わたくし率 イン 歯ー、または世界 川上未映子
来年1月末にあるステップアップ試験の勉強で、いまひとつ読書が進んでいない。夏頃から週末ごとに受験対策講座にも通い、貴重な休日の時間を費やしてきたので、出来るなら受験一回で合格したいと考えている。その日の仕事・家事を終えてから寝るまでの時間は、私にとって大切な読書の時間だが、それを今勉強に充てているので、読書が捗らないのはどうしようもないことなのだが。ちょうどこの冬、高校受験をする子も我が家にいるので、親子揃って受験モードに入れて好都合ではある。試験でもないと、根っからののんびり屋の私は真面目に勉強などしない性質なので、これも良いことなのかも?娘に時々発破を掛けつつ、自分にも同じく叱咤激励しつつの毎日を送っている。そんな中で、気分転換に、少しずつ読み進めていたものもあった。わたくし率 イン 歯ー、または世界 川上未映子わたくし率イン歯ー、または世界ラップ調の独特な韻をふんだ文章を多用し、「私とは、一体何であるか?」という己の存在を問う異色の作品端正な日本語とは一線を画する、個性的な言い回しの数々。日本語の音をリズミカルに使い、作者ならではの瑞々しい感性を込めた言葉の羅列に圧倒される。誰もが当たり前と思っていることに、疑問を持ち、異なる感覚を持ち、他者に異論を唱えるのは勇気が要ること。自分の中に育つ秘められた想い・思考を、オリジナルな方法で表現する大胆さ、チャレンジ精神に驚かされる。多分、私がこの本を書店で見かけても、買わなかっただろう。図書館でたまたま見つけ、手に取り読んでみたが、ちょっと型破りで、毒があって面白かった。規制の枠から少々はみ出し気味の私小説だが、「私、わたくし、わたし、」という自己認識を何に求めるか?何をもって自分を感じるか?を始終問い続けることで、既存の認識を問いただし考え直すきっかけを与えてくれる。これが意外にも、哲学的思考の啓発にもなり、いい気分転換になる。