SEESの短編集 05 『聖女のFと、姫君のD!』 k3(後編)最終回
ss一覧 短編01 短編02 短編03 短編04 短編05 《D》については短編の02と03を参照。番外としてはこちらから 登場人物一覧はこちらから―――――注意!! こちらは最終話『後編』となります。前編・中編は短編05こちらからどうぞ。――――― 10月10日――午後17時。「……随分と、落ち着いてるんですね? 意外でした」 横目に私の顔を見つめながら川澄奈央人が言い、宮間有希が「確かにね……ビービー泣いて取り乱すのかと思ったわ」と不思議そうに言った。 伏見宮京子は『そんなことはありませんっ!』と怒鳴ろうとした。だが、口をパクパクさせただけで言葉にすることができなかった。 ……本心であるはずなのに。本当に心の底から、ふたりの戦いを止めたいと願っているはずなのに……どうしてだろう? たぶん……澤社長から岩渕さんに対する殺意、のようなものを感じないからだ。 だから……かな? 《D》の面々も、似たような心境なのかもしれない……。 ふたりを止めてはいけない、そんな不文律が、そんな暗黙の了解じみた空気が、その場を支配していることに、京子は気がついた。 そう――。 その場にいる《D》と《F》の人々は、ふたりの男が決着を迎えようとするその瞬間を、ただ、ただ黙って見つめていた。「……なぜ、人は争うのか……なぜ、人は自分だけが正しいと信じるのか……」 伏見宮京子は誰にともなく呟き、目を細めて辺りを見まわす。それから……彼らの交わす言葉に耳を澄ました。「……ガキ、最終警告だ。拳を下ろして目を閉じろ……それで、お前への処分はナシにしてやってもエエわ……」「……俺は、アンタのガキ……じゃない……言ったろ? ……アンタは、間違っている」 澤は沈黙した。 ただ――激しい呼吸を繰り返し、血と汗とホコリまみれの顔を苦痛に歪める岩渕の顔を……ただ――黙って見つめていた……。 澤光太郎……やはり、一筋縄ではいかないな。 ふと、京子は、愛する男の頬に触れる感触を思い出した。頼りなげで、儚げで、それでいてとても優しく……とても愛しい。どうしようもなく――……そう、どうしようもなく愛おしい男の肌の感触を――。 殴り合うふたりの男の顔を見つめ、指に嵌めた《カーバンクルの指輪》をいとおしむように撫でながら、京子はそっと唇をなめた。 その時だった。 その時、京子の心の中に、突然、例えようのない黒い霧がふつふつと昇り上がって来た。 ああ。 与えたい――。 岩渕に対する無償の愛。富と名声も、もちろん私自身も含めて――彼になら私のすべてを捧げても良いと思えた。……たとえ、その裏でいつ、どこで、誰が不幸になろうと構わないとさえ思える。 そう。 私だけを愛してくれるのなら……後のことなどもう、後の世界のことなど……一切合切、私の知ったことではないのだから……。 そして――京子は、ついに心を決めた。 欲しい。 ああ……欲しい。 すべてだ。こいつらのすべてが、欲しい……。 そう……《D》を私のものにする。 もう一度、京子は唇を舐めた。今、ルージュもグロスも塗っていないこの唇で、岩渕の傷口を舐めたらどんな味がするのだろう? "伏見宮京子"がそんな破廉恥な考えを抱いているなど、誰も想像すらしていないのだろう。そう思うと、そう思うだけで――……私は、心の中でクスクスと笑っていた。――――― 既に、岩渕の肉体は限界を迎えようとしていた。殴られ蹴られ倒されて内出血を起こしかけていた肺が酸素を求めて悶え、震えるように、折れた肋骨が暴れ狂った内臓は回復を求めて激痛を走らせていた。『立て』という命令を1秒ごとに送り続けなければ、脚や腕はその動きを止めてしまいそうだった。「……もう限界なンやろ? 岩渕、無理すンなや」 自分の激しい息遣いの向こうに、岩渕は澤の声を聞いた。「"聖女"も宇津木も《F》も、お前にとっては他人やろ? いったい、なぜだ? 理由がわからンな。俺様の行動が間違いだと言いたい気持ちも……今はなンとなくわかるが……それでも、納得はしてやれねえな……正義感か? それとも、そこの"姫"にイイ顔でもしたいだけか?」 だが岩渕は、無言で立ち続け、なおも拳を握り続けた。まるで自分ではなく、自分の中に住む、とてつもなく強い何かの意思が、岩渕の肉体を支配し、それに"動かされている"かのようだった。 岩渕は、いや、岩渕と彼の意志を支えている"何か"は――自分が本当に"助けなくてはならない人物"のことを思い出していた。 そいつは強かった。そして、その強さに、岩渕は憧れた。 そいつは岩渕を便利な道具に仕立てるため、厳しく辛い教育を施そうとした。そいつにはそいつの目的があったからだ。 どんなに辛い仕事でも持ちこたえられるように、どんなに厳しい現実でも決して絶望しないように……そいつ自身も深い悲しみと過去を背負っているのにも関わらず、そいつは数多くの若者を厳しく育てた。 そいつは、たとえ、自分が憎まれていたとしても気にはしなかった。自分が他人になんと思われようが構わなかった。結果――多くの若者が精神的な成長を遂げ、社会という闇や光に順応できるようになっていた……。 そう。 岩渕が立ち、走り、歩き、考え、知り、生きているのは、澤光太郎のおかげだった。「……俺は、アンタを救いたいだけなんだ……澤さん……」 澤は何も言わなかった。岩渕はもはや口のきける状態ではなかった。ただ、岩渕の脚を奮い立たせ、彼の願望を叶えさせたいと祈る"何か"は――ボロボロに果てた岩渕の体を、半ば強引に維持させていた。――そのことは、岩渕自身、知る由もなかった。「……見てられねえんだよ。アンタが……そうやって暴れ狂っている姿なんざ……《D》の誰も、見たくはねえんだ……」――――― 永遠にも思われた戦いの果てで、男が「……目を覚まして……くれ」と呟き、静かに、膝を崩して倒れる光景を――澤光太郎は見た。「……バカ野郎が、目ならとうに覚めてンだよ……好き放題イイやがって、畜生が」「岩渕さんっ!」 離れた場所から若い女の悲鳴が上がった。……いや、それは悲鳴というより――何か、新しい玩具を与えられた子供のような、狂喜じみた悲鳴だった。 伏見宮京子……これがコイツの本性ってワケか。澤は心の中でそう思ったが、もちろん、口に出すことはしなかった。 "聖地"に響く岩渕の激しい息遣いをしばらく聞いてから、澤は岩渕の肩を抱いて芝生に寝かせた。それから償いのつもりで、内ポケットに入っていたハンカチで岩渕の顔を拭った。激しく喘いでいた男の呼吸が、少しずつ落ち着きを取り戻したのがわかった。「……《F》の今後については、お前に一任する……もちろん、何もかもすべてってワケにはいかねえが……今回のケンカ……引き分けにしてやるわ」 その言葉に岩渕は目を見開き、澤の目を強く見つめた。「……申し訳、ありません」 未だ荒々しい呼吸の合間に岩渕が言った。「……でも……どうして? ……倒れたのは俺なのに……どうして……ですか?」「……簡単なことや……負けていたのは、俺様だったから……やな」「……?」 岩渕は何も理解していないようだった。澤はただ、説明は難しいなと思い、背後に佇む少女の姿をした"何か"の顔を、ただ静かに見つめ返すだけだった。 本当は少女の姿をビデオに録画したり、写真にして残しておきたかった。もし聞こえるのなら、少女の声を録音しておきたかった。だがそんなことには、今は何の意味もなかった。たとえそれをしたとしても、他人には絶対に理解してはもらえないのだから。 ――今回の件、お前にとっちゃあ不満かもしれねえが……俺と岩渕に免じて、勘弁してやってくれねえか? 少女の姿をした"何か"は――最初は怒ったような顔をして……困ったような顔をして……次に呆れたような顔をして……最後に―― ――『……またね……サワのおじちゃん……』 優しく微笑みながら……少しずつ、少しずつ、空気に溶け込むように、消えていった。 ……どこからともなく湧いて出るクソ、《D》をハメようと画策するクズ、プライドばかりが肥大する社員たち、団結しているようでしていない《D》のバカ共、自覚の薄いワガママ姫、反抗ばかりするクソガキ、自分勝手で暴力的な社長――……。 はぁ……難儀な会社になっちまったなあ……《D》は。「……俺は、クビですか?」 片腕で両目を覆い、涙ぐみながら岩渕が言うと、澤は笑った。「うるせえぞクソガキが、お前らは"俺様のガキ"なンだから、いらンこと心配すンな……」 岩渕はそれ以上何も言わなかった。ただ、ふたりで――大声を出しながら駆け寄ってくる《D》の人々の姿を見つめるだけだった。 ――――― 10月20日――。 《宗教法人団体フィラーハ》は同日付での解散を発表した。《宗教法人団体フィラーハ》こと《F》に所属する人数は100名を超えていたが、そのすべての人間が解散に同意した。 10月以降に発生した《D》と《F》の2組織間における金銭トラブル・暴力事件・児童誘拐などの事件では、何人もの人々が犯行に関与した。 愛知県豊田市茶臼岳の山腹にある《F》の本拠地では、《F》の信徒と《D》の社員による大規模な乱闘事件が発生し、80名を超える者が重軽傷を負った。 だが、《F》の代表である宇津木聖一と、《D》代表取締役である澤光太郎は、司法への最低限の報告以外をすべて黙殺する方針を互いに決めた。 宇津木聖一が《D》に求める条件として、 1.《F》及び元構成員への接触を禁ずる。 2.慰謝料・治療費・賠償金など、互いの金銭の要求・受領を禁ずる。 3."見舞い金"としての金銭5000万円の要求。 とのことだった。 澤光太郎が《F》に求める条件として、 1.《D》に関係するすべての人物への接触を禁ずる。 2.《F》の構成員、及び元構成員の愛知県外への移住。 3.特定の人物の身柄の譲渡。 以上が提示された。 茶臼岳の乱闘事件から3日後の13日には、代表者2名による最初で最後の会談が実現し、合意に至る。ここで、《F》と《D》の示談が成立した。《F》の人々にとって、《D》の襲撃は到底受け入れ難い行為ではあったものの、その後、代表である宇津木とその娘であるヒカルによって、治療費の全額負担と、再就職、新たな住居の手配、経費の負担などが約束された。幸い、後遺症の残るケガを負った者は皆無であり、何より、ヒカルの無事が約束されたことに、《F》の人々は喜んだ。 一方で、多額の損害を被った《D》の代表である澤は、損害と経費の賠償に川澄奈央人の隠し財産を宛てた。澤の「……お前が裏で宇津木とつるンでたのは知ってるンや」という詰問に対して、自分が一部宇津木と結託してシナリオを作っていたことを認めた上で、「そもそも僕がいなけりゃ、姫様だって何されてたかわかったもんじゃない。嘘でしょ?勘弁してくださいよ、社長……」と言った。《F》に強奪された1億の半分近くを、《D》に没収される形にはなったが、本人は涙を見せるようなことはなく、「まぁ、必要経費だと思えば安いものか」とうそぶいているという。―――――《D》代表取締役社長の男は、目を細めて田中陽次を見つめた。それから「澤だ」と名乗って右手を突き出した。 田中は男の小さな目を見つめ返し、その右手を握り締めようとした。だが、できなかった。田中は会議室のような場所で、安っぽいパイプのイスに座らされ、両手を背後で縛られていたのだ。空気にホコリが混じり、暗く、冷たい部屋だった。「……気分はどうや?」 アゴを手でさすりながら澤が言った。澤の後ろには黒いスーツを着た男女が3人いて、敵意を剥き出しにした目で田中を見つめている。黒いスーツのうちのひとりは恰幅の良い体形の中年男で、ひとりは腕を組んでいる。もうひとりは口元に白い大きなマスクをしていた。間違いなかった。ひとりは宮間有希、あの女に間違いなかった。「田中さん……今日は、アンタに質問したくてここに呼んだンだ」 腕を引っ込めた後で、澤は上着のポケットから、A4の紙束を2冊取り出した。それは、とある"動物"のイラストと、外国語らしき文字がびっしりと書き綴られていた。「てめえ……宮間ぁ……どういうつもりだ? ああっ?」 田中陽次は澤の背後に立つ宮間の顔を睨み、息を飲んだ。それから、恐る恐る視線を戻し、澤の目を見つめた。「ねえ、マグロとカニ、田中さんはどっちが好き?」 宮間が言い、澤が言う。「お前がコケにした時計3本、"3億"返済の長い旅や。特別に、選ばせてやるワ。ロシアでカニ捕るか、メキシコでマグロ釣るか……どっちがいい?」 田中はうっすらと涙を浮かべ、強く唇を噛んだ。「……許して……くれえ……お願い……です……家も車も売ります……貯金も、投資信託も解約、します……株式も……何もかも売って……必ず……お支払い、しますからぁ……」 呻きながら田中は言った。それから――、 全身に戦慄が走り――凄まじい恐怖に顔を歪めた。「……悪いな。"《D》の女たち"が、お前を『島流し』にしろってうるさいンだよ……お前みたいな外道は、『この街に不要』なンだと……だからまぁ、海外行って、死ンでくれや」――――― 11月10日――。 松葉杖を携えた宇津木とヒカルが、大ケガを負った岩渕誠の入院する名大病院の病室を訪ねて来た。「岩渕さん……ご無沙汰しています」 そう言って男女はペコリと頭を下げた。 ヒカルは今後、宇津木の経営する企業にOLとして就職するという報告を受けた。1週間ほど前、宇津木と岩渕で協議した結果、《F》は名前と形を変え、長野県の福祉施設の経営を始める予定だ。社員・従業員は元《F》の信徒たちをそのまま雇用するらしい。 資本金は宇津木が用意していた。そのことを宇津木に再確認すると、彼は『私の資産も、これで打ち止めですよ』と言って笑った。 別に《F》全員の生活の面倒は見なくても良いのでは? とも思ったが、ヒカルのたっての願いということもあり、結果――宇津木は全財産を《F》のために使った。かつて経営していたファンド会社、資産運用の会社もすべて、自主廃業したらしい。「本当に……何て、お礼を言ったらいいのか……」 ヒカルはそう言って、岩渕の座るベッドの前で再び深く頭を下げた。「あの時、澤社長を止めて下さらなければ……私たちは、死んでいたかもしれません……」 岩渕は女の肩を抱き、頭を上げるよう促した。「……見えないところで、社長も《D》のみんなも、《F》への暴力にはそれなりの手加減をしていたみたいだし……宇津木さん、アンタと俺だけは別だけどな」 岩渕は軽く笑いながら、苦笑いをする宇津木の顔を見つめた。「本当ですね」「体調は? もう退院したんだろ?」「おかげ様で……完治はまだまだ先ですが、会社の整理は終わりそうです。岩渕様とツカサ様、澤様には……本当にご迷惑をおかけして……これからは、娘とふたり、一生懸命生きてみたいと思います……」 宇津木の言葉にヒカルが嬉しそうに笑った。 岩渕はヒカルの手をしっかりと握り締める。彼女の体温で胸が熱くなる。彼女の隣では、宇津木聖一が目を細めてふたりの握手を見つめていた。「……結局、フィラーハ様、ていうのは、何だったんだ?」 岩渕がそう言い、宇津木が、「……日本の歴史上、この神の名が使われていた形跡は皆無でした……おそらくは、権力者によって政治的に利用された密教のひとつ……利用されるだけされて捨てられた……そんなところでしょう……」と言ってヒカルのほうに顔を向ける。「私は……母から娘への愛、死後も誰かを見守り続けたい、忘れないでいて欲しい、そんな人々の願いの込められた教え、だと思います……いえ、信じたいです」 目を潤ませてヒカルが言う。「母は最期に、あなたが助けに来てくれることを教えてくれました……岩渕さん、私は、あなたのことを忘れません」 岩渕は無言で首を振り、もう一度、ふたりと固い握手を交わした。 心の中で、『こっちは忘れちまいそうだがな』とふたりに言う。 そう。 澤社長の誕生日の件、宮間の俳句の優勝パーティの件、経団連の"噛む"レセプションパーティへの参加、新規オープンするハイブランド店への挨拶回り……。 ……仕事と悩みが山積みだ。岩渕は思った。 ふたりを見送り、病室の窓の外を眺める もし神様がいるとしたら……俺にとっては"女神様"になるのかな? 自分で考えておきながら、自分の考えが少しだけ恥ずかしくなり――岩渕は照れくさく微笑んだ。 窓からの秋風が、病室のカーテンを微かに揺らす……。――――― 最終回オススメはもちろん? sees大好き『女王蜂』様……。 女王蜂……。 4人組バンド。それぞれが性別年齢非公開w ボーカルはアヴちゃん、こと薔薇園アヴ。ベースのやしちゃん。ドラムのルリちゃん。ギターのひばりくん。 ボーカルのアヴちゃん中心のディスコ風ロックの曲調。それにしても……メインのアヴちゃんの声域の広さ・声量の凄さは特筆。幅が広く、丁寧、そしてどこか物悲しい……。 歌詞は厨二的で切なく、セクシー、破滅的なものが多く、独特の世界観は腐女や腐男に大うけ。海外でも全然イケると思うけどな……。 それにしてもアヴちゃんは美しい……あの狂気じみたヴィジュアルとパフォーマンス、すぐに好きになりました。 いいねいいね……ゾクゾクするぅぅ。 雑記 お疲れ様です、seesです。 最初に言い訳をいくつか。 最終話、更新大幅に遅れてすみません。いやね、もうホント大変でした。「さーて作るどー」のタイミングで志村けん師匠の急死……泣きながら過ごしているうちに数日たち、なかなかダメージが深く、立ち直るのに苦労しました。 seesの勤める会社でもコロナ騒ぎがあり、もう大変……。実際はインフルを患った若手社員がいて、そやつが顧客に吹聴してしまってネットに情報漏洩……クレーム案件で社長激オコ(# ゚Д゚)……とんでもなく社内が荒れた日々がありまして……。 そして最終話、いかがでしたかね? 最終話は豪華版として4話ほどまとめ更新しようかとも考えましたが、すまんです。結局我慢もできず、中途半端なタイミングで順次公開の流れになりました( ;∀;)ア~ア 今回の話の総括ですが、結局、seesは澤さん大好きってことでまとまりました💦💦💦最終話『中』の話がすべてです。それまでの川澄氏の行動や、Fのなんちゃらかんちゃらなど、実際はどうでもいいことなのです。ただ物語の構成上、仮想敵、みたいなくくりでのキャラ設定が欲しかっただけ(#^.^#)テヘヘ 方向性としては、やはり京子様のひとりだち(キャラ立ち)を最優先として、キャラクターたちにバンバン個性を与えていきたいな~みたいなww 今後は京子様の2面性と、Dの総務部長こと熊谷部長、生贄役として若手を何人か作ろうかと……ということで……次回は……。まあ、⇩見ればわかるかなww しばらくお休みしていたショートショートも何本か作ろうかなと考えていますので、次のDはその後かな……。 何にせよ、コロナ、早く終わらないかな……微力ですが、seesも世界平和を祈ります。 私、seesに関しての情報はもっぱらTwitterを利用させてもらってますので、そちらでの フォローもよろしくです。リプくれると嬉しいっすね。もちろんブログ内容での誹謗中傷、 辛辣なコメントも大大大歓迎で~す。リクエスト相談、ss無償提供、小説制作の雑談、いつ でも何でも気軽に話しかけてくださいっス~。"イイネ"もよろしくぅ!! でわでわ、ご意見ご感想、コメント、待ってま~す。ブログでのコメントは必ず返信いた します。何かご質問があれば、ぜひぜひ。ご拝読、ありがとうございました。 seesより、愛を込めて💓 適当ショートショート劇場 『コロパニック』sees 「『ずっまよ』のコンサート……延期だった……』」後輩 「えーーっ! seesさん、チケット取るんだ―って騒いでましたよねw」sees 「うん……エメさんも、ポルカも、ヨルシカも、コンサート延期やら、中止って……」後輩 「うわあ……最悪すね」sees 「ホンマやで……好きな人に会いに行けないのは……つらひ( ;∀;)」後輩 「……(きもいな)」―――――sees 「マスク、もうないアル……後輩ちゃんは?」後輩 「昨日――アオキスーパーの開店並んで買いました。って言っても20枚ほどだけど」sees 「……洗ってもいいのかな?」後輩 「イイとは思いますけど、先輩、アルコール液とかは持ってます?」sees 「ないけど……会社の備品、少しだけパクってもいいのかな?」後輩 「……(ダメだコイツ)」―――――sees 「トイレ紙はまだ余裕あるけど……箱ティッシュが、もう残り少ない、どうしよう」後輩 「(うぜえな)……うーん、子供用のポケットティッシュなら、まだ薬局にあったよ」sees 「えー……できれば鼻セレブ使いたい……」後輩 「はあ? 何を贅沢いってんすか? 来週には大量に入荷するって世間は言ってますよ?」sees 「うう……もうダメだ……ワシは、もう、ダメだ……殺して……」後輩 「う……(唐突にメンヘラ? マジでキモいな……)」 (だいぶ前に作ったオマケ、今はもう大丈夫)(#^.^#)―――――sees 「いっそコロなりたい……コロなりたい……そしたら2週間の有給確定……ああコロ なりたいコロなりたいコロなりたい……ブツブツ」後輩 「ww(壊れたww)。有給なんてダメに決まってんじゃないスか~(# ゚Д゚)」sees 「そんなことないもんっ! ウチ、コロなって休むもんっ! 給料もらったまま、病院 で隔離されるんだいっ! (そしたらいっぱいブログ更新するゾ(*´σー`)エヘヘ)」後輩 「……これが、"疲れた現代人"のホンネか……」 3月に作ったオマケ部分。現在では、心境も全然違います。 これは国難です。早期の収束を願います……。 🌬了🤧 こちらは今話がオモロければ…ぽちっと、気軽に、頼みますっ!!……できれば感想も……。人気ブログランキング ――――― 岩渕の病室を出たヒカルは、ナースセンターの前のラウンジに座る伏見宮京子の元へと向かった。 岩渕への別れの挨拶の際――別に彼女が同席していても良かったはずだった。けれど、京子はここで待つと固辞した。何か気を使うことでもあったのだろうか?「……私は少し、川澄様と会う予定がある。ヒカルも最後に、京子様と挨拶してきなさい。終わったら……病院の入口で待ち合わせよう……」 ヒカルの返事を待たずに、宇津木はエレベーターに乗って行ってしまった。 ……お話があるなら、岩渕さんの病室ですれば良かったのに。 そんなことを思いながら、ヒカルはナースセンターに向かった。そして、ひとり静かに何かの本を読みふける京子の前に立った。 伏見宮京子はとても上機嫌のように見えた。朗らかで、嬉しそうで、ヒカルの言葉ひとつひとつに丁寧に対応し、眩しいくらいの笑顔を向けた。本当にキレイな人だ。ヒカルは思った。真剣な顔は人形のように美しく、くだけた表情はアイドルのように可愛らしかった。顔は小さく、瞳は大きかった。背は高いとは言えないが、上品な佇まいは存在感をより大きく見せていた。後で聞いた話によれば、岩渕さんとは互いに想い合っているらしい。「ねえ……ヒカルさん、ちょっと、いい?」 しばらく世間話をしてから、京子はヒカルをナースセンターの奥へと誘った。「えっ? ここは関係者以外の人は……」「ああ……ちょっと"機械"を使わせてもらうだけだから……婦長さんにも許可はいただいてますから……」 京子はヒカルの手を取ってナースセンターの奥へと歩き、様々な医療器具や書類や本やコピー用紙やコピー機が乱雑に置かれている一角へと入った。「……京子様、いったい、ここで何を?」「えーと……ヒカルさんにはお願いしたいことがあるんです」 京子が屈託のない笑顔を向けて話すので、ヒカルもまた、ぎこちなく微笑んで彼女の顔を見つめ返した。これまで彼女にしてきたことを考えると、申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになる。 その時―― 京子が次の言葉を発した、その時―― ヒカルは―― 凍りついた。「この、"神託"――でしたかね? このノート、そこのシュレッダーで切り刻んで下さい」 ジジジジジジジジジジジ……。 その裁断機は、ヒカルのすぐ目の前で、無機質な音を規則的に流し続けた。「な、何で……姫様が、それを?」 そう。ヒカルが何年もの間書き綴った――母の愛と、母への愛が詰まった――そして、京子がラウンジで読んでいて――今、まさにシュレッダーの入口へとセットされたものは――紛れもなく、フィラーハ様の"神託"のノート、そのものだった。「私がコレをどこでどう手に入れようと、別にどうでもいいことじゃあないですか……」 京子は微笑んだ。 ジジジジジジジジジジジ……。「……澤社長や岩渕さんから処分を命じられたわけではないのでしょうけど……ヒカルさんにはもう、コレ、不要、なんですよね?」「――ひっ」 小さい悲鳴を上げてヒカルは後ずさった。その瞬間、京子の冷たい手がヒカルの華奢な手首を掴んだ。「《F》はもう終わったんですよね? 滅びたのですよね? フィラーハ、とかいう――"神様もどき"は、死んでしまったんですよね? なら、最後の介錯は、"聖女"である楢本ヒカルさん……あなたにしてもらった方が幸せじゃなくて?」 ジジジジジジジジジジジ……。 ジジジジジジジジジジジ……。 ジジジジジジジジジジジ……。「そんな……いやっ……いやです……許して……京子、様……」 もはや悲鳴は出なかった。ただ、脚が震え、瞳から涙がポロポロと流れただけだった。 ジジジジジジジジジジジ……。「他の"神託"は既に燃やして灰にしました。ふふふ……お庭で"焼き芋"をしたなんて、子供の頃以来でとっても楽しかったですよ……」 ジジジジジジジジジジジ……。「……ほら、後は、ノートを少しだけ機械の奥に押し込むだけですよ? それで、《F》の消滅を認めます。それだけで、私は《F》のすべてを許します、よ?」 京子がニッコリと微笑み、冷たく、湿った手でヒカルの手首をシュレッダーに近づける。信じられないほどの強い力で腕が引かれ、"神託"の端に掌が触れる。 ジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジ……。 もう、逃れる方法はなかった……。 あまりの恐怖に、ヒカルは息をするのも忘れた。 ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ……。 かつて、私に、『伏見宮京子を殺せ』 と命じた声が――『畜生っ! 貴様、絶対に殺してやるっ! 絶対にっ殺すっ!』 と怨嗟を誓い――『助けて……お願いだぁぁ……死にたくないぃ、死にたくないぃ……』 と慈悲を媚び――『やめてっ! やめてーっ! あああああああーっ……』 と凄絶な悲鳴を上げ――『ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ……』 と、断末魔の悲鳴を上げるのを――ヒカルは聞いた、聞き続けた……。 もはやヒカルは何も思わなかった。何も考えなかった。ただ、フィラーハ様という存在は、死んだのではなく――伏見宮京子に殺された、ということだけはわかった。 やがて……"神託"は紙1枚残らず切り刻まれ、やがて、糞尿の付いたオムツや髪の毛や、生ゴミやお菓子の食べカスや、使用済みの検尿カップやボロボロになった雑巾や、破れた手袋や靴下や下着と一緒になって1枚数円の廉価なポリ袋に放り込まれ、ヒカルが"聖女"であった証も、かつて《F》の"神"であった歴史すらも――ゴミのように廃棄された。 そして……"ただの人"となったヒカルの前から、永遠に消滅した……。「宗教戦争における敗北は、"神の死"あるのみ……あぁ、おかげ様でスッキリしました。……では、ヒカルさん、ごきげんよう」 呆然自失するヒカルの前を通り過ぎ、京子は高らかに笑いながら、岩渕の病室へ向かって歩きはじめた……。――――― 澤光太郎、岩渕誠、宮間有希、鮫島恭平に引き続き、宇津木聖一は"川澄奈央人"の素性を調べるため、個人的に交友のあった探偵社に調査を依頼した。依頼を引き受けた調査員の男は、その多額の報酬に驚いたものの、喜んで調査を開始した。 数日後のことだった。宇津木がいつものように事務所で仕事をこなしていると、調査を依頼した探偵社から小包が届いた。さらに探偵社から手紙と思われる封筒が一冊届いていた。小包と一緒に送ればいいだけのこと、にも関わらず、である。 不審に思いつつも、宇津木は小包を開けた。 瞬間、宇津木は震えあがった。 小包に入っていたのは、調査を依頼した探偵社の社長の"名刺を握った手首"と、実際に調査を行っていた若手社員の"名刺を握った手首"だったのだ。生身の、人間の、手首――宇津木はすぐに探偵社に電話を入れたが、返答は要領を得なかった。『社長と彼とは、ここ数日、連絡が一切取れない』『あなたはどこの誰ですか?』"川澄奈央人"のことを話したのはふたりだけ、そのふたりが行方不明となり、そのふたりのものらしき手首が宇津木の目の前に届けられたこと――。わけがわからなかった。その"川澄"がここまでの危険人物だとは想像だにしていなかった。 宇津木は恐怖にうち震えながら、届けられたもうひとつの封筒に手を伸ばした。封筒の中身は便箋が1枚だけ入っていた。『電話を待つ』 それだけだった。手紙の中身は短い文章と、携帯電話と思われる数字の列だけだった。 無意識に宇津木は顔を強ばらせた。 無意識。そう。無意識に、宇津木は自身の防衛本能が「電話しなければ死ぬ」と信号を発したのを感じた。このメッセージを無視すれば、自分は死ぬ――。必ず、死ぬ。必ず、殺される。 しばらくためらったあとで、宇津木はデスクの上の携帯電話に手を伸ばした。指が猛烈に震えていた。「……あなたは、誰ですか?」 小さな電話を握り締めて言う。 数秒の沈黙があった。それから……耳に無機質で機械的な声が届いた。『……なぜ、"川澄奈央人"を調べる?』 相手は、何らかの機械で声質を変えているらしかった。「なぜって……あなたは"川澄奈央人"本人ではないのですか?」 痛いほど強く電話を握り締めて言う。心臓が痛いくらいに高鳴っている。 電話の向こうの相手は、少しだけ困ったような声を出した。『……"川澄奈央人"は死んでいる……私が殺した……20年以上の、昔だ……』 その声には抑揚がなく、ひどく聞き取りにくかった。「殺した? 私の知る川澄とは……別人、ということですか?」 宇津木が聞き、電話の相手が『川澄家……3流ジャーナリストのくせに……もう……あの赤子が……奈央人……殺した……一家全員……始末したはずなのに……』「……川澄奈央人さんなら、生きていますよ?」 電話の相手が、『それはありえない』と応えた。「それじゃあ……どういう……」『そうか……戸籍売買か……そうかそうか……子供の名前だけでも残したか……』「わけがわからないっ! 私は関係ないぞっ!」 ついに宇津木は叫び声を上げ、自分でも驚くぐらいに体を震わせた。『……"川澄"は偽名だ……カネで買った戸籍だ……うかつだった……まさか、"その後"のことで私の平穏が乱されるとは……杞憂で……良かったな? 宇津木……』 電話の向こうで相手が笑った。確かに、笑った。「……私を、どうする気だ?」『別に……名だけを名乗るだけなら問題ない……ただ――私のことを知ろうとするな……知ろうとするのなら……殺す……お前も、娘も……誰ひとり残さず……死んでもらう』 相手はどことなく、安堵した口調だった。「……わ、わかった」 助かったと思いながらも、宇津木の声は震えたままだった。『"川澄奈央人"に伝えろ……"空中庭園"は私のモノだ……庭園も、財宝も、何もかも、すべて……お前も、川澄ハヤト……川澄ナナ……川澄ハルカ……そして、川澄ナオト、アイツら家族のように……"庭園の肥やし"になりたくはないだろう? とな』 電話が切れた。―――――「……以上だ。だから――私は計画を極端に早めた。ここには……この名古屋の地には、もう1秒だって居たくはない……いや、居られないのだ」 宇津木の報告を聞き終わり、呆然と宙を見つめる。……なるほどね。「……川澄様も、いや――偽名でしたね……できるなら、あなたたち《D》とは金輪際、関わり合いたくはない……私も、娘を守りたいのだ……」 川澄の反応を待たず、宇津木は松葉杖を脇に回し、振り向かずに歩き出した。呼び止める気は起きなかった。聞きたいこと、確認したいことは聞き終えた。 そう。川澄は知りたかった、ただそれだけのことだった。 宇津木がカネにモノを言わせて"僕"を調査できる限界――。 僕個人の情報の漏洩具合――。 "川澄奈央人"の戸籍(父親からは浮浪者から買い取ったと聞いていた)のルーツ。 まさか、僕の父親に戸籍を売った後、一家皆殺しにされていたとはね……。 おそらく――川澄の父親は自分以外の家族が殺害された後、しばらくは名古屋の浮浪者として身を隠すが発見され――何らかの情報の秘匿を口実に始末されたってところか……怖いねえ……あー怖い怖い。 怖かった。 怖かったし、恐ろしかった。何より、相手の正体が何も掴めず、性別すらも不明だった。 でも……。 でも……。《空中庭園》と、その財宝か……イイねえ。最高にワクワクするよ……あはは……。 興味深かった。 そして何より、カネの匂いがした。 莫大で――数えるのもバカバカしくなるくらいのカネの匂い……。 かぐわしく、芳醇で、妖艶で、悪魔的な魅力のある香り……。 「これは、ぜひともご相伴にあずかりたいですねえ……当然、アンタもそう思うだろ?」 興奮に顔を歪めながら、川澄は岩渕の待つ病室へ歩く。「……僕たち、友達でしょ? なら、手伝ってもらいましょうか……岩渕さん……」 川澄は舌で唇をなめ、静かに微笑む。 どこからか吹く秋風が、川澄のスーツと髪を微かに揺らす……。 了