セイコー「お客様相談室」の対応○ 半年ほど前に購入したセイコーメカニカル、sarb035の針がずれている事に最近気がついた。 買ったすぐにチェックしたつもりだったが、いいかげんだったようだ。 この機種は針の先がツンツンに尖っており余計な飾りがない分、その「針ズレ」は目立つ。 この「針ズレ」とは分針が12時の位置(つまり00分)に来たとき、時針がわずかに進んでいる・・という微妙なズレで、そのズレは約3分といったところ。 どんなものでも気にし始めると、どんどん気になってくるのが人情というもので、2週間ほど調整に出そうかどうかと迷った。 調整するほどでもない、という気もする。 ちょっとセイコーのサイトを覗いてみると「お客様相談室」というのがある。 ここでメールで調整依頼の手順をたずねてみると翌々日に返信が来た。 「着払い」で送ってくれというものだ。 以下がそのメール。 このページでは少しでも客観性を持たせるため、メールをそのまま掲載することにした。 このメールを読んでどう感じるかは、受け取る人次第である。 ------------------------ 『前略 5月31日付けWEBオンラインお問合せを拝見致しました。弊社製品をご愛用 いただき、またホームページをご利用いただきまして、ありがとうございます。 お問合せいただきました時計<6R15-00C0>につきまして、 ご購入早々ご迷惑をおかけいたしまして大変申し訳ございません。 時針が3分ほど早く正時に到達するという件に関しましては、 時針を12時の中心に合せた時の分針のずれは、時計の組み立て上、±3分は 規格の範囲内とさせていただいております。 ただ、気になるというご指摘がございますので、状況を確認させていただ いた上で、 完全に合わせることは難しいかとは存じますが、保証内修理で、できる範囲での 調整をさせていただければと存じます。 大変お手数ではございますが、時計を丁寧に梱包していただき、着払いの 宅配便等にて下記担当宛にお送りいただきますよう、お願い申し上げます。 保証書の同送をお願い申し上げます。 【時計をお送りいただく場合の住所】 〒105-8467 東京都港区芝浦1-2-1 セイコーウオッチ株式会社 お客様相談室:担当 == 以上、簡単ではございますが、ご案内申し上げます。ご検討いただければ 幸甚と存じます。 草々』 -------------------------- 保証期間内は金銭的な負担はない。 初めから商品に瑕疵があるのだから無料で直すのは当然だ。 問題は修理・または調整の対象となるかどうかである。 返信にも「3分以内のズレは規格の範囲内」みたいなことが書いてあり、僕も「そうかもな」とも思えた。 それでもダメもとで思い切って郵送してみることにした。 考えてみれば、この対応いかんでセイコーのアフターケアに関する評判の真偽がつかめる。 セイコーのアフターケアはネット上では上々の評判なのだ。 その情報はどれほど本当なのか、あるいはウソなのか・・・。 これは<顧客対応テスト>でもある。 郵送後に以下のようなメールが来た。 ---------------------- 『拝復 時下ますますご清祥の段お慶び申し上げます。 お送りいただきました時計でございますが、 本日無事到着いたしました。 できるだけご希望に添えるよう、調整をさせていただきます。 ご購入早々、ご不便をおかけして大変申し訳ございませんが、 しばらくお日にちを頂戴させていただければと存じます。 ご修理が完了いたしましたらご連絡させていただきます。 以上、簡単ではございますがご案内申し上げます。 敬具』 ---------------------- 「お客様相談室」いちいち丁寧で好感が持てる。 そして2週間足らず。 修理が終わった旨のメールが来た。 --------------------- 前略 早速でございますが、お預り致しております時計のご修理が完了致しましたので 本日、佐川急便にて発送させていただきます。 今回につきましては、針の位置ずれをできる範囲で調整をさせていただきました 。 お預かり時よりは改善されているかと存じますので、ご了承をお願い申し上げま す。 費用は発生しておりませんのでお受け取りのみをお願い申し上げます。 ご迷惑ご不便をおかけいたしまして大変申し訳ございませんでした。 重ねてお詫び申し上げます。 この度は弊社お客様相談室をご利用いただきまして、ありがとうございました。 今後とも弊社製品をご愛用いただければ幸甚と存じます。 以上、取急ぎご案内申し上げます。 草々 --------------------- このメールの翌日、sarb035は帰宅を果たした。 本体は修理済み用の箱に入っていた。 買ったときについていたオリジナルの箱は別に空で送られてきた。 さて、仕上がり具合を見てみる。 ・・・直っているじゃないか。 3分の誤差が「規格の範囲内」だかどうだか知らないが、ずれていた針は完全に直っていた。 こんなにちゃんと直せるのなら「規格の範囲」などともったいつけたことを言うべきではない。 おそらく直せなかったときの逃げ口上なのだろう。 出航させて正解だった。 ○ 以下、まとめさせていただく。 我が<SARB035>の旅 = <自宅(宅配便業者までは持ち込み)~「お客様相談室」~修理工場~「お客様相談室」~自宅> 全所要期間 =13日 6月6日 郵送。 6月18日 帰還。 【修理明細票】上の所要期間 = 9日 受付日6月9日 渡し日6月17日 郵送するための時間は「お客様相談室」を経由するため往復で4~6日余分に見ておかなければならないということになる。 この工場と言うのがかの有名な<雫石工場>だという噂もあるが、どこの工場で修理されたかは明細には記されていない。 僕個人はこの噂を疑っている。 ただ、満足のいくレベルに調整されて帰ってきたことだけは間違いない。 そしてそれで十分である。 修理には当然人の手が入るわけで、裏蓋を開けたり、分解したりする際どこかに傷が入るのではないか、針が汚れたりしないか、というのが若干心配だったが、杞憂に終わった。 細かくチェックしてみたが大丈夫だった。 気になっていた針ズレはきっちりと直っていた。 見事なものである。 調整内容を見ると針ズレの調整だけではなく防水検査も実施されているが、これは蓋を開けるのだから当然と言えば当然と言える。 ちょっとびっくりしたのは、パッキンが「交換」されていたことである。 海外を含めた他のメーカーでも頼みもしないのにパッキンを交換してくれるようなことがあるものなのだろうか? しかも、無料で・・・。 なにしろ腕時計を調整に出すことが生まれて初めての経験だったので他社との比較はできないが、考えていた以上の誠意ある対応ではあった。 産地偽装だの、製造年月日改ざんだの、企業のモラル低下に関するニュースばかり見させられる今日この頃にあって、セイコーのこの対応は清々しさを感じる。 <顧客対応テスト>の結果は 合~格! 「お客様相談室」は終始紳士的な対応であり、ネット上の評判がウソではないことがよくわかった。 経験は大事だ。 セイコーは作っている物に誇りを持つメーカーである。 このようにして感服した顧客はやがてグランドセイコーの購買者になるのかもしれない。 それも当然の成り行きと言える。 信用とはこのようにして地道に積み上げていくものだからだ。 「安物でもきっちり直して誠意を見せ、後々はグランドセイコーを買わせる。それこそがセイコーの戦略なのだ」と言われればそうなのだろう。 だとしても、だったらどうだというのだ? 信用のおける会社の製品を気持ちよく買うこと以上の買い物がこの世にあるのだろうか? 翻って、後先考えずブランドイメージだけで買う人は、一体どんな戦略に乗せられたのかを考えてみるとよい。 僕は喜んでセイコーの戦略に乗せられたいと思う。 蛇足ながら、機械式腕時計のアフターケア、サポートにおいてネット上で評判が良いのはセイコーとロレックスである。 スウォッチグループ(オメガ、ハミルトンなど)は概ね評判が悪い。 僕はオメガもハミルトンも所持しているので将来が心配である。 オメガのスピードマスターもセイコーに頼んで整備してもらおうかな。 (2009年6月19日) ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|