015626 ランダム
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F.O.B

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第十三話 暴走




~薫side~







「準備はいいか?」

氷翠が冷静に尋ねる。



「ああ。いつでもこい」

俺は身構える。勿論、それに意味があるとは思えないが、気休めにはなるだろう。



強制的に能力を暴走させる――――。それがどんな現象を引き起こすか分からない。





「胸、特に心臓辺りだ。そこに力を集めろ」

氷翠は俺の胸に手を翳している。



翔は既に攻撃の構えを取っている。迷っている暇はない。



「――――――」



俺は言われた通りに力を集めてみた。



何か気持ちの悪いものが、背中をぞわぞわと這いずり回る感覚がする。



それと同時に、とてつもない不安がこみ上げてくる。



意識が途絶えたのは、そのすぐ後だった。







~氷翠side~





ひとまずは成功だ。能力を『暴走』させることを成功と言うのは、何とも皮肉な表現だがな。



「恐らく、意識はもうないのだろうな」



薫の瞳は既に焦点が合っていない。暴走の代償だ。



少しの間なら自分の意思で行動できるかと思ったが、やはりまだ無理か。





「さぁ、行け。お前の底力を見せてもらうぞ」

私は薫の胸に翳した手を、ゆっくりと握った。



それと同時に、薫の周囲の空気が急激に冷たくなってゆく。



制御できていない力が体から溢れ出して、勝手に周りを凍らせている。





「うああああああああ!!」





薫が猛スピードで翔へ突進する。私の目でも追うのやっとだ。



翔に斬りかかった時の動きも、いつもよりも的確、かつ迅速。



完全に薫のペースだ。圧倒しているわけではないが、主導権は薫にある。



このままなら、五分以内には決着がつくだろう。



問題は――――





それまで薫の体があの状態に耐えられるか、だ。







~翔side~





信じられない。これほどの力があったとは。



僕よりも僅かにだが完全に格上。しかもまだちゃんと能力を使っていない。



まさか体術や剣術だけでここまでとは、少し買い被っていたようだ。





「蓮華!!」

僕は蓮華を呼ぶ。少し癪だが、ここで時間を浪費している場合じゃない。



一旦距離を取るために、鍔迫り合いからバックステップしようとする。



だが薫はそれを読んでいたらしい。完璧なタイミングで僕の足を払った。




「くっ」





「マスター!!」





蓮華が薫に攻撃しようとするが、間に合わない。



薫は刀を振り下ろしている。それは不思議と、今までのどんな斬撃よりも遅く感じられた。



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