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マンハッタン狩猟蟹の逃げ場

2007年07月25日
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カテゴリ:2007年07月読書
[1] 読書日記


   <さらにしばらく喘ぐような呼吸を続けていたあとで、
    彼は目を閉じ……死体の乳首に唇を近づけ……その乳首にさらに唇を近づけ
    ……そして、ついに……それを口に含んだ。
    死んでしまった女性が声を立てることはないはずだった。
    けれど彼はその瞬間、リップグロスに光る女の口から漏れた、
    淫らで切なげな声を聞いた気がした


  最近マイブームが来ている作者につき、積み本崩しを敢行中。

   大石圭 「死人を恋う」(光文社文庫)

   

  を読了。

  ホラーというよりサスペンス。
  途中、カトリーヌ・アルレーの代表作のあるネタを使ってのドキドキ感の演出あり。
  そしてサスペンスの皮を被っているものの、実態は、ひきこもりだった青年の成長と恋愛
 を描いた小説。
  
  クリスマスイブの夜。自殺しようとやってきた山中で、練炭自殺をした少女の死体を手に
 入れた主人公がネクロフィリア(死体愛・死姦)となり、その後も死体を求め続ける物語。
 
  ギミック豊かな細やかなエピソードを積み上げて、積み上げて作られた世界が心地良い。
  そして、

   <そう。違う種類の生き物。
    たぶん、僕は本当は人間ではないのに、
    何かの間違いで、人間の姿に生まれてしまったのだ。
    男に生まれてくるべき人が女の姿で生まれてきてしまうということがあるように。
    あるいは、
    女に生まれてくるべき人が男の姿で生まれてきてしまうということがあるように。
    僕もまた、人間とは別の――たぶん、森の中でたった一匹で生きていく、
    ヤマネコのような獣に生まれてくるはずだったのに、
    何かの間違いがあって人間の形をして生れ落ちてしまったのだ。
    野生のヤマネコが人間の群れの中で、
    人間と同じように暮らすことは、
    どう考えても不可能なことだった


  と思いながら、ずっと生きている主人公のキャラクターも良い。
  親の死に対して、ショックであると同時に、

   <これからは僕の命は、僕だけのものなのだ!
    もう僕は誰に遠慮することもなく、いつでも好きな時に、
    この命を捨ててしまうことが許されるのだ!
    動物園の檻の中の捕獲されたヤマネコのような日々を、
    いつでも終わらせることができるのだ!
    僕はそう思った。
    それにしても……ほかの種の中で26年も、よく生きてきたものだ。
    自分でも感心してしまう

 
  と感じ、自殺をしようとやって来た山中で、集団自殺をしようとしている別の一団を
 見たことで、

   <もし、僕が今夜、この車の中で練炭を焚いて自殺したら、
    僕たちの死体を発見した人は僕をあの6人の仲間だと考えるかもしれない。
    たとえ死後のことであったとしても、そんなふうに思われるのは嫌だった。
    僕は群れでの生活に最後まで馴染むことができなかったのだから……
    だから生きていた時と同じように、死ぬ時もひとりきりがよかった


  と自殺を踏みとどまるのである。






最終更新日  2007年07月26日 04時49分41秒
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