2010/06/20(日)10:48
「アメリカ株長期投資入門」を読んで 【書評】
アマゾンで予約していた「アメリカ株長期投資入門」(中丸友一郎、ダイヤモンド社)が土曜日に到着。たぶん1時間強で読破。私にしては速読だった。なぜなら、内容はほとんどすでに知っていること、「基本的に」同じ意見であることが大半だった。ただし、表現がやや強気すぎて、せっかくのよい提案に胡散臭さが交じってしまわないかが気になった。それと個人的には、投資商品、投資手法等への解説ももっとつけてほしかった。 なぜなら、DRIP(配当金再投資)等で配当を大事にして、しっかり投資を積み重ねる人にも、かつてのマイクロソフト、デルコンピュータ、インテルや今のグーグルなど最先端企業の飛ぶ鳥を落とすような株価の上昇を期待する人にも、ADRで世界各国の企業に投資する人にも、オプション、スワップ、優先株投資やデイトレーダーにもいろんな投資ニーズをきちんと提供できる奥深い制度や商品とそれに見合った株主還元がしっかしできる投資対象が澤山あるのが米国株式市場の真骨頂だと思うからです。 主な内容アメリカ株式市場は長期的に右肩上がりで、今後もそれが見込まれる筆者のシミュレーションでは2022年でダウ平均4万ドルを突破する時価総額が巨大で、企業も各分野ではワールドクラスの事業競争力。業績も右肩上がりリスクが他国の相場と比べて比較的小さい為替は関係ない。(インフレ率を排除した)実質リターンだ。実質リターンは7%ありそれでもドル円レートの購買力平価等を勘案したフェアバリューは108円オバマ政権の経済政策は理にかなっているから、アメリカ経済は安心 「米国金融帝国の崩壊」、「ドルは基軸通貨失格」、「行き過ぎた市場原理主義」、「アメリカ資本主義の崩壊」、と「ザマアミロ米国」系を主張する方が手に取ると投げつけたくなるような内容がてんこ盛りです。 この著者は日本輸出入銀行、世界銀行、JPモルガン、ロイター等世界の相当たるところで長年エコノミストとして活躍されたそうで、毛並みは1流なのですが、時折、胡散臭い表現(モンテカルロシミュレーションでダウ平均が4万ドルになるというのはいかにも)が目立って(たぶん、紙面の都合上専門的な解説を抜いて、結論だけを書いたせいかもしれない)、「いかがわしい投資本」の類にされてしまう危険性があり、残念。人口増加率等の前提条件が間違っていないか? 私はダウ平均が2020年ごろには2万~2.5万ドルドルに達している(2万ドルで年平均約7%の株価リターンですよね)とは思うが、4万ドルはキツイと思う。ドル円相場について、ゆくゆくは100円前後で考えている。アメリカの長期的な人口増加率は年率約1%でインフレ率が3%じゃなかったか(筆者はそれぞれ2%と説明。カンボジアの人口増加率でも1.7%ですよ)?これは将来のアメリカ経済の前提条件に大きな影響を与えますよ。一株利益の重要性をもう少し説明してほしかった(日本人は企業の営業利益とか経常利益だけに目が行きがち)。EPSと米国株投資の重要性をやや省略してある。後半少し書かれているが、企業の時価総額が巨大だから米国株投資が安心ということはなく、強固な事業基盤、財務基盤としっかりした株主還元をする企業の株価のバリュエーションが歴史的に見て適正値に修正されている点が、今米国株投資のチャンスである点をもう少し強調した方がいいのでは? それでもアメリカの経済指標の解説や、特に著書で強調されているダウ平均銘柄企業の強固な事業内容の解説や投資リターン等の比較については親切な解説がある。 なんとなくアメリカ企業に投資を考えている人の最初の1冊にはいいかもしれない。長期的にしっかりした株式投資を考える人にもいいかもしれない。この本で興味を持った後に為替や株式投資の良書に目を通すと効果的かもしれない。これ1冊で足りるということはない。まあ入門書ですね。1600円です。 応援よろしくお願いします。