元・経営コンサルタントの投資日記

2007/12/16(日)16:23

長期安定経営とは

コーポレートガバナンス(46)

12/11 一部修正および追加いたします(追加は緑字)。 日曜日の日経新聞ですが、経済産業省は株主が1株で複数の議決権を行使できる「複数議決権株式」の上場を容認するよう東京証券取引所に求める。創業者ら経営陣が複数議決権株式を保有し株主総会の議決権の大半を握ることで、長期的視野から安定的経営をできるようにする狙い。経営陣以外の株主の意向にも配慮するため、複数議決権株式の上場ルール策定も提言する。 同省の「企業価値研究会」(神田秀樹・東大大学院教授)が近く同株式の発行解禁を柱とする提言をまとめる。議決権がない代わりに株主に配当を優先して支払う「無議決権株式」なども含め、1株につき1議決権の普通株と異なる「種類株」の発行と上場を原則認めるよう求める。という記事がありました。このことについてはCFOのための読みほぐしニュース などのブロガーさんたちがすでに取り上げていらっしゃいますが、おおせのとおり企業価値研究会を通して言わずとも、直接東証に言えばいいのに・・・。確かにフランス等欧州の一部や米国の一定条件の企業(創業時や新聞社等)は複数議決権株式を認めており、その導入比率も高い。私がブログで取り上げた敵対的買収仕掛け人のカールスバーグ(カールスバーグ、ハイネケンと連合で敵対的買収に!) も実は複数議決権株を保有している。カールスバーグ(デンマーク)の場合は典型的で、A種類株式とB種類株式があり、A種類株式は1単元株式あたりの議決権が10あり、B種類株式は1単元株あたり議決権が1しかない。つまり、A株はB株と同じ株数でも議決権数が10倍違う点である。同社はA株式が33,699,252株とB株式が42,579,151株からなる。両方ともコペンハーゲン証券取引所に上場しており、B株は議決権が制限されるが、配当優先権がある。A株のうちおよそ86%以上がカールスバーグ財団が保有しているため、経営権はきわめて安定しているといえる。 そのくせ、自らは敵対的買収を提案している(注:カールスバーグ自身は「友好的に勧めたい」といっているが、当の相手側は完全に拒否している状況がもう2ヶ月続いている)。まあ、欧州などは持ち合い株式という慣習がないこと、カールスバーグ他古くは王立で始まった名門企業が多い点もあり、政策的に守りたい企業には導入がされているケースが多い。したがって、日本に種類株式を導入すること事態はグローバルに見て、形式上は正直OKだと思う。形式上は。しかし既述のとおり、日本には事実上の譲渡制限株式ともいえる持合制度が深く根付いている。これが根本的にコーポレートガバナンスを弱いものにしているケースが多い。したがって、さらに種類株式を導入するのか、といいたくなる。また、東証上場制度整備プログラムで種類株式導入検討がすでに先手が打たれていた。もっとも4月当初はIPO銘柄に限っていたが・・・。伊藤園の種類株式(配当優先株)が30%前後の下落を示しているとおり、こういった権利の制限などを株式に課すと、普通は嫌がられるものだ。したがって株価が下がる。これと、「長期的視野から安定的経営」 の関連が良くわかりません。ポイント。急速なグローバル化、外部環境の変化に機敏に対応するのには「安定的」な財務基盤や経営基盤は必要だと思います。経営権が安定する必要性はむしろダイエーやそごうまたはこれらに類似した実権を握る長老経営者など弊害がある例も多く報告されている。また、誰が社長かわからないローテーション制の企業も多い。GE、IBM、P&G、ネスレ、日本ではホンダなど世界的大企業は長期安定的に発展してきた企業と一応言えるでしょう。しかし、GEでもジャック・ウエルチの初期には「中性子爆弾」と陰口を叩かれるほど徹底したリストラをし、IBMでもパソコン企業の売却などを実施している。ホンダもF1から一時期撤退した。みずからこういった努力が出来なかった企業はCEOがクビになる(Citiなど)。経営権はいつでも緊張と隣りあわせだ。少なくとも従業員は「人事考課」といつも隣り合わせではないか。この 「人事考課の効果」 をよくお知りのCEOさん、緊張を自ら放棄するのでしょうか?ここでいう「長期的視野から安定的経営」なるものはどういった姿を理想とするのだろう??? この急速な変化に機敏に対応できる経営能力を備えるためには、個人的には雑多な力を結集させることだと思う。そもそも国家が、国家を長期安定的に運営していくことを本気で考えているのだろうか?目先の財界人のロビー活動に押されていないだろうか? 長期安定的に国家運営を考えるのであれば、国民の重要な資産運用の場の一つである株式市場へのネガティブな介入は止めるべきだ。ただでさえ、年金運用がダメだといわれているのに、高齢化社会の「投資国家」として生計を助ける構想と矛盾する(確か通商白書で投資立国発言したのはMETIさんでしょ?)。株式市場は健全に運営し、国家国民(もちろん外国人も大歓迎)のための健全な資産運用の場という視点で取扱ってほしい。さて、「株式会社東京証券取引所グループ」 さんが、証券取引の停滞を招きかねないこういった政策をやすやすと受け入れるのでしょうか? みものです。 株主はまだ金融庁でしたか? 東証自身が株主価値の極大化に向けてどういった行動をとるのかも見ものです。

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