カテゴリ:小川洋子
小川洋子の「ブラフマンの埋葬」を、読んだ。
著者は、掴みどころがない不思議な空間を描くのが上手いと思う。私は、彼女の無国籍で独特な匂いのする世界に浸りながら、本を読むのが好きだ。軽く飲んで、半分まどろみながらベッドで本を開くと、一気にその世界に浸れる。繊細で硬質な文章も心地良く、数時間は居心地のいい読書を保証される。「薬指の標本」に出てくる洋館も、猥雑な俗世間と切り離された閑静な場所に佇み、読者の想像を様々に掻き立たせてくれた。登場人物や小道具等、設定の妙に心を奪われた。 ブラフマンの埋葬も、ミステリアスな浮遊感に溢れる作品だった。ブラフマンの正体は、最後まで明かされない。ヒントは森の動物と言うことだけ。でも、彼の日常生活・生態・しぐさ・動き・感情まで、手に取るように詳しく描写され、その愛くるしくいじらしい姿に癒された。「古代墓地」と言う設定も、面白い。死者を葬る場所での恋人同士の逢瀬や、名も亡き人が遺した家族写真に想いを馳せるところ。緑色の泉、オリーブ林、ラベンダーの棺。死者と生者の境界線も曖昧な、不思議な世界にどっぷりと浸れた。心地良い時間だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
March 19, 2008 05:58:50 PM
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