2008/11/23(日)13:47
シティグループの再編と金融業界の混乱
「現時点での」ニューヨーク市場、米国経済不安分子4兄弟(と私が勝手に命名している)はAIGシティグループゼネラルモーターズクライスラー(現在はサーベラス傘下で非上場ですが) だと以前言いました。AIGは中国SWFの資本注入が言われているものの、まだ足りないイメージがあります。シティは全世界で52千人の人員削減とCEOパンディット氏自身が自社株を75万株購入した(17日当時の時価@$5として、375万ドル、4億円近い!)り、信頼回復を訴えているが、株価は一時3ドル台(ゼネラルモーターズ並)まで下落した。 私は日興コーディアルに縁があって口座を持っているのだが、証券アナリストのスコープ企業が今月に入って突然激減。注目していたJASDAQ株など「担当者の退社のため調査対象から削除します」というコメントが目立っている。おかげで情報源が減ってしまった。と同時にもし、日興がシティ以外に買収されていたら、彼らは違った運命をたどったであろうことに同情いたします。少なくともプリンス氏がCEOを辞任した時(もう1年前ですが)、当時シティの取締役会議長を務めた元財務長官ロバートルービンは「雇用に不安がない」とコメントしていたが・・・)。 ただ、このシティの処理をつけろ、という催促相場は危険極まりない。3月のベアースターンズ、7月のフレディマック、9月のリーマン、メリル、そして11月のシティと次々と狙い撃ちになっている。12月にはまた、ゴールドマンサックスとモルガンスタンレーの決算発表(今度は監査法人の監査付き)もあるだろうし、1月以降はシティ、JPモルガン、バンカメなどの商業銀行決算とクリスマス商戦の結果が出ているころで、ネガティブな予想データに事欠かないことは従来から分かっているはずだ(今の株価がこういった要素を織り込んでいるのか、については意見が分かれるだろうが、個人的にはシティの株価推移をみると懐疑的だ)。 欧州でもUBSやバークレイズ、RBSと言ったところの不安が消えたわけでもない。「これで終わり」という底が見えない。 ポールソンさんは早急に「決算で資本欠損がわかれば追加の資本注入を実行する」と宣言しないと潰れなくともよい金融機関も潰されそうだ(最も株価がゼロになっても資金繰りが潤沢であればつぶれませんが、投資家の信用がゼロであるという状況で信用第一で信用創造が収益源の金融機関としては存在感を否定されているようなもの)。 ついでにシティの再編について。いま問題になっているのは結局「Too Big To Fail」(大きすぎてつぶせない)なのに、さらに灰色のシティに灰色のゴールドマンサックスやモルガンスタンレーをくっつけても灰色の2乗になるだけで問題解決にならない。相手側も、いくら問題資産があるのかわからない企業を買収することは嫌だろう。旧ソロモンスミスバーニー部門の分離も、そこが諸悪の根源と考えられているので、買い手がつくのかという問題もある。八方塞がりの状態だ。 仮にシティの問題が証券部門だけならそこだけを政府が買い取って、旧シティバンク部門は商業銀行主体として再生させる(追加公的資金の注入)、というのがいいのだろう。今更ゴールドマンやモルガンスタンレーと合併させるというのは合併後の運営方針を見定めてから行うのならわかるが、壊れたビジネスモデルに回帰しても仕方がない。新しい銀証合体のビジネスモデルをまず見つける方がいいのでは? 総合金融の時代は今はやめた方が賢明だ。シティはその実験に失敗した。シティバンクとトラベラーズグループが合併し、商業銀行(シティバンク)、証券会社(ソロモンスミスバーニー)、生命保険(トラベラーズグループ)が一つ傘の下にぶら下がっていたが、一早く保険部門を売却し、今また証券部門が傷ついている。 リスクコントロールが一元化できない銀証合併はUBSでも失敗している(フランス辺りは比較的ましだが、ソシエテジェネラルのトレーダー事件の例もある)。商業銀行のグローバル化はまだ新興諸国だと市場は残っている。日系企業の進出お手伝い以外のグローバル化が邦銀の生きるカギだろう。銀行預金した人が、ハイリスクなものを望んでいるとは思わない。今の米国の議論だと、銀行は証券会社の運用を担保するためのお金集め、のビークルのように聞こえる。預金者だと市場ほどカネを一気に引き上げないからだろうが、ではその収益性と安全性をどうやって担保するのか。米国のことだからそのうち答えが出てくるだろうが、本質的な答えになるのかは懐疑的です。