます から……あと、ほんの少しの辛抱です。それで、私の実験も、何もかもが終わります……』 ――――― ――それは、ほぼ同時であった。 岩渕は待機を指示された院長室の窓の前に立ち、駐車場の奥の出入口とクリニックの自動 ドアから集まるふたつの人々の群れを見下ろしていた。隠れているつもりはないのだが、 岩渕の視線に気がつく者は皆無であった。《D》陣営は社長のアトラスを中心に50名ほど が車外に躍り出て、同じくアトラスから降りる社長を中心に扇型に社員たちを配置した。 《ユウリクリニック》側から駐車場に並ぶ人数は男ばかりが30数名ほど。全員が同じ特殊 部隊風の紺色のジャケット・カーゴパンツ・野球の捕手のような防護装備を着込み、手には ジェラルミン製と思われる巨大な盾、頭部にはバイザー付きのヘルメットを着用していた。 ……胸クソが悪い。 気分は相変わらず乱れていた。しかし岩渕は自分の中に、その乱れとは関係のない感情が 紛れていることに気づいていた。いや……関係ない。関係ない。関係ないのだ……。岩渕は 思ったが、関係なくは――決してなかった。 ユウリからの報酬を受け取り、京子を連れて名古屋を離れたいという願望と……同時に、 《D》のあの輪に戻りたい、という矛盾した願望――それらが複雑に交錯していた……。 クソ……クソ……畜生が……。 「……岩渕さんっ!」 入室した京子が叫びながら岩渕の腕にすがりつくが、岩渕は何も喋らなかった。窓の前で 微動だにせず立ち尽くして、京子の腕を強く掴む。岩渕はただ、心の中で「畜生、畜生」と 繰り返し呟いた……。 「ねえっ! 何か言ってっ! 何か喋ってっ! ……岩渕、さん……どう、したの?」 京子が呻き、泣きそうな顔を見せると、ユウリは満足げに頷いた。 「――さて、ここで京子様にクイズです」 ユウリは……本当に嬉しそうだった。「京子様……どうして岩渕さんがこういう態度で、 あなたの腕を強く掴んでいるのか、わかりますぅ?」 ――――― 扇形に《D》の社員たちが整列し終えたのを目視すると、澤は眼前の、ほんの数メートル 先に姿を現した異様な集団を凝視した。……専属の警備部隊、ていうところか。 部隊の中心には、ヘルメットをしていない、白髪の小柄な中年男が仁王立ちしていた。 中年男は無表情で無言のまま、おそらくは同世代であろう澤の目を見つめ続けていた。 30数名ほどの部隊は中年男を中心に《ユウリクリニック》の出入口を守るかのように 配置され、それぞれが無言のまま盾を手に構えていた。 「……イカれ女の奴隷か? お前らに少しでも人間の心が残っているのなら……去ね……」 中年男を睨みつけて澤は言った。瞬間、相対する男が微かに身を震わせ、舌を打った。 周りにいる隊員たちは相変わらず無表情のままだった。けれど――澤は男の瞳の中にある、 悔しさと悲しさと嫌悪を見逃しはしなかった。……知ってやがるのか。何もかも……知って いて、知っておきながら、従う。……従うしか道がない、か。……同情するぜ。 「……アンタ、名前は?」 一歩踏み込んで澤が短く聞いた。ほぼ同時に、男の両脇にいた男たちが盾を低く構えて 片脚を伸ばした。けれど白髪の男は相変わらず無表情で落ち着き払い、低く言う。 「……安藤だ。コイツらの中で、私だけが発言を許可されている……」安藤が続けて言った。 「暴力はやめて欲しい。話し合いで解決したい。アンタらが暴力を使えば、私たちも同じ 方法を使わざるを得なくなりますから……」 安藤と名乗る男は無表情で、その声には抑揚がなかった。けれど、澤を見つめる彼の目 には……深い哀れみ、同情、戦いたくないという優しさがあった。 そう。澤の敵はあくまでも永里ユウリであり、《D》の目的はクリニック3階の院長室、 そのハズであった。そのハズであるのが至極当然だ。 けれど、今の澤の敵は――今の、《D》の目的は――…… 至極当然……当たり前のこととして――……結論する。 そう。 答えは既に決まっているのだ。 「邪魔するのか? なら……お前ら全員っ! 皆殺しだっ!」 澤が怒鳴り、《D》の社員たちが戦いの咆哮を上げる。 安藤は一瞬間だけ表情を歪ませたものの、次の瞬間にはもう、澤と同じように――鋭く 残酷な光を目に宿らせた。 「……まるで野良犬ですね。こちらの譲歩案を簡単に捨てる知性の低さ……残念です」 「――俺たちが野良犬ならっ、てめえらはカネに飼われた家畜だろうがっ!」 怒りを滲ませる安藤の顔を睨みつけて、澤は叫んだ。 「行くぞっ! ブッ潰してやるっ!」 ――その時、どこかで若い女の悲鳴がした。 けれど、女の悲鳴は人々の怒号や絶叫、モノやヒトやコンクリートがぶつかり合う衝撃音に かき消され、駐車場の虚空に消え、誰かの耳に届くことは決してなかった……。 悲鳴は続いている……。 ――――― 「ふぅー……」 《D》と《ユウリクリニック》の警備隊が激突した瞬間――川澄奈央人は現場の近くのビルの 屋上で双眼鏡をのぞき込みながら、深く息を吐いた――。 「事後承諾でもイイのなら、別に助けてあげてもイイんだけれども――……どうする? どう しますか……岩渕さん? あんまり僕を失望させないでくださいね……」 永里ユウリも安藤浩司も、その存在を知らぬ若い男は――小さく、薄く、微笑んだ……。 ――――― 『激昂するD!』 jに続きます。 本日のオススメ!!! aiko----ッ! めっちゃ好っきゃねん……。 ↑aiko……ごめんな。新曲の宣伝遅れて……ワシ、仕事やらブログとかゲームとか忙しく てさ……とりあえずGoogleでダウンードだけはしたからさ……。またアルバム出たら絶対買う からね……許して……。seesはあなたを永遠に応援します。 正直、紅白のトリがaikoなら、絶対に見るのだが……。まぁいい。 ……そうだっ! aikoのためのショートショートを作ろうっ! ……しかしseesも得意テーマは恐怖と悪……(自慢じゃないが、それ系の話ならくさる ほど湧く。ただ起こすのがめんどくさいからメモるだけ)。どうすればいい……? いったい、 ワシは、どうやって彼女に愛のショートを捧げればイイのだぁーーーっ!? ↑新曲『予告』――カワイイ。 ↑『彼の落書き』――ああ、カワイイ。 ↑『恋のスーパーボール』――カワイ過ぎる。 aiko氏のオススメアルバムっす! お疲れサマです。seesです。 もしかしたら今年最後の更新かも……一応は大晦日に個人的なコメントだけは出して おきたいけれど……まぁ、よくある「来年も~」みたいな定型文くらいはあげておきたい。 仕事は晦日まで、大晦日は家でゆっくりする予定。カニと酒買ってDVD観る予定ってだけ。 忘年会は来週――疲れそう💦 《激昂D》の完結は1月に持ち越しスね……すいやせん。ここまで中途半端に長くなるとは 想定外でして……。まぁ、閲覧数ゴミのseesが何をしようと関係ないかも('◇')ゞ さて――今話は……ぐだってますね……。相変わらずの飲酒しながら制作……脳が酔った 勢いで作った駄文。校正する時間も取れねえし……ううう😢ちなみに《花火師》と《ゲンタツ》 は名古屋の都市伝説です……もしかしたら……実在するかもしないかも💦字数の関係で会話 メイン回になっちゃった(#^^#)テヘヘ 背景の表現や描写は、正直今回手を抜きました……。 次回は最終回前の決着と……それなりに落ち着く内容を考えております。なるたけ納得 していただけるよう熟慮いたします……。 でわでわ、ご意見ご感想、コメント、待ってま~す。ブログでのコメントは必ず返信いたし ます。何かご質問があれば、ぜひぜひ。ご拝読、ありがとうございました。 seesより、愛を込めて🎵 好評?のオマケショート 『……激安と激闘っ!(≧∇≦) seesのツッコミ祭り』 同僚 「seesきゅ~ん(甘)」 sees 「……何やの、気持ち悪い」 同僚 「……キャバクラ行こっ(^_-)-☆」 sees 「はあっ? ヤだよっ! ワシ忙しいんやッ! 無理無理無理――」 同僚 「90分5000円のポッキリコース、行こうよお。(# ゚Д゚)グイグイ」 sees 「無理無理無理ぃぃぃ~……ラメぇぇぇ~~……」 …… …… …… ??? 「こんにちは~~エリカで~すぅ💓」 錦の某キャバクラ、フリー入店、テーブルチャージ無料(タイムサービス)、 安酒のみ飲み放題……こんな激安キャバクラの、最初のフリー嬢は……何と――。 まさかの――……名古屋巻ドリル嬢ぅぅぅっ! sees 「――ドリルじゃねえかっ! ゲッター2かよっ! 神隼人かっ! ヤル気かっ!」 ??? 「こんにちは~~レイで~す💓」 フリー2人目の嬢は『レイ』と名乗ったが、それも納得である。なぜなら……。 sees 「……綾波じゃなくて、林原じゃねえかよっ! 誰が中の人呼べっつったよ! 学生時代、ずっとアンタのラジオ聞いてたよっ! スレイヤーズ毎週見てたよっ! ファンだよっ! だからなぁ、めぐみさん……アンタの顔だけは見たくなかった んだよっ!」 ??? 「こんにちは~~チアキで~す💓(よこざわけい子さん風)」 フリー3人目の嬢は……何と、あの、国民的キャラの妹だった……。 sees 「誰がドラミちゃんと酒飲みたいと思うンだよおおっ! ワシはなぁ、のび太や ないねんぞっ!」 ハァハァハァ……ツッコミが追いつかねえ……何だ、この店は……。 そして――とどめの4人目の嬢は……何と、あの、美少女キャラのパチ物――。 ??? 「こんにちは~~リョウコで~~す💓」 sees 「――ふざけんなっ! てめーどこのYAWARAちゃんだよっ! 絶対元参議院 議員だろーがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」 ハァハァハァ……ツッコミが、ツッコミが……ツッコミどころが多すぎる。 た、たしゅけて……誰か(´;ω;`)ウゥゥ……ハイボールしか飲んでねえヨ……。 😢了😿 こちらは今話がオモロければ…ぽちっと、気軽に、頼みますっ!!……できれば感想も……。 人気ブログランキング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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