2009/02/04(水)02:27
政府・日銀による銀行保有株の買取
[東京 3日 ロイター] 日銀は3日開催の政策委員会・通常会合で、銀行保有株の買い取りを約4年半ぶりに再開することを決めた。買い取り規模は1兆円。株価下落により、金融機関の株式保有リスクが高まっていることから、買い取りを再開することで、金融システムの安定確保に全力を挙げる。月内の実施を目指す。 白川方明総裁は決定後の記者会見で、買い取り再開について「金融システム安定のための一種の安全弁の役割を果たすものだ」と述べ、あくまで金融システムの安定に力点を置いた措置であることを強調した。 またまた持ち合い株式の評価損問題が「金融システムの安定化」の阻害要因となってしまいました。持ち合い株式については当ブログでは一貫してネガティブな意見を述べています。最も「政策保有で株を買って何が悪い」という意見もあろうかと思いますが、 1:資金効率が悪い(お金は回転せずにべったり寝てしまう割りに通常、配当利回りは微々たるものである。そのくせ、キャピタルゲインはめったに実現せず、評価損だけ目立ってしまう)。銀行資金運用の3原則、収益性、安全性、効率性・流動性の全てに反する。こういった効率の悪さは結局株主価値を毀損する。 2:万一の時にはそれが足かせとなって、資金供給が満足に出来ない状況に陥ってしまうため、銀行としての公共性という使命が果たせない。(不良債権の場合は、努力して融資した結果であるが、株式保有は預金者や株主は期待していないと思いますが)。3:一方で利益相反疑惑を免れない。(特に現在のような景気悪化局面においては)取引先に対する影響力は株主のそれではなく、債権者の目線で保全確保だけが関心ごとになってしまう。債権者目線に徹するならともかく。4:取引先にとって見れば、安定株主のつもりだろうが、それは自らの経営が安定している限りにおいて「サイレントパートナー」であるが、自らの経営が不安定になると、これほど「物言う株主」は他にいない。なおかつ、一般株主では知りえない情報を保有してしまっている。したがって、実は取引先の期待に応えていないケースがある。取引先もあまりそこまでわかっていないはず。サイレントのつもりが、「ラウジー」になっていて、意味がない。 これは前回の金融危機でも議論があったのに、また同じことを繰り返してしまった。電機メーカーが浮き沈みの悪い半導体次第の業績構造であるのに対し、銀行も不動産と株次第という全く成長の跡がない(不動産については今回は金融庁のご指導もあり07年後半に融資を絞り出したので経験が生きていると思うが)。事業会社同士の持ち合いもあるが、銀行の持合のインパクトが大きいのでここから襟を正すような仕組みを作ってほしい。なぜ、一株式会社の勝手な政策判断ミスを国家の資金で尻拭いするのか(またそういったことに配慮しなければならないのか)原点に立って考えてほしいなあ。この期に及んで手段を選べないんだけど、3度目の正直はないように議論してほしいところ。しかし、軒並み減益、赤字決算で、上場企業の格付けもダウングレードが必然なのでトリプルBマイナスをクリアできない企業も続出しそう。したがって格付け機関(特にR&IとかJCR等の和製機関は米系と比較すると「優しい」嫌いがある)の判断も問われそう(買い取ってもらうためにはトリプルBが必要)。