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ビール片手に

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南木佳士

January 31, 2008
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カテゴリ:南木佳士


心を病んだ医者が、友人の開業する海沿いの病院で、その家族と過ごす内に徐々に癒されてゆく情景が、朴訥な印象の語り口で綴られる。
主人公に、自分の姿を投影したと思われる私小説だった。

人の命を預かり、病を癒す手助けをする医者が、実はいかに無力であるかという一面を見たように思う。治る見込みの無い末期がん患者や、病む人の繊細な心理に寄り添って、治療を行っていく臨床医の重圧が、文面からずっしりと伝わってくる。

最初の方で、発病の経緯を綴っているが、コントロール出来ない自分への歯痒さ、その脱力感まで吐露する作業は、辛くなかったのだろうか? 切り捨てたくなる自己と真正面に向き合おうとする姿は、痛々しい。著者の崩れそうになる繊細な精神も見てとれたが、それと同時に、作家としての彼の図太さ・逞しさも感じ取れる。

友人家族も、それぞれがいろいろな悩みを抱えている。
人は、生活信条や人生航路の舵取りの多くを、育った環境や家族の思想に影響されながら生きていることを改めて感じる。それを思うと、自分の子育てにも自ずと身が引き締まるような気がした。

娘の千絵ちゃんとの会話が、清々しい清涼剤のよう。そのせいか読後感は、穏やかで爽やかだった。

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Last updated  January 31, 2008 07:59:02 PM
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September 8, 2007
カテゴリ:南木佳士
阿弥陀堂だより
ISBN 4-16-315600-3 C0093 文藝春秋刊

「阿弥陀堂だより」を読んだ。
しっとりとしたいい本だった。心に染み入るような重みのある数々の言葉と出会い、胸を打たれた。
今、この時期にこの本と出会い読めた幸運も、あわせて嬉しく思う。

都会での生活に乗り損ねてしまった中年夫婦が、夫の故郷である信州・谷中村の集落へ戻り、それまでの自分の人生を見つめ直し、大自然の懐に抱かれながら、村の人々との交流を通して、新たな心の拠り所を掴み、再出発していく物語。

村で亡くなった先人達の精霊を守る阿弥陀堂の堂守である「おうめ婆さん」の生き様が、秀逸だった。
彼女の言葉は、誠にシンプルだが本質をしっかりと掴んでいる。長い年月を生きていきて、自然と身につけたのであろう彼女独自の達観した思想。自然に生かされているという謙虚な姿勢。存在自体が神々しい。

その「おうめ婆さん」の言葉を丁寧に拾い、広報誌に載せる仕事をしている「小百合ちゃん」の存在。彼女は若くして体を病んではいるが、ふと見せる年齢を超越した精神性の高さに驚かされる。
おうめ婆さんの原石のような言葉を、ひとつひとつ丹念に拾い出し、磨き、その数珠の珠を繋ぐかのように、丁寧に文章として織り成す作業を、自身の生きがいにもしているようだった。
病を背負って生きていく彼女の人生には、「おうめ婆さん」の生き様・思想・言葉はどんな薬よりも効力が有りそうだ。

東京の先端医療で性根尽きるまで働き抜き、自身の流産を機に、精神の平静を失ってしまった女医の美智子。彼女もおうめ婆さんとの触れ合いや小百合ちゃんの治療、大自然の中での心優しき夫との暮らしを通じ、徐々に癒されていく。
主人公である夫の「孝夫」の生い立ちも含め、美智子との出会い、六川村へ戻ることになった経緯も無理なく、説得力ある筋で組み立てられている。その過程にも、淡い恋心、清らかで美しい手紙のやり取り・医療と向き合う医師の苦悩・人間的成長・文学への思い等、数々のエッセンスが凝縮されていて、充分に読み応えがあった。
孝夫も失いかけた文学への想いを、故郷での様々な交流の中で掴み取り、確かな足取りで進んでいけそうな予感を残し、エンディングへ向かう。

著者の六川集落の雄大な自然をめぐる様々な四季折々の描写は、日本の原風景を筆で見事に再現し、イメージの喚起力に富んでいる。目前にせまる美しい山々や田舎での厳しい暮らしは、読みながらにして鮮やかな映像となる。読者の想像を充分に膨らませてくれる、見事な筆力だった。

おうめ婆さん・美智子・小百合ちゃん、三世代の女性の生き方や、孝夫と美智子夫婦の男女の関係性の微妙な変化も、省略せず丁寧に描き、興味深かった。
命を宿し育み次世代へ残すという偉業を生まれながらに担う宿命の女性という「性」は、やはり、どんな時も粘り強くたくましいと感じた。

「生病老死」という人生避けて通れない永遠のテーマを織り込みながらも、人との触れ合いの中に悩める人間の再生を見出し、優しく温かな余韻を残す素晴らしい作品だった。

映画もあるようなので、こちらも観てみたいと思います。

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Last updated  October 8, 2007 04:10:01 PM
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