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カテゴリ:コーポレートガバナンス
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日経新聞他各紙で、製紙会社の古紙配合率偽装問題が取り上げられました。 日本製紙グループが「年賀再生紙はがき」に対する古紙配合率が偽装であったことが発覚し、そのことを発表したのが始まりでしたが、年賀はがきに限らず、コピー用紙やノートも含めて古紙配合率を偽装していたことが明らかになりました。そして再生紙のおおよそ6割がその配合率に偽装があったとの調査結果を発表しました。 そして年賀はがきについては日本製紙の中村社長が工場長時代の96年ごろからおこなわれていたようで、引責辞任を発表されました。 さらに年賀はがきにおいては他の納入者である王子、大王、北越、三菱各製紙会社も同様に配合率を偽装していたとの内容であり、「赤信号、みんなでわたれば怖くない」の模様を呈しています。 恥ずかしながら、この話題はすでに1月8日に発表されています。TBSと読売から、日本郵政が日本製紙から、再生紙年賀はがきの古紙配合率が基準の40%を大きく未達成の5%以下であり、引き下げを一方的に報告してきたことから明らかになったという。 これは、「グリーン購入法」という環境配慮を義務付けた対象商品に関する規定に反することと、これだけ騒がれている環境問題に対するネガティブインパクトとして、経済産業省や環境省も問題視していた。 違反理由として、古紙配合率を多くすると、紙の色の白さがなくなるなり、はがきに刷り込まれている郵便番号やバーコード等の読み取りが難しくなるため、 品質配慮 > 環境配慮 の結果だという。 業界の雄、王子製紙も「再生紙の白さやチリの少なさを競った結果であり、業界内ではみんな知っていたと思う」とコメントしており、業界の秩序、であったという感がします。 環境省は公取委に通報し、不当表示に該当するかの調査依頼をし、日本郵政は損害賠償を考えている模様です。 王子製紙も年賀はがき以外での配合偽装が「あった」(過去完了形)といっており、さらに日本製紙側は「コンプライアンスより品質を優先した」という発言は問題が根深い印象を与えます。これで株主責任を果たしていたというのでしょうか? 結局、富士ゼロックスをはじめ古紙配合製品の取引停止処分を食らってしまい、大きく信用を下げる結果となりました。 そのグリーン購入法が、「ザル法」、つまり強制力のない法律であったことにも起因しますが、環境配慮のための紳士協定の感もあり残念であるとしか言いようがないですね。 古紙配合率を引き下げようかと議論していた矢先らしいです。 仮に、年賀はがきだけがこういった「被害」にあっていたのなら、業界横並びで偽装していたというのはなんだか腑に落ちません。
うーん呉越同舟というか、例の買収合戦を思い出してしまいますね。当時は王子製紙のTOBに対する買収提案に「業界秩序維持のため」というわけのわからない大義名分が通ってしまい、TOBが失敗に追いやられました。そのときの思わぬ「業界秩序維持」の急先鋒が、関が原の小早川軍なみのインパクトのあった日本製紙の北越製紙に対する謎の株式購入行為でした。その後王子の社長も業界団体の会長を「業界秩序を乱した」という理由で辞任されています。 消費者や株主の良識よりも、優先される業界秩序?(業界の人は古紙配合率偽装のことを皆知っているのでしょ、王子さん?) その後各社の株価はぱっとせず、「品質」の改善に取り組むまでもなく、ぬるま湯経営が継続されていた、といわれても仕方ない。こういう事件でマスコミ各社の社会部の記者が張り付くと、いろいろな事実が明るみに出てきそうですね。 何のためのコンプライアンス経営か考えましょう。上記株価推移図では、「業界秩序」や「品質優先」という独善的な発想が何をもたらしているかを説明しています。 3893:日本製紙(赤)、3865:北越製紙(青)、3861:王子製紙(緑)、N225:日経平均(黒)の推移です。 皆N225をアンダーパフォームしており、中でも日本製紙は06/5月から-40%近い下落! 例の買収合戦(06/8月)からでも-20%以上の下落(この間N225は-10%程度でしょうか。すなわち、06/05以降、90週間後の08/1/17現在、日経平均との差が一番大きいのが日本製紙で、その差もやはり-20%となっています(注:ただし皮肉にも北越製紙が一番値幅の狭いことも事実ですが・・・)。 本当はJパワーとTCIの続きをエントリーしようと考えていましたが、次回にいたします。
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