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ビール片手に

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絲山秋子

July 19, 2007
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カテゴリ:絲山秋子


「勤労感謝の日」 と 「沖で待つ」 二編収録。

「沖で待つ」は文藝春秋で以前に一度読んでいるが、今回単行本を手にとり読み返してみた。

「勤労感謝の日」は、失業中の36歳の主人公、恭子がご近所のお節介なおばさんの勧めで、勤労感謝の日にお見合いをする話。
好みとかけ離れた男性が現れ、お互いがお互いを値踏みする微妙な雰囲気の中、探るように会話が進む。恭子の胸の内が、赤裸々に明かされ興味深い。本音をぶちまけている。同姓しかも同年代の方にはかなり共感でき、うけそうな内容だ。

デビュー作、イッツオンリートーク路線の絲山節がここでも炸裂して、小気味良い。
恭子がたまらなくなりお見合いの席を逃げ出した後、後輩の水谷と呑みながら交わす会話がvividで面白い。テンポよく会話でストーリーを引っ張っていく文体だ。主人公が抱えるピリピリした感情の起伏をうまく表現していて、読ませてくれる。

「沖で待つ」は、入社後同じ福岡に配属され、哀楽をともにした同期太っちゃんと及川の友情・同志愛を描いたもの。芥川賞受賞作なのでご存知の方も多いので、あらすじは割愛。
読みながら、自分の同期を次々に思い浮かべた。
入社後、緊張を抱えながら新入社員研修を受けた仲間。研修施設に泊りがけで勉強に行き、学生気分を根こそぎ引っこ抜かれながら、鍛え上げられたこと。その後各々適性が判断され、運命の配属先が決まり、そこからは皆バラバラで職場の怖い先輩から1からたたきこまれた仕事の数々。失敗談の数々。仕事に慣れるにつれ次第に距離感ができ離れたり、でもまた集まって飲んだり、時には一緒に旅したり。

同期の絆は深く、本音をぶつけ合える気のおけない大切な関係だ。でも、同時にライバルでもあったりする。本音を晒けだしながらも、どこか相手と自分を比較したり、反対に警戒する部分もあるのではないだろうか?

太ちゃんと及川の関係は、おそらく性別をも超越した理想系だと思う。
自分に何かあった時、残しておくとまずいものを綺麗に処分してくれるよう頼める相手って、そう簡単には見つからないような気がする。こんな事、夫婦や家族には、身近すぎて頼めない。と私も思う。(彼らは、絶対見るなというと、見てしまうに違いないと確信する。それが、身内の人間の心理。)

人間長く生きているうちに、なんやかんや隠しておきたいものが出てくるはず。私もゼロではない。日記とか昔の手紙とか捨て切れずに取っているものがあって、これが人目に晒されるのはご免!って類のものが、存在する。誰に頼もうか?いや、そこまで信頼できる人が見つからない内は、自分で思い切って処分しないといけないかな?なんて、本気で考える今日この頃である。

太っちゃんの「しゃっくりノイズ」と最終ページの余白に永遠の別れを予感し、不覚にも涙してしまった。

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Last updated  July 19, 2007 03:41:14 PM
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July 15, 2007
カテゴリ:絲山秋子


「女に対してすることは、三つしかないのよ。」そうクレアはある時いった。
「女を愛するか、女のために苦しむか、女を文学に変えてしまうか、それだけなのよ。」                           ~ ロレンス・ダレル 「ジュスティーヌ」



「袋小路の男」 「小田切孝の言い分」「アーリオ オーリオ」の三篇収録されている。

まず、「袋小路の男」。
袋小路に住む、つかみどころのない男 小田切孝に、高校時代に憧れ惚れてしまった主人公日向子の一人称、恋物語。

「あなたは、・・・」「あなたは、・・・」と繰り返し出て来るフレーズの魔力に、やられてしまう。
自分も一緒に一途な片思いをしているような、また過去の似たような経験を蘇らせる感じになる。
日向子からすると、小田切は確信犯的に思わせぶりの態度をとりつづけるが、最後の一線は越えさせてくれないもどかしさがある。
でも、男を袋小路には追い詰めることはしない、という女の強さ、気高さ、潔さ、そして、切なさ。

続編の「小田切孝の言い分」では、男の側からの視点が、多少の温度差の違いを持って描かれている。男女の立場の違い、考え方・発想の相違が、両方読むことによって、浮き上がってくる。
あぶりだし、みたいに。
なんだか、読んでいてまどろっこしいような、逆にそれが、妙に心地良いようなへんてこな感じ。ふたりの姿に何を見出すかは、銘々に委ねられているように感じる。川端康成賞受賞作。

女性と男性との物事の見方は、確かに微妙に違うんだろうな。
同じであっても、面白くもなんともないし。。。違うことに、互いに魅力を感じつつ、しかし、時にはそれが溝になったりもする。  なんとも、不思議な関係。

最後の数行で、暖かく心地よい余韻を残しながら、エンディングを迎える。

「アーリオ オーリオ」は、中学生の美由と叔父の哲の、手紙のやり取りを描いた爽やかな小説。
携帯のメールでもなく、あえて手紙。
書いた日と受け取る日に時間の差が発生する手紙という手段。
それを星の光に見立てて、自分の想いを綴る、無垢な少女の姿に、心が澄まされる。
昼下がり涼しい縁側近くの畳の上で昼寝をするみたいに穏やかで気持ちよく、爽やかなお話でした。

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Last updated  July 15, 2007 02:53:12 PM
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July 7, 2007
カテゴリ:絲山秋子


精神病棟から車で逃亡する若者の暑い夏を描いた青春小説。
博多弁どっぷりの花ちゃんが主人公。彼女は、躁鬱病を患い、幻聴・幻覚に悩まされている。

~亜麻布二十エレは上位一着に値する。~
というわけのわからない幻聴に、繰り返し襲われる。

病を、読者も読みながら疑似体験するような感覚に陥る。

強い薬の副作用と外界から遮断され息の詰まる牢獄のような病棟から、逃亡することを決意する。連れに、名古屋出身なのに名古屋弁を拒否する気弱な茶髪の会社員なごやんを誘って。おんぼろルーチェ(マツダ)に乗り込み、行く当てのない放浪の旅に出る。

行く先々の壮大な自然を観て感動し、野宿し、温泉に入り、名物を食べ、川で溺れ、時には泥棒なんかしたりして、迷走を続ける二人。
二人の抱える病の現実は重い。が、不思議と暗さはなく、かといって、病を美化することもなく淡々とクールに描かれる。そこに、著者自身の病の経験が重なって見え、胸に迫ってくる。

なごやんも鬱病を病んでいるけど、元は一流大学卒のエリートサラリーマン。会話には彼の博識が滲み出るし、何故発病したかの過去が気になったりもする。
花ちゃんにしても、発病の詳しい経過が省かれ、詳細はつかめないのだが、精神病を患いそれが原因で友達も減り、恋人を失い、人生の正道路線から道を踏み外してしまった二人はとても良く似ている。同じ荷を背負った若者同士が、寄り添うように助け合って旅する。彼らの感性が、繊細で優しすぎるがゆえの結果なのか?

そして、九州を縦断するように走り続け、二人が辿りついた先に見つけたものは........。
読後感がとても爽やかで、楽しいロードノベルだった。

九州のおだやかな自然や風景、人物像・方言が魅力的に描かれていて、地元を愛する人にはたまらない作品だろうと思った。

クルマが趣味の著者は、執筆にあたって主人公たちの辿った九州縦断ルートを自分でも全走破したらしい。
巻末についている地図を見て、私も車で同じ様に走りたくなった。
自分の置かれている状況から、逃げ出したくなる時がある。一個一個はそんなに重くないのだが、背中にしょってる荷物(?責任)みたいなのがまとめてずしりと感じる時がある。現実逃避して、いきなり旅に出られたらいいなと思ったり。

九州は大分と熊本を何年か前に旅した。雄大な自然が美しい絵画のようで、別府、阿蘇、久住高原、やまなみハイウェイは爽快で気持ちよかった。緑が目に眩しくて、別天地に居るような気がした。
沢歩きしたり、湧き水を飲んだり(名水が多かった)、素朴な味の団子汁すすったり、温泉巡り、本当に心癒される楽しい旅だった。宿泊はキャンプ場やコテージだったけど、それで充分。星も綺麗で露天風呂に入りながら、遠くの町の打ち上げ花火を見た。
その時は、ツーリングライダーも沢山見掛けた。
忙しくて乗る時間もなく、維持も大変で単車は手放してしまったけど、また機会あったら、九州をツーリングしたいと思う。でも、もう若くないし、乗れなくなってるかもしれない、な。

この小説は、映画化され近々公開されるそうで、そちらも楽しみ!

余談だが、絲山作品には、音楽が良く出てくる。パンクだったりあまりメジャーじゃない(って、私が知らないだけかもしれないが、汗)バンドだったりする。
「The ピーズ」って、どんな音楽なんだろう? 作中何度も出てくるけど、歌詞だけでメロディーがわからなくて聴きたくてたまらなかった。映画ではそれも聴けるかな?



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Last updated  July 7, 2007 03:37:19 PM
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