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マンハッタン狩猟蟹の逃げ場

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2006年11月27日
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カテゴリ:2006年11月読書
[1] 読書日記


 <アイリーンは地味な茶色い髪をしていた。
  いや、地味なのは髪の色ではなくて、彼女自身だった。
  アイリーンは茶色い髪の地味な女性で、どんなときでも規則に従った。
  矯正施設ならではのくだらない規則を馬鹿正直に守る彼女に何度いらいらさせられたことか>
 
 と、主人公が辛らつに過去を振り返り、評する、研修時代の仲間だった女性カウンセラー。
 彼女が、勤務先の刑務所で囚人と性交渉を持ち、クビになった上に、免許も剥奪されかかって
いるという。

 <(アイリーンは)安定した職をえて、一連の規則がつくりだす秩序ある世界に安定していた>

 そんな彼女がどうして?
 主人公マイケルは、到底信じることができない。
 <しかも、当人はまったく後悔していない>と言う。

 この謎を導入部にして、その後刑務所内での囚人殺害事件へと展開する、

  アンナ・ソルター 「囚人分析医」(ハヤカワ文庫)

 を読了。

 <厳重な監視体制化>で撲殺された幼児虐待犯。
 現場には凶器は残されておらず、そもそも刑務所という特殊な舞台ゆえに凶器になりうるもの
自体が存在しえない。
 犯行はどのようにして行われたのか?
 そして彼は何故殺されたのか?

 冒頭のホワイダニットと、続くこのハウダニットの二本の柱を軸にして、サブプロットを取り
込み、更なる広がりを見せていくミステリ。

 と締めくくってしまえば、海外作品にゴロゴロしてるミステリになりますが、実はこの作品の
魅力はこの謎部分では「無い」というのが、特色。

 実はこの作品の売りは、主人公のマイケルのドMぶり(作者のドS志向とも言う)。
 主人公のマイケルは、妊娠八ヶ月の女性心理学者。
 そんな体でありながら、刑務所での仕事を引き受けるわ、その内容と来たら、性犯罪者たちの
グループ療法だわ、挙句の果てに上記の事件の真相究明に乗り出し、危険な状況に次から次へと
飛び込むわで、読んでるこちらの方が彼女よりも腹の子の安否を気遣ってしまうプレイの数々。

 しかも、彼女は孤独を愛している為、一人での時間が失われる恋人(腹の子の父)との同居が
日々苦痛で仕方がない、という精神的なSMプレイも実行中。更に言えば、今妊娠しているとい
うことは、将来子供が生まれてくる事になり、そうなるとこれから先一人での時間は……、にも
気付かされてしまい新たなる苦悶をも背負い込みます。

 これに較べればミステリ的な要素は、断然インパクトに欠けます。


 とまあ、そんな本(だと思います)。
 筆者の死刑肯定論とも取れる場所も何箇所か在り。
 犯罪者の檻の中へ身を投じる妊婦に興味がある人はどうぞ。





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最終更新日  2006年11月27日 09時33分59秒
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