SEESのショートショート 17 『異世界からの望郷』
ss一覧 短編01 短編02 短編03 短編04 短編05 《D》については短編の02と03を参照。番外としてはこちらから――――― 帰りたい。 異世界に召喚されて1年が経った。 召喚? そう。 僕はとある国の王様に、「魔族を滅ぼして欲しい」という願いを込めた魔法によって、現代の日本から呼び出されたひとりの学生だ。 魔法? そう。 この世界には"魔法"なる現象が実在し、地球で言う化学反応のような事象が現実として証明される。 魔族? そう。 この世界には人間とは違う知的生命体が存在し、互いに憎しみ合い、終わりのない戦争を繰り返していた。 帰りたい。 僕に与えられた"使命"とは、魔族を殲滅し、人間を救い、この世界に安定と平和をもたらす……みたいなことだ。聞くと、魔族の姿は人間とほぼ同じであり、その違いを区別する材料はひとつだけ、らしい。 材料? それを聞いて、僕は驚いた。 でも、それは……後述することにしよう……。 帰りたい。 ああ、帰りたい。 僕は異世界で寝て、起きて、訓練し、レベルを上げ、装備を整え……魔法の腕を上げ、訓練し、勉強し、剣を握り、盾を構え、レベルを上げ、勉強し、わけのわからないメシを食らい、徘徊するモンスターを倒し、レベルを上げ、寝て、手から炎や氷や雷や水を発生させ、盗賊を倒し、幽霊を浄化し、レベルを上げ、レベルを上げ、レベルを上げ……レベルを上げ続けた……。 帰りたい。 そこら辺に転がるラノベの主人公と、僕は、違う。違うのだ。 僕には愛すべき家族もいるし、恋人もいる。トヨタに内定を貰い、大学も卒業が近く、頼れる友人も多い。 なのに、どうして? どうして……僕が……こんなメに……。 お世辞にも美しい、とは言えない国の王女は、「魔族討伐の暁には、莫大な褒美と地位を約束し、望むのであれば私を妃とすることを許します」と頬を赤らめて言った。 帰りたい。 ああ、帰りたい。 僕は望郷する。――――― ふざけるな、とは言えなかった。異世界のルールなど知らないし、仮に僕が人間同士の争いが原因で、地球に帰還できなくなるのが怖かった。だからこそ、僕は王の命令を忠実に遂行した。従うしかなかった。でも、従いたくはなかった……。 歯をギリギリと噛み、拳を強く握り締める。 「地球に帰してください」 やがて僕は王に嘆願し、魔族の討伐を誓った。 結果、王は約束してくれた。というより、最初に受けた召喚魔法のルールにより、"魔族"の国の滅亡が達成されない限り、僕は地球に帰れない仕様らしい。 つまりは、まぁ、呪いだ。 帰りたい。 ああ、帰りたい。 飼っていた猫の顔を思い浮かべる。――――― 魔族を殺した。 なんてことはなかった。 彼らは僕より何倍も脆弱で、魔力も弱く、知恵も足りてないように思えた。 魔族を殺し続けた。 体が勝手に動いたような感覚すら、あった。 良心は痛まなかった。何でも、"そういう魔法"が存在し、精神安定剤のような効果もあるらしかった。ふと我に返ると、大地には無数の屍が横たわり、河川は血で染まっていた。 国の人間は歓喜し、僕も歓喜した。これで故郷に戻れる一歩が踏みだせたのだから。「魔族がやっかいな理由は、その数と繁殖力ですから」 と説明を受けたが、正直、深くは考えていなかった。 多少の違和感はあった。僕が観察した限りでは、魔族は一対の夫婦を形成し、生まれてくる子供は1匹~3・4匹程度の繁殖力しか持たないようにも見えた。……まぁ、どうでもいいことだけど。 帰りたい。 ああ、帰りたい。 恋人の顔を思い浮かべた。 早く帰り、彼女を抱き締めたい。 そう、思った。 そう想い続け……僕は剣を握り、炎の魔法を魔族に向けて放った。何度も、何度も……。――――― ついに、僕は魔族の王を倒した。その首を刎ね、体を燃やし、一族郎党を灰にした。 異世界の人々は歓喜した。嬉々とした顔で魔族の土地を蹂躙し、鉱山や畑の資源を奪い、領土を王族たちで区分けし、生き残った魔族たちを奴隷として扱いはじめた。その光景を見た時、僕が感じたことはひとつだけ……正直、本当に正直に、こう思った。 どうでもいい、と。 僕が思うことはひとつだけ。ひとつだけ思うことがあるとすれは、ひとつだけ。 そう。 帰りたい。それだけだ。 こんな腐った世界になど興味はなかった。 異世界からの生還こそ、僕の欲望のすべてだった。 優しげな父と母の顔を思い出す……けれど、それだけだった。2人を抱き締めて帰還を叫び、喜びに涙を流す光景が……どうしても思い浮かばなかった。―――――「あなたの未来が幸福なものでありますように」 王が言う。「勇者様、私は生涯、あなた様をお慕い申し上げます……」 王女が言う。 ……早く、僕を帰せ。 日本語で、僕は言う。『お前らも、滅びてしまえばいい』 僕はワケのわからない光に包まれ、全身が溶けるようにゆっくりと消えかけ、異世界で培った能力や体力や魔力が薄れゆくのを感じた。……ああ、これでやっと帰れる。「ありがとう、勇者様っ!」 人々の大歓声を脳の奥に刻みながら、僕は魔法陣の光の中に消えた……。 心残りなどない、はじめから、無い。 善意を施した、などとも思わない。 思わない……思わない……思わない……。 特に語ることもなく、僕の"異世界生活"は終わった。 可愛らしいネコミミ少女がいるわけでもなく、ウマいメシが無限に湧いて出ることもなく、美女たちとハーレムを作るワケでもなく、本当に――本当に、つまらない世界だった。 心から、また――思う。 帰りたい。 望郷の念だけが、僕の生きがいで、僕のすべてで、僕の夢と希望だった……。 さようなら異世界。 帰ったら、ラノベの小説家のSMSに、ひたすらアンチコメントを送ることにする。 さようなら……永遠に、さようなら……。――――― ――波の音が聞こえる。 どこかの海岸らしい。 まどろみの中、ゆっくりと覚醒する。 目を開ける。曇り空だ。サラサラとした砂の感触を手に感じる。 ――そう。僕はどこかの砂浜に仰向けで寝ていた。 ここは、地球……日本、なのか? 自問するが、答えはない。 しかし、直感はしていた。 ここは地球で、どこかの国の、どこかの海岸で、僕はただの学生で、"異世界の勇者"なんいう意味不明の職業ではなくて、魔法も剣も一切使えない、ただの人間であるということだけは――直感で理解していた。理解した気でいた。 しかし――……。「Who are you? No problem?」 誰かに声を掛けられた瞬間、 僕は立ち上がり、 砂浜に落ちていたサンゴか石か、なんだかよくわからない固い塊を手に取って、 両手に高々と持ち上げ、渾身の力で――その誰かの顔面めがけ、降り落とした……。「Oh, my God!!!」 ゴンッ、と鈍い音がし、声を掛けてくれた"誰か"の顔面がグシャグシャに歪み、鼻と口から盛大に血飛沫が飛ぶのを、僕は見た。聞いた。 なぜ? なぜ、僕は、この人を襲った? なぜ? わからない……。 考えながらも、僕はこの人の顔面を踏みつけ、喉や頭を石で殴り続けた。 なぜ? ……やがて、その人の体はピクピクと痙攣を始め、 ……やがて、呼吸も止まり、完全に動かなくなった。 遠くで人々の悲鳴が聞こえる……。「Help me!! somebody!!」「Murderer!!!」「Call the police!!!」 英語?……ここは地球? でも、なぜ? なぜ? と思いながらも、僕は石を握り締め、悲鳴を上げる人々の群れに走った。 もちろん、その人々を襲い、殺すためだ。 なぜ? なぜ、"地球に帰還したはずの僕が"、"異世界での魔族である、有色人種"を攻撃しなければならないのか? 思い出す。 そう。異世界での"魔族と人間との違い"とは、"肌の色"のみであるということ。 僕は思い出していた。 "肌の色の違う者を滅ぼすべく召喚された勇者" それが僕であるのなら……? "魔族"を滅ぼしていたのは、僕の意思ではなかった……? それが、召喚魔法の使用理由で、条件で……呪い、であるのならば? 最悪だ……最悪だ……。 思いながら、僕はまた誰かの首を締める。 涙を流しながら、砂浜に落ちていた鉄のパイプを拾う……。 嘘だ……こんなハズじゃあ……。 思いながら、僕は泣き叫ぶ子供の頭に鉄のパイプを降り落とす。 ありえない……ありえない……。 ガタガタと奥歯が震え、鮮血に濡れた拳がプルプルと震えた。「……あのクソ王と、クソ王女……これが……帰還するための……呪い、なのか?」 考えがまとまらず、推測と憶測と殺意と悪意が心の中で渦巻いた。 どうすれば、この呪いが解ける? まさか……。 世界中のほとんどの国を滅ぼし尽くすまで? 嘘、だろ……? 帰りたい。 いや、帰れる……のか? 脳内で不思議な音と声がした。 かつて――異世界でいつも聞いていたような、そんな、不可思議な声と"音楽"が脳内にこだまする……。 高らかに鳴り響くラッパの音、そして――『レベルが上がりました』 了 本日のオススメ!!! また……岸田教団&THE明星ロケッツす……。 岸田教団&THE明星ロケッツ……新曲アルバムと名盤たち……ちなみにseesはすべて持っています(予約も完了す)。 雑記 お疲れ様です。seesです。 クソ駄文ショート! ヤマなし。 最近のとある米国のニュースと、異世界モノアニメ見て、 2時間の急ピッチで作っただけ。 あかんな、40点。 おまけ作る気にもならなかった。 seesに関しての情報はもっぱらTwitterを利用させてもらってますので、そちらでの フォローもよろしくです。リプくれると嬉しいっすね。もちろんブログ内容での誹謗中傷、 辛辣なコメントも大大大歓迎で~す。リクエスト相談、ss無償提供、小説制作の雑談、いつ でも何でも気軽に話しかけてくださいっス~。 でわでわ、ご意見ご感想、コメント、待ってま~す。ブログでのコメントは必ず返信いたし ます。何かご質問があれば、ぜひぜひ。ご拝読、ありがとうございました。 seesより、愛を込めて💓こちらは今話がオモロければ…ぽちっと、気軽に、頼みますっ!!……できれば感想も……。人気ブログランキング