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株式会社SEES.ii

株式会社SEES.ii

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2018.04.22
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カテゴリ:ショートショート

ss一覧   短編01   短編02   ​短編03
―――――

 どこをどう走ったのかは覚えていなかった。
 猛烈に息を喘がせながら、ユウキはいくつもの路地を駆け抜け――いくつもの道路を
横切った。いくつもの田畑を通り過ぎ――いくつもの家々を通り過ぎた。何人かの成人
男性や成人女性や老人や老婆とすれ違ったが、ユウキを止める者はいなかった。
 無我夢中で走り続けたユウキが気がつくと、目の前には瀬戸市立図書館があった。
 入口らしき自動ドアを夢中で開けようと、ユウキは足踏みを繰り返した。
「開けてくれっ! お願いだっ! 助けてくださいっ!」
 必死で叫びながら、ドンドンとガラスを叩く。
 けれど、鍵が掛けられているらしく、ドアはどうしても開かなかった。
 ……誰もいない? いや、たとえ誰かがいたとしても……。
 諦めて引き返しかけた時――自動ドアの向こう側、エントランスの廊下の影から、
自分の様子を窺う、自分と同い年くらいの女の子の姿がチラりと見えた。
 女の子が《アイツら》と同じではない保証はどこにもない。どこにもないけれど――
ユウキはもう一度、今度は背後を気にしながら、小さな声で呼びかけた。
「……《アイツら》はここにはいない。……ここを開けてくれ。助けて欲しい」
 開かないドアのガラスに手をピタリと押し付けるようにして、ユウキは図書館の中を
じっと見つめた。夕暮れも近いというのに、蛍光灯はひとつも灯ってはいない。けれど
人の気配だけはある。……そんな気がした。
 ……集まってたのか……自然に? 偶然?
 やがて――エントランスの廊下の影が動き出し、ひとりの少女が現れ出た。そして、
少女はゆっくりと背を屈めて自動ドアに近づき、下部にある鍵を解いた。
 少女は白い服をまとい、髪はボサボサで、首から十字架の付いたペンダントをしていた。
 ……教会の人? そう。まだ会ったばかりだというのに、ユウキは少女に神聖な……
例えば、そう……希望の光、のようなものを感じ取った。確かに、感じた。

「……早く入って」
 少女の声に導かれ、電源を切っているらしい自動ドアを手動で少しだけ開き、ユウキは
体をすべり込ませた。少女が扉を閉め、また鍵を閉め、ガチリと硬質な音を聞いたその時
――力が抜けた。
「いっ!」
 思わず尻もちをつく。昼過ぎから何も飲まず食わず、何時間も走り続けた疲労が全身に
巡るのがわかる。もちろん、疲労のせいだけではなく、恐怖と緊張のためだ。
 無言で奥歯を噛み締めながら、大きく安堵の息を吐く。
 ……えーと。
 ユウキが立ち上がり口を開くと同時に、頭上の少女の声と声が重なった。
「「……何歳?」」
 偶然ではない同じ問いに、ユウキと少女が顔を見合わせて笑った。

 ―――――

 ユウキと名乗った高校生の男子の提案で、図書館にバリケードを作ることに決めた。
窓を施錠した後にカーテンを閉め、そこに本棚を移動させて壁を作った。それと出入口の
自動ドアに備え付けてある防火用シャッターを下ろし、《本日閉館》のプレートを外に
置いた。さらに事務室に残されていた職員用のお菓子や、災害時用の防災グッズから
カンパンや缶詰を取り出し、図書館に取り残された子供たちにあげた。
 子供たち――。
 すべての司書士や職員たち――大人たちが図書館から消え去った後(もしかすると、
正気を保っていた誰かが、あえて子供たちをこの場に残したのかもしれないが)、閉じ
込められていた子供たちの泣き声を聞き――セシリアはいても立ってもいられず、たま
たま裏口に駐車してあったトラックの屋根によじ登り、2階のテラスから侵入した。
 セリシアはそこで子供たちの話を聞くと、驚くべきことに――誰ひとり家には帰りたく
ない、できることならずっとここに留まっていたいと言う声だった。
 そう。ここに残された子供たちは皆――混沌とする市街地から、かつて信頼していた
大人たちから、何かが狂ってしまった母や父から――恐怖に追われ、どうしようもなく
なって、この図書館に逃げ込んだ――15名の、子供たちなのだ。
 壁に掛けてある時計を見る。午後3時を回っている。瀬戸市内が本格的に狂い始めて、
まだ24時間も経っているかどうかもわからない。

「……セシリア、少し休まないか? 玄関の見張りは中学生のヤツらと交代でするし……
できれば子供たちも1ヵ所に集めて、明かりは最小限にしたいし……それに、そのぅ……
少し、状況を整理したい」
 そう。ユウキとはさっき図書館に迎え入れたばかりで、名前を呼ばれたのも初めての
ことだった。それなのに、今ではなぜか、ずっと一緒に敵と戦って来た昔からの戦友の
ような気がした。
 自分たちは果たして、この戦争に勝利することができるのだろうか?
 その可能性は果てしなくゼロに近いようにも思えた。敵は言うなれば、街、そのもの
なのだ。残された子供たちを連れて生き延びることは、不可能に近いハズだった。でも
……戦うしかなかった。私たちが生き延びるためには、大人たちと戦い続けるしか道は
なかった。
 もし……この戦いに勝利して、街の平和を取り戻すことができたら……そうしたら、
その時は、ユウキやここの子供たちと一緒にヴァチカンへ行きたい。法王様からお褒めの
言葉を頂戴できるかもしれない。両親から貰った仕送りを全部使ってもかまわない。
 セシリアはその時のことを想像した。絢爛豪華な謁見の間に、ふたりで法王様の元に
跪く自分たちの姿を思い浮かべてみた。
 もし、本当にそんな時がきたら、どんなに嬉しいだろう。

「……セシリア」
 16歳のユウキが17歳のセシリアを呼んだ。現状――この街において、最も信頼で
きるのは年齢だけだ。
「……はい。何です?」
 泣き疲れて眠っている小学生の男の子の髪を撫でながらセシリアは答えた。
「例の……パウロ神父様、だっけ? その人は……最後、何て言ってたんだ?」
「……まるで、何かの悪霊に憑りつかれているような様子でした。神父様は……『なぜ
……俺の息子が死ななきゃならねえんだ
』とか、『なぜ、お前たちクソ共は生き続けら
れて、俺の子は死んだ?
』と仰ってました……それに……『息子より長く生きているヤツ
……たとえ1秒でも長く生きているヤツは……許せねえ
』とも……」
「……俺が《アイツら》のひとりから、この街の……大人たちが元に戻る方法を聞いた
時、言われたのが――『この思いは、この願望は、この怒りは、この恨みは、破壊されな
ければ消えねえよ』、だったな……」
「……息子さんが死んでしまった怒りと憎しみが、父親の呪いに変わって、街の人々を
襲った……ということ、ですか?」
「俺が会った《アイツら》のおっさんと、パウロ神父の話を強引に結びつけると……な」
「じゃあ、『息子より長く生きているヤツ』って……」
「ああ……たぶん、18歳以上の大人? を無差別に、て意味かな……」
「調べたら、それが誰かわかるんじゃない? それに……神父様はこうも仰っていました。
『呪詛を流す、《アンテナとスピーカー》』を探せと……ユウキの会った方は確か……」
「『破壊されなければ消えねえよ』……か。一応、調べて探してみるのもアリかな……」
「瀬戸市で、18歳の息子さんを亡くした……たぶん、理不尽で、不平等な死に方を
された方……」
「……そのオヤジが作った《アンテナとスピーカー》を破壊すれば、この騒ぎも終わる
かもしれない……ってことか」
「……本当にオカルトね。こんなこと――」
 大人なら誰も信じてはくれないね……そう言いそうになって、セシリアは口をつぐんだ。
「こんなこと考えるなんて……本当――中二病だよな……」
「……中二病?」
「いいんだ。気にしないでくれ」
 ユウキはそう言うと、図書館の貸し出しカウンターを指で差し、「……瀬戸市の古い
新聞記事とかって、あそこのパソコンで検索できるかな? ……スマホもネットも使え
ないしな」と言って微笑んだ。
 そして、その微笑みを見たセシリアは――自分より1歳年下の男子高校生に特別な
好意を抱き始めていることに気づいた。
 異性に対してそんな感情を抱くのは、本当に久しぶりのことだった。

―――――

 ……キョウカ、お姉ちゃん。
 セシリアと名乗る教会のシスター見習いの女性に髪を撫でてもらいながら、ソウタは
低く呻いた。僕は泣いていた。眠ることなどできず、ずっとずっと、セシリアの膝の上で
泣いていた。
 ソウタの閉じた瞼の裏にあるふたつの眼球は、ひたすらに闇を見つめ続けた。そこには、
言葉にできぬほどの強烈な負の感情が宿っていた。
 憎しみ……怒り……恨み……悲しみ……苛立ち……恐怖……。
 およそ人間が持っている負の感情のすべてが、眼球の奥で渦を巻いて蠢いていた。

 僕はもう二度と、キョウカやママやパパとご飯を食べることができないんだ。わけの
わからない理由や方法で、僕の幸せや人生がすべて台無しにされたんだ。
 ほんの数時間のあいだに、ソウタはそれを理解した。

 許せない。
 すべての不幸の原因と確信する、東公園の、あの石像のことだけじゃあない。
 この世のすべての大人たちが許せなかった。
 普段からテレビの中で偉そうにしている大人、
 僕を子供扱いしてバカにする大人、
 僕をこんなメに遭わせたクセに、
 僕からキョウカを奪ったクセにっ!

 すべてが憎かった。すべてを壊してやりたいと思った。
『元に戻る方法』? だからどうしたっ? 
 僕は絶対に、絶対に、お前たち、大人を、元に戻ろうが、何だろうが――
 絶対に、許さない。 
 
 瀬戸市を大人たちから守るのは――僕だ。僕だけなんだっ!

―――――

 『ゴーレムから街を守れ!』 後編b に続きます。














 本日のオススメ!!!
 ORESAMA!!!
 
  久しぶりのORESAMA氏。相変わらずメディアに露出するほどメジャーには
 なっていないかもですが……ボーカルの「ぽん」嬢がカワイ過ぎる……。
  以前と似たような紹介文ですが……ORESAMAの特徴はエレクトロな演奏と
 ポップな歌詞、ノスタルジックな演出が極めて強いバンドです。80、90年代
 のJポップはseesもあまり聞いてこなかったので……とても新鮮です。それで
 いて現代風なアレンジって……結構レアなことだと思うけど……やはりもう少し
 だけ売れて欲しい……。
  ↓は先月発表された曲、ちょっと古い曲、さらにオマケの曲。……ちなみに、
 レーベルは違いますwww





 リリース情報です。……まぁ、興味もたれた方は、どーぞ。
   
 


 雑記

 お疲れ様です。seesです。
 相変わらず更新頻度遅くてすいませんね。モチベが下がったワケではないのですが、
いかんせん……この世界には魅力的な誘惑が多すぎる💦
 大谷翔平氏の試合中継(BS買ってて本当に良かった)や将棋の藤井先生、大相撲や
ペナントレース、競馬……チェックするべき項目が多すぎて……時間がいくらあっても
足りませんぜ……。

 さて、今話はseesの妄想と、海外小説のオマージュを融合させた意欲作仕上がりです。
まぁ、訪問されたほとんどの方には不快なモノでしょうケド……。一度はヤッてみたかっ
たンすよぉぉ、パニックもの。難しすぎて頭から血が出そうでしたけどね(⋈◍>◡<◍)。
まぁ……これの評価や感想はあまり求めません。こういうジャンルって、あまり評価され
るものでもないしね。……暇つぶしにでも、目を通していただけるだけでいいや。
《後編b》はもうすぐ、待っててちょーだい。

 さらに次回の短編はseesの大好きなあのシリーズ。《D》短編をひとつ作ろうかと思い
ます。タイトルは……『持たざる者と、D!』かな(仮)。持たざる者、というのは、
もちろん……あの野郎のことですねww


 seesに関しての情報はもっぱら​Twitter​を利用させてもらってますので、そちらでの
フォローもよろしくです。リプくれると嬉しいっすね。もちろんブログ内容での誹謗中傷、
辛辣なコメントも大大大歓迎で~す。リクエスト相談、ss無償提供、小説制作の雑談、いつ
でも何でも気軽に話しかけてくださいっス~。

 でわでわ、ご意見ご感想、コメント、待ってま~す。ブログでのコメントは必ず返信いたし
ます。何かご質問があれば、ぜひぜひ。ご拝読、ありがとうございました。
 seesより、愛を込めて💓




 好評?のオマケショート 『うんテン🚙=33』

 sees   「……コラッ! 車線変更は早めにっ、アピールは強引にっ! 都会の
       4レーン、ナメんなよっ!」
 新入り  「はいっ! わかりましたっ!」
       そう。
       本日は新入社員の運転講習。seesの働くグレー企業は社用車の運転に
       際して講習が義務付けられている。

 sees   「ちゃうっ! そこはバスレーンやっ! 右側が右折するとは限らんでっ!」
 sees   「初見は+10キロ、慣れた道なら+20やっ! トロトロ走るんやないっ!」
 sees   「レーンを利用してバスを追い越すっ! これが有名な『名古屋走り』やぞ」
 sees   「『誘導する線?』そんなモンはねえっ! 甘えんなっ!」
 sees   「信号? そんなモンはねえっ!(嘘) あれは『矢印』だっ!」

       ……はぁはぁ、疲れたな。さすがに免許取得して1年やそこらの新入社員に
       運転教えるのも楽じゃないYO。質問も多いし……。

 新入り  「コンビニでアイドリングしての休憩ってアリ、ですか?」
 sees   「……ケースバイケース。ただし……目立つな。立ち読みも厳禁だ」
 新入り  「営業車内での飲食って?」
 sees   「弁当NG。カップ麺NG。おにぎりOK。……おすすめはゼリー。夏場は
       クーリッシュが美味いゾ……煙草吸ったら殺す」
 新入り  「雪とか、台風の時って……私、運転ヘタクソで……」
 sees   「ギアをセカンドにいれろ。できるだけエンブレを使ってアクセルを踏め」
 新入り  「はいっ!」

       ……ふふふ。まったくしょーがないジャリガキたちだ。
       良かろう。私が営業車のいろはを教えてやろうじゃあないかww
       むふふ。あー気持ちいい。あー今日の仕事はラクだにゃ~あ(*‘∀‘)

       ………
       ………
       ………

       ……さて、この小話のオチはっと……やはり……。
 部長   「sees君、さっき、キミと新入り君が乗ってたバネットなんだけど……」
 sees   「……はい?」
 部長   「こんなものが落ちてたよ」
       それは――……コンビニの袋、である。瞬間、seesは我にかえった。
       眠気が吹っ飛び、瞳孔が開く――……「ヴッ!」
 部長   「……マンガと雑誌だねぇ……。何々……『ワンパンマン』と『ぴあムック、
       藤井聡太特集』『食糧人類』『甲鉄城のカバネリ』? sees、お前よお……」
 sees   「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!! 部長ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!! 
       バラしちゃらめぇぇぇっ!!!(特に『食糧人類』みたいなグロマンガ読んでる
       ことぉぉ)」


                                了💦💦💦







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Last updated  2018.04.23 09:55:13
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