ビール片手に

2007/10/12(金)19:35

ゆれる

映画(邦画)(6)

オダギリジョー主演の緊迫感みなぎる人間ドラマ。ある事件をきっかけに激しく揺れ動いていく兄弟の絆を、「蛇イチゴ」の西川美和監督が繊細に映し出す。 ストーリー 写真家として活躍する猛の兄で温厚な稔が、幼なじみの女性をつり橋から突き落とした容疑で逮捕された。やがて裁判が始まり、稔の意外な一面を垣間見た猛は、法廷で思いもよらないことを証言するのだった。 キャスト&スタッフ [監][脚]西川美和 [出]オダギリジョー 香川照之 伊武雅刀 新井浩文 真木よう子 蟹江敬三 木村祐一 田口トモロヲ 兄弟は、同じ家庭で生まれ育ち、両親の愛情を分かち合い、時には奪い合いぶつかり合い助け合いながら、揉まれ揉まれて一人の人間として成長してゆく。その過程には、身内ゆえの気安さ、何も語らなくても通じる共通の価値観や安堵感、互いを思いやる愛情も充分に育つのだが、血縁でも違う個性差に生まれる羨望や嫉妬心等、微妙で複雑な心理も育っていくのだと思う。 兄弟間に生れる「ゆれる」心理を、ろうそくの炎がかすかに揺れるほどの繊細な心の動きを微塵も逃さず、丁寧に描き出している秀作だった。 オダギリジョーや香川照之の渾身の演技、派手さは無いが地に足の着いた冷静なカメラワーク・映画に添った独特の音楽で脇を固め、土台のしっかりとした見応えのある映画だと感心した。 脚本も西川美和監督によるものだが、よく練れていて構成もしっかりしている。 キム兄の検察官役も個性的で、ジリジリじわじわと被疑者を責めていく様子に緊迫感があり、この配役は成功。また伊武雅刀と蟹江敬三兄弟間の確執もstoryと重ね合わせて見れる作りで効果的。 真木よう子は登場シーンは最初だけで少ないものの、二人の男性の前でゆれる女心をうまくつかみ演じていたと思う。 「つりばし」、「ゆれる」というキーワードを効果的に生かし、最後まで事件の真相を明かさず、観る者の興味を惹きつけたままエンディングに持っていく、面白い映画だった。

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