テーマ:DVD映画鑑賞(13598)
カテゴリ:映画(洋画)
カンヌ映画祭でパルムドールに輝いたケン・ローチ監督作品。 1920年代のアイルランドを舞台に、祖国の独立運動に身を投じた兄弟の愛憎を叙情的に映し出す。 ストーリー 1920年、独立を求めるアイルランドと英国の間に戦いが勃発。兄弟テディとデミアンは義勇軍に参加し、激戦に身を投じる。やがて和平交渉を迎えるが、今度は条約をめぐって、支持派と反支持派の内戦が起きる。 キャスト&スタッフ [監]ケン・ローチ [出]キリアン・マーフィ ポードリック・ディレーニー リーアム・カニンガム 緑豊かな美しい大地アイルランドで、祖国独立の夢を求め、時代の流れに翻弄された人々の苦悩と哀しみの歴史に、やりきれない気持ちになった。 イギリス王国支配下で、アイルランド人への集会禁止令やその他厳しい弾圧により、命を落とす者が続出し、英国の悪徳政策の為に、領主に地代も払えず常に餓えに苦しむ農民の暮らし。 人間として当然の権利を求めようとする人々が、現状打破の為にゲリラ活動に身を投じても、これを咎めることは誰にも出来ないだろう。ごく普通の庶民が簡素な平服姿で、苦労して集めた銃を手にし、武装した強固な英国軍への抵抗をはじめる姿が痛々しかった。 その彼らを後方で支えるのは、女性や年端の行かぬ子供たちである。 時には命懸けで、兵や銃器を家に匿い、機密情報を自転車で運び、重要な役割を果たしている。 英国軍へ抵抗を行っている時は、流血も悲劇でありながらも、まだ「まし」であった。英国を相手に戦う時は、「祖国の独立と貧しい人々の解放」という明確な目的があった。本当に辛いのは、条約後の内戦に入った時である。支持派と不支持派の議論は袋小路に入り、どちらの立場にも「正論」なのだろうが、両者決裂し歪んだ道へ進まざるを得なくなる。兄弟も思想が対立し、個人の力ではどうしようもない立場に立たされる。デミアンが、密告の罪を犯した、幼き頃からの友人を処刑するシーン「人として一線を越えてしまった。」の言葉、最後の兄と交わす場面は、強く心に刻まれ印象的。キリアン・マーフィはアイルランド・コーク州出身でその生い立ちから生まれた思想と持ち前の感性の鋭さを発揮し、素晴らしい演技だったと思う。 占領と支配・その後の内戦。この不幸の連鎖は、現在も世界のどこかで繰り返される。この映画は、アイルランド.英国の問題に留まらず、ケン・ローチ監督が世界へ向けた一つのメッセージなのだろう。 伝統歌(アイリッシュ・トラッド)の名曲『The wind that shakes the barley』の物悲しい女性の歌声が、この映画の登場人物のやるせない思いをよく現していて、胸を打たれた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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これって傑作だと思います。でも、アイルランドに興味がある日本人がどれだけいるかと思うと日本では受けなくて当然の映画でした。ジェイムズ・ジョイスの小説などにもアイルランド独立の歴史が延々と描かれていて、知ってはいたつもりですが、こういった映画による映像で見るとまた違いますね。ケン・ローチの描こうとした普遍性を感じ取れる想像力を若い世代から奪わないようにしなくては・・と思った作品です。
(March 11, 2008 05:39:24 AM)
tarashiさん
コメントいただき、有難うございます。 映画館でご覧になったのですね。羨ましいです。 残念ながら、最寄りの映画館では上映されず、観る機会を今まで逃していました。 ずっしりと重いけれど、いい映画でした。鑑賞後に、疼くような胸の痛みが残り、しばらく後を引きずっちゃいましたが。若い世代の方にも、是非とも味わってもらいたい作品だと、私も感じました。 ジェイムズ・ジョイスの本は、学生時代に挑戦したものの、あまりの難解さに撃沈してしまった情けない私(ToT)。 tarashiさんの読書&映画鑑賞の幅の広さに、ブログ拝見する度、驚かされつつ刺激をいただいています。 (March 13, 2008 12:05:34 AM) |
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