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ビール片手に

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朔立木

February 24, 2008
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カテゴリ:朔立木
一般人が知りえない裁判官の実態を暴く、架空の小説。法律家と二足の草鞋を履く、覆面作家である著者の文壇デビュー作。

例えばここに、ある好色な裁判官が、いたとしよう。
彼が、職務中にこっそり隠れて書いている複数の交際女性宛て書簡を、暴露することで、この小説は、展開する。
読者は、彼のプライバシーてんこ盛りの手紙を読むことで、裁判官という特殊な職務に就く人種の傾向と素性を、徐々につかんでいく形である。

職務上、厳しく行動制限されている裁判官達の、閉鎖的で異様な生活実態が、浮き彫りになる。
出世の為に、上か横しか見ない「ヒラメ裁判官」と言われる、彼らの頭の中身とは?
最高裁事務当局の好む裁判をしないと、すぐさま左遷、出世コースからはじかれ、
コースから外れた人間への、あからさまな給与差別や、根深いイジメが行われる世界。
赴任先の裁判官官舎では、夫人同士が、夫の昇進や役職により格付けされる事情。
人を裁くという特殊な職務の性質上、ストレスを抱え、心を病む裁判官が多い実態等。

恐らく、脚色の為に、デフォルメした表現も、盛り込まれているのかもしれない。
しかし、その部分を差し引きながら、読み進めるうちに、こみ上げて来る心境は、複雑だった。

裁判所において、人が人を裁く仕事。何よりも、公明正大さが、求められる職務である。
しかし、(小説では)その裏側で、国側有利の判決を外部から見えない部分で操作誘導されるなど、驚愕の事実が潜む可能性を示唆する。判決により、今後の人生が大きく左右される人間が、多くいるのに。

日本には、最高裁判所裁判官国民審査があり、国民投票により裁判官を罷免できる制度があるが、国民審査で罷免が不罷免を上回らない(過半数以上)限り、罷免されることはない。よって、余程でない限り、裁判官は罷免されにくい状態になっている。

情けない話だが、私は、裁判官国民審査時、発表される裁判官の名前を見ても、全くの知識不足で、どんな裁判をしどんな判決を下した人物なのかも、よくわからなかった。いい加減に「×」をつける事もできないし、公布資料を読んだりネットで調べてみるが、裁判官の過去の判決記録を見ても、素人には内容を充分に理解しがたく、これをどう判断していいかも分からなかった。仕方なく無記入で出してしまっている。(無記入は、全員信任になってしまう。)

刑事訴訟では、有罪率は99.89%で、異常に高く(冤罪が絶対ないとは言い切れない)、国を相手とする住民訴訟の住民側敗訴率も、異様に高いのが、この国の現状。
その裏に潜む数々の問題点を提示しつつ、著者は、国民にも司法側にも、意識変革の必要性があることを、小説でもって、教えてくれる。

女性へのくどき文句が、手紙の大部分を占め、少々うざったい感じもあったが、骨の部分は、興味をそそられ、面白く読める本だった。
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Last updated  February 25, 2008 05:59:31 PM
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February 20, 2008
カテゴリ:朔立木


実際にあった事件をベースに描かれた短編、四篇収録。
「針」
医療過誤は、あってはならない許されないもの。しかし、現実には、不運にも発生してしまい、患者も関係者も、以後の人生を大きく狂わすことになる。
その医療ミスの陰には、患者の知らない所で病院側に隠される驚愕の事実が潜んでいることに気付く。医療訴訟では、責任や罪を被ること恐れ、上手く逃げきる医師もいれば、すべての罪を押し付けられる者もいるのだろう。
「鏡」
援助交際に走る少女。何故、自分の家に帰れなくなったか?報道記事では、読み取ることの出来ない、彼女の孤独に踏み込み、光をあてる。彼女の背景にある悲しい事実に胸が痛んだ。
「スターバートマーテル」
大阪の小学校で起きた児童連続殺人事件が、ベースになっている。犯人に「別れた妻への復習の為にあの犯罪をやった。」と言われた元妻の手記。
事件発生当時、新聞でその発言を読み、私は、何故、その妻だけに彼がそんなに執着したのか、理由が分からなかった。
今回、これを読んで、その謎が少し薄まったような気がした。(でも、私には、あの悲惨な犯行を起こした彼の動機が、未だに理解できない。)
元妻の立場でこの事件を振り返ると、彼女自身も地獄のような人生の修羅場を踏んで来たはずである。死刑執行を待つ元夫に、拒絶ではなく、一時は同じ糧を共にした同士として唯一理解しようとする彼女の人間愛に、驚くとともに、胸が締めつけらた。彼女の今後の人生に、幸多いことを願いたい。
「ディアローグ」
柳田邦男氏の「犠牲」は、随分前に読んだ記憶がある。そこには描かれなかった事実が、詳細に描かれ、彼の苦悩の深さを改めて思い知った。妻の弟から寄せられた手紙に、涙が止まらなかった。ノンフィクション作家(この小説では劇作家として描かれるが)の悲しい性なのか、家族の内情まで暴露することに意義はあるのか?という指摘に、答えを出せず一人苦悩する作家の姿があった。執筆活動の「光」と「闇」を同時に見たような気がする。書くことは、功罪両方を含んでいるのだろう。

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Last updated  February 20, 2008 06:35:12 PM
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February 18, 2008
カテゴリ:朔立木


「終の信託」

治癒する見込みのない重度の喘息患者・江木は、長期に渡る療養生活の中で、主治医である折井綾乃との間に、深い友情と信頼を得るようになる。
彼は、人生の終焉時に苦しむことのないよう、綾乃に尊厳死を託す。江木の容態が悪化し、綾乃は、約束を果たす為に、家族の了承のもと、無駄な延命治療を中止し安らかな死へ導こうとするが、予測外の出来事が発生。患者の苦しみを除去する為に、筋弛緩剤を投与するが、その行為が、後々、思わぬ方向へと進んでいく..........。

安楽死と現代医療事情、それに伴う訴訟問題や責任の在り方、検察官による被疑者(医師)への取調の様子等が、リアルな情況描写により再現されている。

江木と綾乃の間には、他者には入る隙のない程に厚い信頼感情が存在したと思われるのに、検察での彼女への取り調べは、冷酷極まりない。
この検察官は、始終高圧的な態度で、被疑者(綾乃)を困惑・衰弱させ、精神的窮地に立たせてから、自分の仕事の有利になるように働く。それは、医療訴訟問題における真の姿を見つめる為というより、周囲から己の実務上の有能さを認めさせ、今後の出世に有利になるような私欲も、多分に含まれている。

この件に関する綾乃の詳細な情況説明は、ほぼ阻止&無視され、検察官の頭で、彼の操る言葉で作られた箇条書きのような調書を作成され、巧に心理操作された後、疲労困憊した被疑者は、有無を言わず署名させられる。

この検察官への、嫌悪感は読み進めるとじわじわと高まっていくのだが、それが自分の中で臨界点に達した時、私は怒りと同時に、言いようのない恐怖を感じた。

これが、今の司法・警察・検察の内部実情に近いものなのだとすると、つくづく怖ろしいと。これは、小説であって、すべてが事実でないとしても、現状はかなり酷似していると思われる。もし何らかの事情で被疑者となった自分を、守ってくれるもののあまりの少なさに唖然とするだろう。
ましてや、これが、自分に全く非のない冤罪だとしたら、その心理的ショックは、どれ位のものだろう?

小説では、検察での取調べ&逮捕の時点で、話が終わり、その後の展開が省かれていて、物足りなかった。彼女が、今後どのように弁護され、裁きを受けるのか、続きが読みたかった。

「よっくんは今」

愛するがゆえに、恋人を殺めてしまった若い女性被疑者への取調べの様子を再現。
若く、美人ゆえにセクハラまがいの取調べを受ける被疑者。犯罪を犯していたとしても、取調べ中の人間には、人権はないのか?と、激しい憤りを感じた。
ペンネームでは判断できなかったが、これを読んで、著者は、女性だと確信した。男性取調べ官から受ける屈辱を非常に巧妙に表現していて、これは、男性にはなかなか描けない文章。非力で体力の劣る女性が、威圧感ある男性取調官と密室で過ごさないといけない時間の恐怖を、擬似体験させられ、恐れ慄いた。犯罪者扱いされる上に、性差別的侮辱まで同時に受ける可能性のある女性被疑者の立場に、様々な思いを巡らせてしまう。

面白かったので、この作家の作品をもっと読んでみようと思う。

話は飛ぶが、先日の鳩山法相の「冤罪と呼ぶべきではない。」発言は、全国の高検や地検の責任者を一同に集めた会議での発言だった。違法捜査によるでっち上げ、元被告達を一年近く拘留し、起訴までした検察の対応をきっぱりと問うべき立場の人間が、何故か検察に機嫌取るような格好で言い放った言葉であり、その偏見にみちた不見識さに、ほとほとあきれた。

自白偏重の日本の犯罪捜査を、見直さないといけないと思う。あるべき姿の取調べとその透明化、合理的な科学的捜査、旧体制を引きずる法制度の見直しを進めない限り、今後も、この国から冤罪はなくならないだろう。
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Last updated  February 19, 2008 06:24:33 PM
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