2011/02/27(日)14:22
一般株主への保護や証券取引所
なかなかブログ更新の時間が取れず、今日の記事は単なる雑感に過ぎません。法律家でも学者でもなく、銀行や証券に勤める「金融のプロ」というわけでもありません。まとまってもおらず、最近の出来事の羅列かもしれません。 MBOが目立つと、「MBO批判?」なニュース記事が目立ってしまいます。一方、大手企業が上場子会社をTOBにより100%化することも同じくらいにおこなわれています(統計を取ったわけではなく、感覚です。すみません)。 後者の方は、一時期、証券会社やマスコミ自身が、子会社の出世コースとしての位置付けのように、礼讃を繰り返していたので、バツが悪い(かつ、自分たちの重要顧客であり、言いにくい)ということもあって、最近ではむしろ親会社側のスタンスに立って「機動的な一体経営が出来る」などと上場子会社の100%化を評価するような言動が目立っています(得意の手のひら返しってやつですね)。 前者の方は相変わらず、「だったら最初っから上場するな」とか、「TOB価格が不当に安い」(株価についてはMBOのときに特に声高に叫ばれる)という言葉が表面化します(水面下では同じように言っている方もいると思いますが、多分圧倒的少数派)。 しかしながら、TOBに関しては両者とも一般株主への保護という点では同じ利益相反を抱えていると思われます(上場子会社では「支配株主等に関する事項について」というリリースが定期的になされていますが、これによってTOB時点の価格や利益相反が完全に払しょくされると言うことはないと思われます)。 どちらも、TOBを行う方は株価を引き下げたくなる誘因が、被TOB企業の少数株主への配慮なく行われ易いと言う点では同じでしょう。しかしながら、大企業を敵に回したくない人たちは、盛んにMBOをより悪者に仕立てています。 MBOは創業者やその時のオーナーが株を買い(ファンドや銀行からバックファイナンスを得ることも多い)、非公開化しますので、会社に多額の借入金が残ってしまう場合が多い(世間ではこのことがあまり理解されていないと思われる。普通に創業者が経営していても、何らかの外部環境や内部環境の変化で業績に異変が起こるのは日常茶飯事であり、借入金で株を買い占めることとなれば、買収後の事業バランスはより悪化して、リスクが高くなる)。 上場子会社を買収する際には、親企業の財布の事情次第であるが、株式交換という奥の手すらある。また、信用力があれば社債等でポンと調達できる場合もある(ユニチャームとか)。 私も、MBOではありませんが、上場子会社であったユニチャームペットケアに投資していて、案の定TOBを掛けられてしまいましたが、文句も言いましたが、時間の無駄であり、サッサと売却して次の会社を買いました。ユニチャームペットケアを売却 2010/5/7一般株主の保護っていうのは、損する投資家がいれば得する投資家もいるので、市場全体ではニュートラルって考えるのが自然かと・・。株式市場ってのはリスクが高い前提のもとで行われ、泣き笑いは常ですし。 極めつけに適正株価を論理的に導き出すのは正直不可能ではないでしょうか?その企業への期待値が各投資家によってバラバラですので、投資家の数だけ株価が出来てしまいます。継続企業を前提としながら純資産価格以下のTOBはおかしい、という意見も目にしましたが、ミスターマーケット氏は2部上場企業など市場全体に1年以上もPBR<1を付与されており、そのようなマーケット氏には裁判官も勝てないのではないでしょうか?これを覆す裁判官はいないでしょう(どうせ裁判官と偉そうに言っても、タダの公務員じゃないか?) DCFなんて前提次第でどうにでもなる(それでもCCC等ではおかしなことになっているようですが)。経営陣が売上高の伸び率を1%弱気におけば、それで価格がガラッと変わってしまいますし、WACCを決める際も、結局は株式市場の数値を引っ張り出す(リスクプレミアムとかベータ値とか)。 個人的には、TOB前とTOB後の経営者や取締役の行動がもっと重視されてもいいような気がします。TOB前だと自社株買いなどは一つの目安にならないでしょうか?企業が自社株買いを行うときは、余剰資金の最適投資先として、自社株がもっとも魅力的(すなわちリターンが上がる)と経営者が何らかの根拠を持って判断するからこそ、アナウンスするから、経営者はその時点での適正株価を認識しているはずです。こういう事象を経ても(自社株買いは何回がいいかとか議論がありそうですが)PBR<1倍割れが継続し、不当に安く売りたたかれている、と経営者が判断して、「だったら俺が買ってやろう」と思っても、これは正当性があってもいいように思います。「割安サイン」をいくら出しても誰も買わない株を「俺」が買ってもいいような気はします。 TOB後は、第三者委員会とかが結成され、提案株価が適正か否かをケンケンガクガク話し合う場が設けられるのが一般的です。彼らが、「俺」に「もう一声」とか言えばいいのです。アメリカでは「阿吽の呼吸」で、第三者委員会が必ず一度は「不当に安い」というケースが多いと言われています(もっとも提案者もその分割り引いているとか...)。 要は一般株主に価格形成の透明性が確保されていることの様な気がして、何が適正か否か、というのはその時点でのミスターマーケット氏に逆らうことは難しいと思います。 そんなことよりも、ミスターマーケット氏に対し、もっと株価を上げる努力を日ごろから経営者におこなわせるような動機づけがあれば、ミスターマーケット氏もPBR<1を不当に長くの期間を与える罰も行わなくなるのではないでしょうか? 東証の斎藤社長がMBOを安易に行う経営者を罵倒したそうですが、個人的にはこの人に罵倒する筋合いはないように思います。 東京証券取引所は上場企業ではありませんが(言いかえれば、システムに不安を抱えて上場が出来ないダメ企業とも言えるのではないか?)、取引時間を長くするとかしないとか言う議論も、中途半端に終わっており、世界的な証券会社の合従連合が行われている現在においても世界的な株式市場としての東証をどのように維持発展させるのか、という点においても全く後ろ向きでしかありません。 これらのニーズに対する対応は、我々投資家から見た場合、東証上場企業全体に対して、直接不利益になるかどうか論証は難しいものの、決してポジティブとは言えません。こういった証券取引所の行動が上場している企業の株価にもし、ディスカウントを与えているのであれば、あんたに(適正株価とか説明責任とかを)言う筋合いはない、といいたいです。 上場企業ではない東京証券取引所ですが、「お客様」である投資家に対しては、ちっともサービスがいいとは言えません。如何に面倒でも、ニーズにこたえるべきと言えるでしょう。少なくとも市場全体の株価を上げるような努力はされているとは思えません。 日本の株式市場に対して言えば、旧式な映画館(証券取引所)で、中にはいい映画(個別企業)もやっているがチャンバラ時代劇が中心、という印象で、居心地が良く、観客も多いシネマコンプレックス(NYSE・香港・シンガポールとか)で、ハリウッド映画やカンフー映画の大ロードショウが行われている状況と格差がさらにでてくることが心配です。 いい映画を作った監督さん(CEO)は、古い映画館を捨てて、最初からシネマコンプレックスでの上演を望む人が増えそうです。 言いかえれば、バリュー株が増える、ということにもなるかもしれませんが、世界的な株式市場が回復するまでは、鳴かず飛ばずと言うことです(お金は最後に回ってくるから)。 応援よろしくお願いします。