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元・経営コンサルタントの投資日記

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M&A

2009/08/10
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カテゴリ:M&A

たった一口投資主の私ですが、保有株のM&Aとあっては、黙っていられません。

物言う個人投資主ブロガーとして意見を! 

国内REIT、初のM&Aか? アドバンスレジデンス投資法人の買収なるのか?

上記ご参照 

世間では 「業界のためになるからよいことだ」 という論調が主流ですが、それは投資主が報われている、という隠れた前提をきちんと評価しているようでもありません。

RIETは不動産を小口証券化することで、所有者の裾野を広げるとともに、流動性を高めて価格変動を抑えることに意味があるはずです。その所有者が報われないと意味がない(同じことは株式にもいえると思いますが、こっちの議論はすぐに感情論に走ってしまう)。資産ばかり増えても投資家は喜びません(ウォーレン・バフェットも言ってます)。

今回の発表を受け、まだ合併比率しか基本合意されていませんが、少し試算してみました。かなりざっくりしたものですのであしからず。

なお、基本合意等を発表し、合併比率を公表することは、評価できると思います。いまだ日本の事業会社同士のM&Aは先にM&Aすることだけ決めて、値段を後回しにすることが多く、投資家としては評価してよいのかどうかわからないことが多いです。

さて本件(もうじきアドバンスレジデンス:ADRの決算発表がありますが、とりあえずわかる範囲で)

基礎データ(投資口1口価格は本件発表前の8/5終値)

基礎比較.gif

DPSは一口当たり分配金です。REITは6ヶ月決算のところが多く、6ヶ月タームでのデータとなっています。

ポイントは格付けとそれに習って低いNRの時価総額でしょう。PBR0.4程度となっていますが、まあ、スポンサー企業の惨状やスポンサー企業との不透明な取引実態等から考えると仕方ない面があります。

 

また、最大の課題は有利子負債のうち、投資法人債の始末でしょう。投資法人債は一般事業会社の社債に相当しますが、現状、引き受けての投資家(生損保等)はリスクを嫌って引き受けに消極的といわれています。

したがって新生ADRはこの償還に対し、1:銀行肩代わり、2:物件売却、3:増資、4:社債再発行等の手口で対応を迫られます(4は現状はしんどそう)。

 

しかしながら、本件ADR発表資料によりますと、彼らの我々へのPRは以下のとおりです。

 

シナジー説明.gif

 

正直、前半のポートフォリオ云々は意味がわかりません。

「質の高い資産運用?」単にNRの物件を安く手に入れるということでしょう。アセットマネジメントの巧拙は他のREITとそんなに差がないと思います(どうせ誰かに任せるのだし)。

「フルライン化が可能になり、ポートフォリオの価値向上につながる?」これまで資産規模860億円のADRが3000億円クラスの物件を一気に手に入れると、コントロールするのに時間がかからないでしょうか? 

フルライン化は単にこれまで以上に手間隙かかるという負のシナジーを連想させてしまいます。なんてったって、住居用不動産ですから、小口分散化がさらに進むことを意味しています。掃除屋さんやリフォーム屋さんは中小零細企業が多いので、まとまってボリュームディスカウントは限界がありそう。

3番目のパラグラフは、借金返済に、積極的にNRの時価以下で仕入れた物件を時価程度で売却して、うまみを取ります、といっているんでしょう。納得。

一杯物件が増えると、なんだかリッチになる、という単純なものでもないはずで、小口の居住用不動産(契約者数がかなり多いはず)で、NRの物件は地方の物件も多かったはずですし、抽象的なシナジーでは納得できないことが多いです。もう少し具体的に説明してください。ADRの運用会社さん。

後半の財務戦略

要するに、伊藤忠の名を借りれば、金融機関はおとなしく従います、という意味でしょうか? 伊藤忠は大手商社であることを認めますが、果たしてどこまでその「印籠」 の効き目があるのか? メインバンクのみずほGは一応増資しましたが果たしてその体力は?

もちろん、この経済環境でリスクをとって買収に向かう、伊藤忠の積極姿勢は高く評価されるべきでしょう。

この公表シナジー効果を見れば、期待できそうなのは、NR物件の売却益と伊藤忠マジック?による金利軽減効果? で、旧ADR投資主にしてみれば、余分な投資法人債償還リスクをどうしてくれるんだ(低コストで順調に償還できるのか?)、旧ADR投資主の利益を損なうことなく増資が出来るのか? が焦点です

リスクをとって、投資家に報いなければならないので、大変だと思います。

 

合併の簡単な試算

合併模式図.gif

シナジー.gif

 

合併比率0.66は前回のブログで試算した「0.7口程度」をやや下回り、評価できます。

0.7を下回ったおかげで、旧ADR投資主にはDPSの上乗せ期待が膨らんできました。

上記は仮に純利益を全て分配金にまわした場合の試算です。

単純に両社を合併しても、安目に買えるので、6.1%程度分配金の増加が見込めそうですが、上記のとおり、ご立派に「シナジー」がある、といっているので、いくらかわかりませんが、勝手に3億円程度期待すると、約15%の分配金増加が見込めます。

 

しかし、間違っても金利負担増でマイナスシナジーとか、増資で大幅希薄化だけは勘弁してください。また、負ののれんの営業外利益が発生し、課税などへの資金手当てはどうなるのだろう???

 

当面は旧NR物件の売却益で借入金の返済と分配金の不安定な増減を繰り返すのでしょうか? 

DPSの安定的増加、売却益によるDPS不安定な増減、金利負担増、投資口の希薄化によるDPSの実質減少など本件が長期的に旧ADR投資主にメリットがあるのかデメリットをもたらすのか、現時点では情報不足で評価できません。

それと格付会社の格付け判断です。現状、ADR単独でもA+の維持は風前の灯となっています(Aは維持できそう)。それに投機的水準のNRを足すと、単純にシングルA陥落じゃないのか、という不安と安くNR物件を買ったので、A+が維持されるのでは、という期待が入り混じってしまいます。

格付け会社の判断は金利にダイレクトに響きそうなので、要注意ですね。







Last updated  2009/08/10 12:58:39 AM
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2009/07/27
カテゴリ:M&A
REIT、初の合併 破綻ファンド傘下の大手、伊藤忠系が吸収

(日経ネット)

取材源は不明ですが、日経新聞のこの手の報道はキリン-サントリーの例のようになる可能性も秘めています。

私は、アドバンスレジデンス投資法人(ADR)に投資しております(大体25万円ぐらいのときに買っている)。他の保有しているREITと比較すると、パフォーマンスが好ましくないですが、これは伊藤忠商事という信用力を買ってのことで、多少分配金利回りが低くとも許容した結果です(「大甘」格付け会社である、R&IにA+がネガティブ、とされたのは想定外のことです。これがパフォーマンスに影響したのか?)。

ADRの分配金履歴と投資口価格の推移

 

ADRdividened.jpg

 

第6期は消費税の還付など多少の特殊要因があるとのことですが、おおむね13,300円以上で推移しているといえそうです。

 

ADRチャート.gif

 

投資価格のほうは、35万円の壁を破ることは出来ません。

 

今後の不況による賃料の下落や稼働率の下落も想定され、第8期以降も苦戦を強いられる可能性も否定できません。

また、他のREITと比較しても借入金が多いので(格付け悪化の要因)、支払利息負担の増加も想定されます。

6月が決算だったので、そろそろ決算発表がありますが、同時期に吸収合併の話もあるかもしれません。

 

買収対象(と噂されている)REITは日本レジデンシャル投資法人(NR)です。

2つを比較してみましょう(注:2つとも居住用不動産を投資対象に特化したREITです)。かならすしもREITの分析は得意ではありませんが、ざっくりベースということで。

 

ADRとNR1.gif

 

あれれ? 吸収する(と言われている)はずのADRの方が規模も小さく、分配金利回りもADRの方が高いですね。日本レジデンシャルのスポンサーといえば、あの破綻したパシフィックホールディングス。大和証券グループも破たん前に買収に乗り出しましたが結局あきらめています。

スポンサーの「格」からいえば、圧倒的にADRだと思われますが、対象REITそのものは規模が逆転しています。(小が大を飲む?)

BPSは株式でいえば、一株あたり純資産のこと、NAVはその時価版。

ADRとNR2.gif

REITの中身の比較ですが(要するにどれだけ、有利な価格で不動産を買ったのかということ)、これはADRの方がやや「マシ」に見えます。物件価格の時価/簿価で比較しますと、ADRは94.3%、NRは88.4%で、後者は10%以上毀損しています(注:物件の時価総額はADR、08/12月現在、NRは09/5月現在)。

ただし、不動産を買う場合、どれだけ借入金に依存したのか、というLTV(借入金/不動産の時価)はADRの方がよくない。で、ここに来てのこの金融環境。

NRの1,700億円の有利子負債は重たい。1700億円のうち、900億円が投資法人債というのが致命傷。投資法人債とは、一般企業の社債に該当しますが、この引き受けてはいわゆる機関投資家(生保とか)で、今の環境と信用状況からは借り換えに応じない、といわれており、REITの信用不安の一因にもなっています。

(この投資法人債の償還金を日本政策投資銀行や何とかファンドで受け皿になろうという動きがあります。しかし、それでも絶対額が多い。)

これを伊藤忠マジック?で何とかしようという魂胆でしょうか?(みずほGはヘトヘトのように見えます)

 

だれにメリットがあるのでしょうか?以下は単純な合算に過ぎません。一応、合併としてADRがNRの投資主にADR投資口を発行するという前提です。

 

ADRとNR3.gif

 

各々の予想純利益を発行済み投資口数で割ると、10,162円となります。これではADR投資主に不利な合併になってしまいます。NR投資主から見ると、今の価格255千円でADR投資口一口と交換になります。

 

仮にADR投資主に合併後も「現状維持」のDPS(一口当たり分配金、一株配当に該当)を分配するとなれば、合併によるシナジーを上げる(規模のメリットを引き出すことで、純利益を3,284百万円以上にする)か、日本レジデンシャルから時価以下で買収する以外にありません。

シナジー説の場合

ADRとNRシナジー.jpg

NR投資主にADR投資口一口を交換した場合、約33億円の単純利益の1.3倍の利益を引き出さなければADR投資主の分配金権利は守れませんが、かなり非現実的と思われます。合併しても、プロパティマネジメントの費用が多少安くなる程度ではないでしょうか?

 

時価以下の買収説の場合、170千口程度しかカウントできなくなります。全体の70%以下です。NRの投資主一口にADR投資口が約0.7口程度でしょうか。

 

ADRとNR5.gif

 

つまり、ADRの投資主の権利を守るためには、NRの買収予算(全くシナジーがない前提)だと、時価総額436億円、一口当たり177,000円程度が妥当となります。実際は幾分かの「シナジー」という美しいオブラートで、180~190千円程度なら許容範囲かもしれません。30%程度のディスカウントです。

 

パシフィックHDは経営破たんしていますがREIT自身の売却はこのような破綻ディスカウントが適用できるのでしょうか?

 

買収したADRとて、巨額の投資法人債の償還問題が残っています。R&IのシングルA+ネガティブルックという状況で、借入金利息負担増加が考えられます。その場合、シナジーどころか、負のシナジーすら引き受けかねません。

なおかつ、いくらディスカウントして合併しても、その効果は旧NR側投資主には恩恵がありますが、旧ADR投資主にはなんらおいしいところは見当たりません。分配金が現状維持程度ですから。本来は合併すれば、NR投資主にもADR投資主にもメリットがないと承認できないような気がします。NR側に「つぶれないだけマシだろう」と押し付けるには、規模のギャップが違いすぎるような気もします。

 

本件ADR投資主としては、もし、実行する場合、明確な合併メリットの説明をして欲しいものです。まさか、増資して増資代わり金で借入金(又は投資法人債)の一部を返済するなんて愚行に出ることはないでしょうか?

単に帝国の版図が拡大するだけのM&Aには反対するより他ありません。

ちょっと投資方針を変更しようか思料してしまいます。

確かにJ-REITは昨年秋の壊滅的打撃から、政府等の政策のおかげで、だいぶ値をもどしてきたことは認めます。その政策の目玉としてREITの再編を制度の側面で支援しようという再編ルールを定めた点にも貢献度は大きいです。

だからといって、肝心の投資家の利益を保護しないような合併であれば、制度のための制度であって、その制度は誰のためのものか、という視点で運用して欲しいと思います。







Last updated  2009/07/27 12:57:50 AM
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2009/04/02
カテゴリ:M&A
中国が総額57兆円に上る経済対策を発表した昨年末は米国を始め世界中の国がその景気対策を評価しました。

そして、先日の全国人民大会でも8%前後の経済成長を目指すため成長の手綱を緩めない、財政出動を積極化すると温家宝首相は明言しました。これも米国をはじめ世界は前向きに評価しました。多分今行われているG20でも、「中国はお金を一杯使って積極的に世界経済に貢献しています」とがんばっていると思います。

 

中国では事実、中産階級の消費のみならず、国家インフラの整備がまだまだ進んでおらず、十分公共工事の余地があると言われています。鉄道・道路・橋梁などを57兆円で一気に作ってしまおうと。

それを後押しするかのように、昨年後半より中国の人民元建て銀行貸付残高が急騰しており、グローバルベースで当たり前となっている貸し渋り現象とは完全に孤立したような金融政策となっています。ロイターでは09年1月2月の新規融資残高が過去最高の約4000億ドルになったと報じています。

こういった一連の施策がバルチック海運指数他経済上のいくつかの指標の改善に役立っており、世界中の生産調整も一巡し始めるこのごろ、最悪期のいくらかの下支えになっていたことは明らかで、ご存知のとおり上海証券取引所の株価は過熱化しつつあります。

 

 

しかし、ここからが問題なのですが、こういった チャイナ・マネー が中国国内で消化されていることには誰もが歓迎しているはずなのですが、その 赤いお金 が国境を一歩越えると、一変、非難や妬みに近い感情を世界中に撒き散らしてしまいます。

13億人の得体の知れぬ 資本主義を利用した共産主義国家 で、 人権を尊重しない野蛮な国 という印象が強いのでしょうか? ダライ・ラマさんも、経済が失墜した瞬間、TVで取り上げられる回数がめっきり減ったように感じます。

 

何を言わんかというと、最近の一連の中国関連M&Aは世界中で買収側でも被買収側でも議論を呼び起こしているからです。

 

中国が買収側に入っているのは、もちろん資源関連のもので、当ブログでも取り上げたRioティントに関する報道です。Rioティントに出資あるいは鉱山の権益の一部確保には豪州当局の許認可が必要で、豪州当局は現在、外為委員会の承認まちとなっています。

参考

中国は「漁夫の利」を得たのか? Rioティント、チナルコ195億ドル・ディール、BHPの反撃があるのか? 09/2/13

 

実はRioティントの権益の一部買収以外にも、中国企業による複数の豪州における鉱山会社買収案件があり、そのうち、OZミネラルズという豪州の鉱山会社の買収案件は豪州当局に否認されてしまいました。当局側の理由は、「買収鉱区が軍事演習地区に被っているため」 という軍事上の理由からでした。当局側は、この決定は他の買収案件の判断に影響を及ぼさないと言明したにもかかわらず、メディアは 「中国よ、何でも思い通りになると思うな」 といった論調になっていました。

(注:その後中国側は別の鉱山資産の買収を再提案しています)

 

ただし、米国コカ・コーラが中国第一位の飲料メーカーを買収しようとした案件では、中国当局側が反対に、「国民の選択肢を狭める独占的懸念がある」 として、コカ・コーラの買収提案を否認してしまったということも3月にありました。中国は5年ほど前にユノカル買収を米国に却下された経緯があり、米中両国は表向きには「パートナー」 と言い合っていますが、局地戦ではこういったつばぜりあいを行っています。

ただし、Rioティントへの出資審査が続いているまさにそのとき、といったタイミングにコカ・コーラにNOを突きつけたため、欧米メディアは飛びつきました。いわく、傲慢だ、自分勝手だ、と(どこかの国に似ています)。

最近では、買収企業である当のチナルコが予想を上回る大幅の赤字決算であるにもかかわらず、巨額買収が出来るのは、バックに政府マネーがあるからで、資本主義国家では考えられない資金調達(巨額赤字の素材メーカーがこんな不景気に思い通りの資金調達が出来ることは稀)はアンフェアだ、という論調が多いようです。

 

当のRioティントの言い分は、結局同社の一番のお客様は中国で、その中国から資本を得ると言うのはお客様との関係が深くなるので、かえってよいと主張しています。一方、既存株主は、それが「本来もっと高い値段で売れる」はずのものを安く売ってしまう利益相反を招く と反発もしています。

 

ただし、70年代の日本企業による一連の鉱山権益買収でも、日本企業は数量の確保はできたものの、価格コントロールは出来なかったので杞憂だという専門家もいます。

 

出る杭は打たれる、これは日本のことわざと思っていましたが、万国共通であると思うにいたりました。

東洋人による世界支配は西洋人にはまだまだ準備不足であるような気もします。中国はこれでもずいぶん低姿勢になった(対日はそうでもないが。相変わらず、帝国と王国のような目線)と思いますが。

思い起こせば日本も三菱地所のロックフェラーセンター買収他、80年代後半の大型買収時代や、今では死語となった、「ザ・セイホ」 といわれた ジャパンマネー も同様な感情を欧米国に引き起こしました。(当時の日本生命は世界一のセイホだったのに今は世界的には影が薄い)。

それから20年程度経過した今、かつてほど毛嫌いされることはなく、ほぼ対等な扱いを受けている感想を持ちます(一部のグローバル企業のみでしょうが)。

 

まだまだ時間がかかりそうな中国の大国入り。市場開放を各国から求められる声は一層強くなるでしょう。特に中国の場合は企業でなく、国家単位で見られがちであると言う点が日本とは違うかもしれません。

チャイナマネーが世界を救う、と言われるのか、チャイナマネーは秩序を乱す、と評価されるのか。。。




BlogPeople






Last updated  2009/04/03 02:03:14 AM
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2009/02/11
カテゴリ:M&A

 

BHP.jpg
 

 

資源メジャー2位のリオティント(英豪)は現在苦境に立たされています。

決算内容が悪い、というより借りれ金の返済目途がつかない、と言われています。

 

Rioは07年5月に、カナダのアルミ大手アルキャンを約400億ドルで買収した。

当時アルキャンは同じくアルミ大手のアルコアから敵対的買収提案を受けており、「ホワイトナイト」としてRioの買収提案を受け入れました。

Rioは当時BHPビリトンがRioに敵対的買収を仕掛けるのでは、とうわさされていたため、規模を大きくしてBHPからの買収提案を逃れようとしていたといわれていました。

そしてアルキャン買収の際、期限2年ほどのブリッジローンを390億ドル(ざっくり4兆円ぐらいか)調達し、10年末ごろまでに返済を迫られています。

現在、ロールオーバーはほぼ難しく、100億ドルまでにローン残高を減額するようにRioが奔走しています。

 

自らのCFだけではとてもおぼつかないので、当然資産売却、という話になるのですが、このご時世、誰もリスクを取ろうとは思わず、すんなりと売却が進んでいません。

先日は南米コロンビアの鉄鉱石鉱山をライバルのヴァ-レに売却出来たが、8億ドル程度だったとのこと。

さらに豪州のウラン鉱山他も売却可能な資産があるとのことですが、買い手も、「バーゲンセール」でなければ買おうとしないのが現状で、事実上話が進まないようです。

 

そういった中、浮上しているのが、増資案です。誰が増資に応じるのかという点が非常に興味深いと思いますが、そうです。チナルコです(中国アルミ。国営企業)。

現在すでに、Rioの約9%の株主(そのうちいくらかはアルコアが出資)ですが、さらに200~300億ドルの出資を協議しているそうです。まもなく正式発表されるとか。

 

ちょっと強烈な話ですね。当初中国側はむしろ、出資に躊躇している、というのが情報筋の話のようですが、出資後にどのような立場を確保できるのか、ということ次第だとひょっとする可能性もあります(現在役員派遣や一部資産・権益の中国側の買収案などが盛り込まれているという)。

ひところ 「世界の資源をガブ飲み」 と言われた中国ですが、依然その 「のどの渇き」 は十分の模様です。

中国とすれば、鉄鉱石やアルミニウムに強いRioティントという有力企業にある程度影響力を持てるとすれば、それはすごいことです。

 

日本企業の動向

ここでRio出資に出向く日本企業、と言いたいのですが、どうでしょうか。三井物産が50億ドル規模の資産買収をする可能性を取りざたされています。BHPビリトンと三井物産が共同でRioティントが保有するオーストラリアの石炭会社の権益を買収しようと言うものらしいです。

一方では、BHPはチリのエスコンティーダという世界最大の銅山の権益をRioから狙っているとも伝えられています。同銅山は57%がBHP、30%がRio、10%は三菱商事・三菱マテリアルグループが保有しています。この30%相当は現在の市況でも60億ドルが相場とのこと。

 

図1.gif

 

三菱商事側は投資案件をかなり抑制しているので厳しいかも。特に資源偏重へのゆり戻りがあるといわれています(伊藤ハムとかイオンとか正反対の方向への出資が目立つ)。

Rioとしては、自らの優良資産のバーゲンセールを避けたい、そうすると中国側の出資が多くなる、というジレンマがあるようです。(敵対的買収に防衛成功しても、「食い物にする」人たちの餌食になってしまうのですね)

 

さて、今年の鉄鉱石相場はどうなるのでしょう。前年比40%カットと言われています。今ヴァ-レと中国の宝鋼集団(Bao Steel)が協議をしています。

ブラジルのレアル、豪ドルとも米ドルや円に対し大幅な通貨安となっているので、多少叩いても彼らの実質収入は困らないのではないかと思います。

 

高炉メーカー

 

中国最大の高炉メーカー宝鋼集団は2012年までに粗鋼生産量を8千万トンとするため、中国内の業界再編の受け皿になると言われています。

日本国内の粗鋼生産量はざっくり1億トンです。新日鉄のそれは3300万トン前後です(来期は2700万程度か)。

そうなれば当然、現在世界2位の新日鉄も宝鋼集団に追い抜かれ、3位に後退しますが、その生産量の差は倍以上になるので、3位と言えども規模レベルでは周回遅れと言った感じになってしまいます。

JFE、新日鉄とも次の高炉建設を急いでいますが、ブラジルで稼動し、規模はせいぜい300~500万トンなので、世界との差は広がる一方です(ただし、規模では負けるが、品質ではまだ優位にある。ただし、どこまで品質だけで業界内や対顧客へのポジションを確保できるのかは不透明)。

日本の高炉メーカーは、皆、特定製品に強い、製品特化型のニッチ企業になっていきますね(まあ、それで十分利益が出せるので、それはひとつの戦略として立派だと思いますが)。

例:新日鉄:自動車鋼板、住友金属:シームレスパイプなど。

 

ちなみに1位はご存じアルセロール・ミタルで1.3億トンとダントツ。

 

Rioティントの再編は、対岸の火事とも言っていられない状況で、経済のグローバル化の次のステップ、中国の本格的な世界経済への進出の一つのアピールにもなるでしょう。

 

一つ日本の高炉メーカーさんの名誉にかけて付け加えますと、永年の鉄冷えのせいもあって、前回の不況時に国内ではついに業界再編を完了しています。したがって、今回のサブプライムでは、高炉メーカーも直撃を受けていますが、製品のすみわけや価格コントロールがそれなりに出来ているので、電機メーカーのような悲惨な目にはあっていません(といってもこれからの鉄鉱石相場や自動車会社との価格交渉次第ですが)。

比較的体力の付いた高炉メーカーや大手銀行のように、やはり業界再編による適度な国内競争を行わないと、税収も雇用も景気も皆、貴方任せでは進歩がないなあと思います。

技術技術といっても、バフェットの言う「有料ブリッジ」が築けなければ、結局は苦しい。

 







Last updated  2009/02/11 03:31:38 PM
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2009/01/17
カテゴリ:M&A

シティ・グループとバンカメの4Q決算の発表が終わりました。

今日の日経新聞を読む限り 

米国の支援体制は、とにかく 「金融システム」 の維持とこれ以上の実体経済への波及を食い止める、という応急処置的な感じがいたしました。

シティは思い切って、銀行業務中心の体制(旧ソロモンはシティーコープの投資銀行部門になるんでしょうか)になりましたが、これは市場がここ数年、シティに対して抱いていた疑問をそのまま反映した分割と言う気がいたします。

シティの失敗が、銀行と証券の失敗というビジネスモデル的なものか、経営者の管理能力不足が原因なのか(私は前者の意見なんですが)きちんとした分析が今後必要な気がいたします。多分両方が原因かな?

しかし、そういった答えが出ないまま、バンカメでは、なし崩し的に、旧メリル部門の損失補てんを政府が行ったことになります。旧メリル部門は今後「バットカンパニー」の主役を務めそうなので、新生バンカメがどんな姿になるのか見ものです。

新生バンカメには旧メリルのブローカレッジ部門が残存する(可能性が今は高そう)のであれば、シティの解体、分割の方針と、バンカメのそれでは全く正反対の対応になってしまい、「国民の血税」に、申し開きが出来ないような気がします。

民主党政権として、「大きすぎて潰せない」 はこれ以上放置したくないのではないでしょうか?

それとバンカメの経営陣への責任問題はどうなるのでしょうか? シティのバンディエット氏は、個人的には「なす術がなかった」と思いますが(分割の意思決定も、この程度のスピードなら許容範囲ではないか)、

バンカメの場合、あのタイミングで政府支援の「お土産なし」でメリルを買収に向かったのであれば、結構クエスチョンです。メリルの実態が想像以上に悪化した、とエクスキューズがありましたが、想像力が乏しすぎたのではないでしょうか?

もっとも、あの段階でメリルの買収を見送っていれば、リーマン、メリルの2大破綻が待っていたような気がしますので、金融危機の食い止めに「貢献」されたことも否定できません。ただ、一企業の経営者として、「想像力」 がなかったと感じます。

ご参考

バンカメが投資銀行を買収するのか (08/9/15)

そして、「ノンコア」指定された日興コーディアル(と日興アセットマネジメント)。

三菱はモルスタがスミスバーニーとの合弁で、日興を引き受けなかった時点で、ないと考えるのが自然なのか?

みずほも新光証券やみずほインベスターがあるので、ブローカレッジのみだと魅力半減か?

SMBCは大和グループがあるので元々必要なしか?

まさか、りそなグループ?同行はフランスのクレディ・アルディコルと親密だが、彼らの日本証券地盤?

まさか政策投資銀行?(これはないか)

まさか農林中金?

まさか郵政(かんぽの宿で困っていますが)?

今回の不況は、前回と違い、こういったリスクを引き受ける外資がボロボロなので国内勢で資金余力と事業拡張意欲のあるところが活躍できそうです。

え? うちのファンドでMBO? そんなに大きくありません。

 







Last updated  2009/01/17 02:31:47 PM
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2009/01/14
カテゴリ:M&A
週末からうわさされていた、モルガンスタンレーとシティ・グループのスミスバーニー部門の合弁ビジネスの誕生がついに発表されました。

新会社モルガンスタンレー・スミスバーニー(仮称)は世界第一位のリテール証券ビジネス(といっても富裕層向け)となる模様とのこと。

シティ・グループのCEOパンディエット氏はモルスタ出身なんですね。シティは昨年ゴールドマンから合併を申し出られたが謝絶したと報じられていましたが、元ボスに下ったということでしょうか?

新会社はモルスタの新たな収益源になるとか、リテール証券は所詮営業マンの個人ビジネスだから営業マンが他社に転職すれば終わりとか、米国人は 「投資から貯蓄へ」 向かっているので逆風だとか様々言われています。どうなるのやら。

さて、シティ・グループはこの比較的無傷な「クラウン・ジュエル」を売却してしまった(合弁企業の49%の株式を保有するものの、3年以内にモルスタが時価で買収できる権利付)ため、「帝国解体」が始まるとうわさされています。

ウォールストリートジャーナルでは、ホールセールバンキングとリテールバンキング以外はシティに残らない、つまり、旧来のシティ・コープに戻ると報じているようです(ということは旧ソロモンブラザーズはどうなるのか)。

 

先日、シティ・グループ結成のときからの役員であったあのロバートルービンがついに退任を発表しました。彼は99年からの参加で実に通算115百万ドルの役員報酬を得ていたが、まったくこれまでの経営判断を責められていました(社外取締役でっせ、週一回勤務の)。

citi_reedweillrubin600.jpg

(これで全員シティを去った。左からジョンリード、サンディワイル、ロバートルービン)

それと国家の直轄管理にあるシティ・グループでは、証券と銀行の分離が始まろうとしています。世紀の金融帝国は終わりを告げました。その巨大さゆえに管理不足の連続でした(初代ワイル氏はとにかく強権を振るったので、コンプライアンス面で躓き、日本でもリテール金融が追放されることがあった。2代目プリンス氏はコンプライアンスばかり目をむけ、リスク管理体制がなってなかった。3代目パンディエット氏はなす術がなかった。結局銀行と証券は同じ船では暮らせないということだろう)。

 

が、昨年12月、もう一つの金融帝国が発足した。バンクオブアメリカです。バンカメは昨年のサブプライム危機の初期に、米国の住宅ローン専業最大手カントリーワイドフィナンシャルを買収(結構リスキーと言われた)、そしてご存知メリルリンチを買収。メリルは当時、リーマンと同レベルのデフォルトリスクを抱えており、沢山の証券化商品を抱えていると言われていました。

 

JPモルガン・チェースは2ドルと言う格安値と政府融資という特別待遇でベアスターンズを買収しましたが、バンカメは丸腰でのメリル買収です。同社はこの4Q決算の主役と考えられていたのですが、主役の座をシティに持っていかれてしまいました(その方がバンカメに有利なのですが)。いや、ひょっとして危機説が再燃するかもしれません。

旧メリルのセインCEOは新生バンカメの投資銀行部門責任者として残るとのことですが、米大手金融機関で最後までボーナスにこだわり、往生際のなさをマスコミに叩かれていました。

 

新生バンカメ 「帝国」 の行く末はいかに? 

 

もう一つ、日興コーディアルは今回売却対象外となっていましたが、これは「プロセス」が既に始まっている証左なのでしょうか? シティに残ったブローカレッジ部門ですが、その役割り期待が益々不明瞭です。かなりリストラしましたから。







Last updated  2009/01/15 01:47:04 AM
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カテゴリ:M&A

ロイターの記事から。まだ憶測段階なのでどうなるのかわかりません。

Japan's USJ may go private with Goldman help: sources

これによると、ゴールドマンサックス証券が主体となって、同社を非公開化しようというプランを 「情報筋」 が語ったそうです。

時価総額837億円とされています。一方08/3期の借入金は589億円、現預金が324億円となっています。したがって、企業価値(EV)は837+589-324=1102億円です。

仮にTOB価格を時価総額の30%プラスと想定すると1088億円、1100億円と評します。

一方、EBITDAが215億円あります(営業利益+減価償却費)。

現在の業界内のタイトな環境下では、LBOローンはEBITDAの3から4倍程度と言われています。なおかつ主幹事で資金が出せそうなのはメガバンク程度とも言われています。

丸の内の主の方はスプレッドと取れるLBOより、大企業優先とのお話。

さらに「すかいらーく恐怖症」のメガさん。

消去法的に残るは地元大阪のSさんが出すのかな(GSさんとは仲がよいし)。

仮に「奮発」して4.5倍出したとしても、215×4.5=967億円

GSさんは「共同投資家」を募るらしいですが、こんなそろばん勘定でしょうか

運用サイド

株式購入(TOB他) 1100億円

既存借り入れ返済 589億円

手元現預金     200億円

フィー         70億円

合計        1959億円

 

調達サイド

エクイティ         668億円

LBOローン(ブリッジ込) 967億円 

現金預金          324億円

合計           1959億円

 

企業価値1102億円/EBITDA215億円=5.13倍 (結構リーズナブル)

仮に非公開後も08/3期ベースの収益力を維持するとして(要するにEBITDAが横ばいで、企業価値も同じとすれば)・・・。

という計算をすることになります。もちろん、エクイティを700億近くも出さずにメザニンファイナンスが付けばもっと少ない投資でリターンが出せます。

 

 

また、借入金も一行で出せる金額じゃないのですが、ついてくる銀行があるのかという側面もあります。

今後のLBO、MBOの方向性を占うかもしれません。大東建託のような内輪のゴタゴタ

なさそうです。外部環境が勝負です。

フィーが70億円もするのか、とおっしゃられる方、大半は銀行へのファイナンスフィーになります。

さてどうなるのやら。本来ならGSさん1社で出せる金額で、三洋の回収資金もあるでしょうが、台所事情はGSさんといえども厳しそうです。

(平均4割下落した相場に30%程度のプレミアムでお許しがもらえるのかという突っ込みもあるかもしれない。なお、この記事を当てにして株式投資をされても責任は持てませんのであしからず)

 

 

 







Last updated  2009/01/14 02:54:19 AM
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2008/12/27
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ロイターやFT.comで、ニューヨークタイムズ社はリストラのため、保有する米大リーグ、ボストン・レッドソックスの株式の持ち株会社の株式売却(18.7%)に踏み切ると報道した(記事を最初にリークしたのは、ウォール・ストリート・ジャーナルだそうだ)。同社は来年3月に期限が到来する4億ドルの借入金の返済原資の捻出を迫られているという。また、広告収入の減少も頭の痛い問題であるとしている。

推定売却価格は2億~2.5億ドル(@=90円とすれば180億円~202億円)といわれている。

恥ずかしながら、私はニューヨークタイムズ社が、ボストン・レッドソックスの球団を一部保有しているとは知りませんでした。だからヤンキースの選手に辛らつな記事を書くのか! と合点がいきますね。

ニューヨークタイムズ社は昨年からアクティビストファンドに狙われており、今年度の株式総会ではアクティビストと妥協して、アクティビストに取締役ポスト2名を譲歩している。これは、当初4名の要求を受けたものを、2名で取引する代わりに、委任状争奪戦をやらない、という「取引」を行っていた。

Times Co. Nominates Two for Election as Directors(2月13日)

米国では特に新聞紙業界はインターネットの登場で収益性が低迷している。あの、ダウ・ジョーンズ社がルパード・マードック率いるニューズコーポレーションに買収されたのは記憶に新しい(ダウ・ジョーンズ傘下のウォール・ストリート・ジャーナル紙の編集長が買収後退職するなど話題となった)。これもダウ・ジョーンズ社の株価が長期低迷局面にあったので、創業家一同が売却に応じたものだ。

ニューヨークタイムズ社も例外ではなく、特に広告収入が減っていると言われている。そこで、Web広告を最大化することで業績の建て直しを図るため、同紙のWeb版は登録すれば全ページ無料となっている(FTやウォール・ストリート・ジャーナルは「いい記事」は有料)。

この株価急落に、「株主価値向上」を迫られていたとしても決して不思議ではない。

ニューヨークタイムズ社は持ち株会社の株式を2002年に75百万ドル(67.5億円)で買収したときの4倍で売却することを希望していると言う(推定価格は3倍程度)。

 

買い手候補には、地元ボストングローブ紙などが挙がっているという。

多分、ニューヨークタイムズ社はもっとリストラが必要になってくるでしょう。

 

米国の新聞会社は種類株式を発行しており、ダウ・ジョーンズ社もかつてはClass A株を創業家グループに発行(発行済み株式数の30%程度だが、拒否権か複数議決権があり、これで経緯支配が出来る構造になっていた)、一般投資家はClass B株の取引だったはず。

ニューヨークタイムズ社も同様な株主構造になっていると言われている。

 

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(これは一般投資家向けのClass Bの株価推移、過去5年で急減しており、まるでGMの株価推移みたいです)

今回は負債の償還という「背に腹変えられない」事情で売却を決意したようであるが、厳しい状況には変わりない。

一方、日本ではTBSが放送持ち株会社入りを「順当」に決定し、楽天を蹴落とすことをもくろんでいる。TBS、認定放送持ち株会社へ移行(2008/1/1 

新聞社にいたっては法律で株主になれる人が定められている。

現在の大日本本営的な業界構造にメスが入らない。

 

今年はこれで終わりです。ご愛読ありがとうございます。来年もよろしくお願いします。

来年は株価の下げ止まりに期待したいです。







Last updated  2008/12/27 06:24:13 PM
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2008/12/15
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先週、ついにBCEの非公開化が撤回されることになったようです。

ご参考

株主 VS 債権者  BCE、ベル・カナダ (6月4日)

株主 VS 債権者 その2 BCE(ベルカナダ)、カナダ最高裁の決定 試合に勝って勝負に負ける?(6月22日)

さてこのディール、カナダのオンタリオ州教職員年金基金がプライベート・エクイティファンド2社と組んでカナダ第一位の通信会社カナダベルを非公開化してしまおう、という案件で、2007年7月に買収者側とBCEが合意に達していました。

合意当時は約500億カナダドルで、「当時の」カナダドルレートでは5.5兆円にも上るため、世界最大のバイアウト案件(LBO案件)だ言われていました。

その後、BCE側の社債権者が、「今バイアウトされると、新たにBCEが背負う借入金の額が大きすぎて社債格付けが下落し、強いては社債の価値が下落するので、債権者の利益にならない」という主旨で、裁判を起こし、ケベック高裁では債権者側の勝利に終わりました。

このことは北米で、「株主価値を最大化したにもかかわらず、それを裁判所がひっくり返すとは何事だ。取締役の忠実義務とはどうなるのだ」と大きな波紋を投げかけました。

会社側は急いでカナダ最高裁裁判所に控訴し、最高裁は第一審をひっくり返し、バイアウト案件はGOされることになりました。これが08年6月。

ただし、この時点では、LBOの主幹事をつとめる銀行も体力低下が著しく(あのシティとドイツ銀)、条項の見直しなどを含めた結果、会社側はバイアウト終了時点まで 「自主的に」 配当を見送る、などLBOに賛成した既存株主から見れば玉虫色の決着に終わっていました。

その後すんなり行くのかな、と思いきや、最近、監査法人であるKPMGがバイアウト後のBCEの債務支払い能力に難がある、と指摘し、これが決め手となって案件が崩壊した、と言うのがこれまでの話です。

何でも買収者と会社側の合意契約の一項に、「監査法人のCFテストに合格すること」がLBOの条件だったとのことです。CFテストのことをロイターの原文では「solvency opinion」と記載されています。

 

こういった独立性のある第三者からの solvency opinion をもらうことは日本ではほとんど例がないと思います。米国でも07年度のバイアウトで13%しかこういった例がなかったそうです。

日本では銀行側がしっかり審査しますので(法的なオピニオンはもらいますが、基本的に貸付金を流動化することが盛んではない商習慣がありますので、返済能力の有無の審査は多分欧米より厳しい)、たとえ監査法人の「返済能力のお墨付き」があったとしても自分たちで再度審査するでしょうし、それ以上経営陣も気にかけないはずです。

 

しかし、結局KPMGの最後通牒で、BCEの既存株主以外は安堵したのではないでしょうか?(要するにやるべきではなかった案件)

なんと言っても「100年に一度の大不況」の真っ只中(いや、入り口に過ぎないかも)です。

経営者側も、「果たして過大な借入金を背負って大丈夫か」、ファンド側も「結構きつそうだな」と思っていたに違いありません。

そして何より銀行側がホッとしているはずです。ローンを転売するマーケットは崩壊していますし、保有し続けて、BCEの業況に異変があれば、即引当金を積まなければならない、などいいことは何一つありません。

株主側は、BCEのTOB期待で買った人たちが損をしますが、まあ、バイアウト発表前からの株主ならいざ知らず、発表後の投資家はいわば、投機ですので、自業自得って感じかな。

 

なぜ、バイアウトすると借金が増えるのか、について、これはRe-Capとも言われていますが、以下の図を見てください。

仮に買収対象企業のBSが左の図のように、なっていて、株式時価総額が簿価と同じで50であったとします。買収者側のバイアウトファンドは対象企業を60と評価して(つまり約20%のプレミアムを株主につけます)でTOBをかけて賛同されたとします。

買収者側は、買収目的専門会社(SPC)を作って、そこで買収を行います。このSPCのBSは右図のようになっていて、ここでも借入金調達をします。要するにファンド側は30しか実際に出資しないのです。

 

図1.gif

 

買収後、SPCと対象企業は合併します。合併後(順合併の場合)のBSは下の図のとおりです。

図2.gif

要するに、合併前の対象会社の50の資本のうち、20は借入金に入れ替わっています。この20は旧株主に還元したことになります。したがってRe-Cap(Re-capitalization、資本再構築)と言います。

 

ただし、対象企業の収益力、キャッシュフローは変わりませんので、稼ぎが変わらないのに、借金が30も増加するので、社債の返済能力が低下すると言われることは、理屈としてはあっています。

 

したがって、LBO(この買収主体が既存経営者の時には、MBOと言われる)はCFが十分な水準で安定的であること、LBO前の借入金の水準が少ないことが望ましいと言えます。BCEも通信会社であり、基本的にはCFが安定しているはずなのですが、記事等によると競合とのせめぎあいや携帯の普及等で楽観できないようなことが記載されていました。また、前回のエントリーでも申し上げたように、目先の収益力予測は保守的に見積もらざるを得ず、KPMGさんも厳しい見方をされたようです。

 

ビジネスウイーク12月4日号「Private Equity's Year from Hell」

によりますと、今年に入って08年10月7日時点までに、39件の米国のLBO後の企業が経営破たんしてしまっていると記載があります(分母も相当あると思いますが)。

(ただし、仮に破綻してもファンド側は損をしないようなケースもあると糾弾しています。例えば、買収後一定期間経過後、借入金でもって特別配当を実施させる。配当額は当初のエクイティ出資額と同じであったとする。そうしますと、実損はありません。日本では、銀行がそんな資金使途に金を貸すことはちょっと考えにくく、特別配当スキームは難しそうです)

同誌では 「The Model is Broken」 とPEファンドの終焉を物語っています。日本だと破たん前に銀行からファンドに追加出資しろなどといわれそうです。

今のところ日本では破綻にいたった例はなさそうですが、今後はわかりませんし、いずれにせよ過剰レバレッジの修正時期にあることは間違いなさそうです。

 

日本でのポイントは レバレッジのかけすぎ、と言うより、過剰資本や過剰現金を溜め込むことの是非にあると思うのですが、MBO、LBOと言うのはそれらを解決する手段の一つとして機能していました。物言う株主も敵対的買収者の主張も同じことです。全てが否定されるようなことがあると、株式市場の活性化になりませんし、リスクテイクする意義がなくなってしまう閉塞感を感じます(まあ、今この時点では、目先の業績回復が何より大事なのですが)。







Last updated  2008/12/15 06:22:26 AM
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2008/12/11
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バイアウトファンド生活も半年近くたちました。少し近況を。

これまで、株券電子化に伴う駆け込みMBO(結局実現できず)が本格的に「プロセス」を踏んだ程度で、投資実行には至っておりません。3月までに何とか1件と思う反面、投資家からは「じっくりあせらず、落ちてくるナイフを拾うな」というお達しをいただいております。世間で騒がれる案件の持ち込みもありましたが見送っております。

提案活動も行っていますが、まあ、なかなか「そんなもんですか」という程度で、追いかける案件はつれない反応が多いです。

 

一方、期末に向けて、案件の持ち込みが増えつつある、という状況ですが、なんだか学習能力がないというか、意思決定が遅い企業が多いですね。グズグズしている間に株価が半値でこれでは売れない、なんてケースも結構あります。

案件は大きく大企業子会社・事業の売却とMBOに分かれます。

子会社・事業売却については、私はてっきり、前回の金融不況等で企業の意思決定は一歩先を行くのではないか?という仮説を立てていました。すなわち、ボロボロになるまで抱えていては、いざ売る時になった場合、ボロボロで売れなくなってしまっているケースをよく見たからです。

一方、銀行側はその辺の「学習能力」があるので、「ボロボロ」になる前に、事業や子会社売却を顧客に促すようです。当然、支援できない段階まで付き合いたくないですし、債務免除はコリゴリでしょうから。

世界に冠たる大企業クラスになると結構ドライに売却を検討するようですが、今の日本でもまだまだ、「売り飛ばす」というイメージが多いように印象を受けます。かと言って、「パッとしない親会社から独立して一旗揚げよう」という勢いのある子会社社長もあまり見かけません(いた場合でも、黒字会社であることが間違いないので親会社が嫌がる)。

要するに一部の「グローバル企業」以外は5年前と変わっていなさそうです。かなりの大企業の経営者も「決められない」ところが多いようです。

 

我々いわゆるバイアウトファンドに売却を考えるケースというのは「業務支配権」(経営でない)を取られない、IPOなどセカンドチャンスがありうる、経営の独立性を保持できる、というのがメリットのようです。しかしながら、すかいらーく事件以降はMBOも理解されにくくなって、説明に苦労いたします。一方、MBOした後の経営者や元オーナーなどからの言伝ベースの噂もあるようでして、関心のある経営者にとってはMBOというのは十分理解されています。

ただし、これも業種間で差が大きく、保守的な業界では、バイアウトファンドも村上ファンドも同じようなもので、そんなところに子会社等を売り飛ばすと経営陣の権力基盤に支障をきたすようなところもあると聞きました。

案件相談が比較的多いのは証券コード5000~6000番台、に属する業種ですが、まさに今、トヨタ・ホンダも下期は実質営業赤字だろう、シリコンサイクルの千尋の谷底 と言われる前代未聞の絶不況の中、誰もが10年3月期の見通しが立てられず、火中の栗 をどうするか悩ましいものです。

1年前だとたとえば 「トヨタ向け売上高が60%のTiea2部品メーカー」 と言えば、「おおっ」という感じだったのですが、今期の見込みEBITDAの8割が減価償却費で、毎年償却費と同額の設備投資、来期のEBITDAはすべて減価償却費だろう(要するに営業赤字)とか言われると、引いてしまう限りです。こういった感じだと、銀行も融資が難しく、「じゃあ11年3期は絶対キャッシュフローがプラスになるのか」という底打ち感もない状況です。

さらにこんな状況ですから、「設備投資を抑制しろ」、とか言おうものなら「ファンドの論理」と叩かれそう(トヨタは来年設備投資を大幅抑制すると言っていますが)。

半導体業界に至っては、「半導体」と聞いただけで、いや、聞かなかったことになりそうです。

 

火曜日の日経新聞にもファンドのM&Aが下火だと記事がありましたが、ファンドは基本的にレバレッジを掛けること、あるいは「チェンジオブコントロール」(経営支配権の異動を伴う場合は従前の銀行融資取引を一旦クリアにしてしまう)などがありますので、ペアになる銀行融資が厳格化されると、そもそも投資採算が合わなくなってしまうという宿命があります(第三者割当増資などを除く)。

簡単に申しますと、住宅ローンの自己資本の比率が、2年程度前なら購入物件の2割~3割でもOKだったのが、今では5割必要だと言われるようなものです。

まあ、EBITDA自体の視界不良(つまり将来の営業利益の見通しに確信が持てない)があるため、ファンドも銀行も会社の計画案をいくらか割り引いて考えてしまいますが、そのディスカウント度合いが大きくなってしまいます。たぶん、この辺が「貸し渋り」と世間で言われる最大のミスマッチなんでしょう。

現実には、事業リスクの増大化、銀行自身のクレジット余力低下、シンジケート団の組成余力がない、などリスクテイクをためらっているという点と、MBOの場合は最近も事件が多いため、「変な案件の支援に当行が絡んでいるとバツが悪い」 という雰囲気がシャルレ以降、一層強いそうです。

 

しかし、これから1、2年は絶好の買い場となることは間違いないので、好球必打で行けるといいなあ。それには、オバマ次期大統領の手腕にかかっているんですね、海の向こうの。オバマさんはアメリカのみならず、日本の救世主になるかもしれないなあ。

 







Last updated  2008/12/11 12:16:26 AM
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