2005.06.01-162005年06月01日夏じゃん 6月っていったら夏。おいおいもう来ちゃったのかい、夏。まだちょっと早いぜ。でもせっかく来たんならパーティーの準備を手伝ってもらおうか、って何言ってんだワタシ。 考えてみれば同じ感想を3ヶ月ごとに繰り返しているんですよね、もう40回以上も。9月は「えっもう秋?」って思うし、12月は「うそっもう冬?」って驚くし、3月は「げげっ春とな?」って絶句するし。いつもいつも。 ふと思ったんですけど、「もう夏?」と「ようやく夏?」だったらどっちがいいですかね? ワタシは前者ですね。「ようやく夏がきたか」なんて思う日が来るとしたら、自分の生活がとんでもなく慌しくなっているんでしょうか。処理速度が人の10倍(当社比)とか。だとしたらうれしくないですね。ワタシは季節に取り残されているくらいでいいです。季節を追い越したりしたくないです。 夏といえば、『夏の扉』って小説もありましたね。ハインラインでしたっけ?また読みたいなあ。夏の扉を開けて、ワタシをどこか連れていってって感じです(ちょっと違う)。 <追記> 悠々先生のコメントで小説のタイトルが間違っていたことが判明。そうでした。「へ」が抜けてましたね。でも「ジンジャエール」って、そうでしたっけ?ワタシが持っていたのはこの表紙の本↓(ワタシは猫がこっちを向いていたように記憶していたんですが、実物は違いました)もしかして版が違うと絵も違うのかな? 2005年06月02日 全力中年 直立するレッサーパンダの映像を見て、「なめ猫」を思い出した人。 海岸で発見された記憶喪失の男のニュースを聞いて、「若人あきら」を思い出した人。 政治家の「クールビズ」ルックを見て、「省エネルック」(を着用した羽田元首相)を思い出した人。 あなたも中年ですね。 2005年06月03日 囲い込み いまワタシはインターネットの広告屋に籍を置いているわけですが、当然クライアントの販売促進のお手伝いをしているわけで、その中で必ず出てくる言葉に「囲い込み」があります。ワタシはこの言葉が嫌で嫌でしょうがありません。まったくテメエら人を何だと思ってるんだ!仮にもお客に対してよくそんな家畜に使うような言葉を使えるな!と、呆れてしまいます。でもそういうところにサービス提供者の本音は見事に表れているわけで。 「囲い込み」というのは要するに、あなたも持っているポイントカードであり、サービスクーポンであり、インターネットからの会員登録であったりするわけです。そういう姑息な手段を通じてお客に他の店に行きにくくしようとする発想。少なくともお客に商品やサービスで満足を提供しようという姿勢の産物ではありません。だからそういう失礼な言葉を平気で使えるんでしょう。お客の顔を想像していないから。 まあ言葉の問題だけではないですけどね。ポイントもクーポンも、その道のプロたる企業が「結局ウチもヨソも大して変らないから、それならお得なウチに来てよ」って言ってるようなものです。恥ずかしくないんですかね? プロならば商品や(店頭の)サービスでお客を呼びなさいよ。 で、いろんなポイントを流通させるビジネスというものがまたありまして、販促の世界ではもう巨大な収益システムなんです。いろんなサービス企業は「囲い込み」をしなければ生き残れないという仕組みに「囲い込まれ」ているわけでして。しかしそんなことでモノのコストがかさむなんてほんと馬鹿げてます。そう思いませんか? 2005年06月04日 書き込み屋 そういう商売があるんですよ。 たとえば自分のブログにだれかから書き込みがあって、書いた人のブログやどこかのサイトにリンクしていれば、何となくクリックしてしまうでしょ?(ワタシはしないけど)その効果はけっこう馬鹿にならないというか、下手な広告を打つよりもホームページへのアクセスを増やすには効果があったりするんです。これはネット広告屋として言いますが事実です。 聞くところによると、商品開発の担当者や営業マンで「うちの商品はいいですよ!」みたいなことを自分で書く人もいるようですが、独力ではやはり限界があります。っていうか真っ昼間からそんなことやってたら課長に叱られるし。そういうわけで「書き込み代行」なるサービスが出てきたのはまあ必然といえば必然。そういう業者さんにお金を払えば、指定した文面をひたすら書き込んでくれるわけです。 それともうひとつ「ブログ代行」ってのもあるんですよ。ブログそのものを立ち上げて毎日更新してくれるという。アリさんも取り上げていましたが、会社が「これは当社の公認ブログです」みたいにきちんと打ち出すものもあれば、人を雇って書かせるものの第三者的な視点で会社や商品を語る広告的なブログもあります。やはり背景にはブログがいまだに検索エンジンに強いっていうこともあるのでしょう。検索をかけたら上位にけっこう来ますからね。 しかしブログなんてのはいわゆる「記事広告」みたいなもので、効果は間接的にしか表れないと思いますけどね。効果を目に見える形で上げたいなら、すでに個人的に人気のあるカリスマブロガーに頼むのが早いでしょう。楽天なら「ミズノンノ」さんとか「ミドル英二」さんとか。彼らにはできたらそういう依頼は受けないでほしいですね。 そんなわけで、ワタシの近未来予想。(半分真剣、半分冗談) 1)主婦の自宅パートで「書き込み代行」が「テープライター」をしのぐ人気となる。 2)「書き込み代行」教室や「ブログ代行」通信講座などが開講され、それに関連する詐欺事件なども発生する。 3)「公認ブログ士」がインターネット業界の資格として誕生する。 4)インターネットへの広告的書き込みに関して規制する法案が審議される。 ちなみにワタシは、最近ある社長のブログ立ち上げを手伝いました。個人的に仲がいいので、仕事抜きで。まず一日目だけワタシが書いてあげて、マイページを開き「明日からはこうすればいいですよ」と要領を教えてあげたんです。すると、こんなことを言われました。 「いいから舎路人さんずっと書いてよ。内容は任せるし、お金は出すから」 そんなもん、自分の日記だってあるのに他人のなんて書けますか! というわけで、これ外注に出そうと思うんですけどやりたい人いる? 2005年06月05日 今年初めて聞いた言葉 外部スタッフとしてお世話になっている投資顧問事務所から、仕事に関してうれしい申し出が。投資関連のサイトを一つ立ち上げて、管理をワタシに任せてもらえるとのこと。やったね! ただし、実際の着手には少し時間がかかりそう。情報収集も必要だし、デザインやコンテンツも納得のいくものを作りたいですからね。 「いつごろを目途に立ち上げます?」とワタシが問うと、社長は「そやな、まあ年内やな」とこともなげに。ワタシは一応了解した顔をしましたが、そこまで悠長な仕事をするつもりはありません。頭の中では「すぐに準備に入れば秋には形になるな」と勝手に計算。こういうことは早いほどいいんです。 しかし今年初めて聞きました「年内」という言葉。来月はもう今年のセカンドハーフなんだなあ。 2005年06月06日 ある日突然 自転車に乗れるようになった瞬間って覚えているかな? あれって不思議と思わないかい? いつの間にか「乗れて」いるでしょ。 一段一段階段を上ってゴールにたどりついたっていう感じではなくて、何度も何度もこけてこけてこけまくって、経験値が「一杯」になったら突然ゴールしているっていう感じで。もちろん経験の「器」がすぐ一杯になるか、なかなか一杯にならないか、容量には個人差があるんだろうけどね。 同じようなことは仕事にも言えると思うんだ。君は営業だけど、毎日毎日セールスをやっているのに、まだほとんど注文が取れていないっていう現状だよね。それは経験を蓄積している段階だからじゃないかな。 間違ったやりかたをしているとか、まだ未熟なくせに手を抜いたりとか、そういうことをしていたら永遠にゴールには着けないと思う。でも話を聞いたところでは、君はまずまずいい仕事をしているじゃないか。ちゃんと頭を使って企画を作っているし、フットワークも悪くない。小さな約束もちゃんと守っている。それでも結果が出ていないというのは、自転車でいえば「きちんとこけて」いるわけだ。 大丈夫、君が蒔いた種は必ず芽を出す。芽が出る直前がいちばん苦しい、…ってこれはどこかで見た本の受け売り(笑)。でもすごく言えてると思う。 相手のあることだから科学的な法則があてはまるのかどうか分からないけれど、でもこの話をするとたくさんの人が「そうそう」ってうなづいてくれるんだよ、ほんとに。なんだか分からないけど、ある日突然仕事が回り始めたっていう。 だから、もう少し頑張ってみよう。せめてあと半年。 それでだめだったら、…そのとき考えようか。いっしょに。 (セミナーで知り合った社会人一年生F君へ) 2005年06月07日 わかる人だけわかればいい日記 クライアントのオフィスに行ったら、面談いただくはずの先方の社長が出先から戻るのが遅れているとのこと。15分ほど待ってほしいという伝言をいただき、ほかに予定もなかったワタシは「いいすよ」。有線でポップスのインスト曲が流れるロビーでぽけーっとしていると、女性の事務員さんが冷たい麦茶を持ってきてくれました。 するとそのとき、BGMが「いとしのエリー」になったんです。事務員さんは初対面だったんですが、時間をもてあましていたワタシは何となく声をかけたんですよ。 「サザンかあ、たしかもうデビューして25年以上になるんですよね。あなたが生まれた頃じゃないですか」 「そうですね」 「ワタシはもう中学生でした」 「サザンお好きなんですか?」 「うん、でも当時は洋楽ばっかし聞いてたかな」 「たとえば?」 「ツェッペリンとかパープルとか。知らないでしょ」 「知ってますよ。私はその辺ならクリームとか好きですし」 「いいっ?クリームを知ってるってそりゃすごい」 「一番詳しいのはパンクとかその後のニューウェーブですけど」 「うそっ。いや、失礼だけどそうは見えないなあ」 その事務員さんのイメージは一言でいえば「堅そう」、高校の図書委員がそのまま社会人になったという感じの。化粧っ気もなくて服装も地味そのもの、ルックスから好きなミュージシャンを当てろと言われたら「さだまさし」が順当なような女性なんです。それがパンクときたんですから、驚きました。 「じゃあピストルズとかクラッシュとか知ってる?」 「はい、ジャムなんかも好きです」 「ジャム!いいねいいね!スタイル・カウンシルになってからも悪くはないけど、やっぱパンク時代の神経質でとんがった音のほうがいい」 「最後はちょっと凝りすぎって感じでしたね」 「ほかにどんなのが好き?」 「テレビジョンとか」 「テレビジョン!『マーキームーン』かい!」 「持ってます。あとベルベットアンダーグラウンド」 「おお!じゃあルー・リードも好きでしょう?」 「はい」 「ラモーンズは?」 「まあまあ」 「ストラングラーズ」 「いいですね」 「デビッド・ボウイは『ヒーローズ』までと思ってるでしょう?」 「よく分かりますね」 「エルビス・コステロ」 「嫌いじゃないって感じ」 「うーん、じゃあちょっと角度を変えてドアーズ」 「大好き」 「ニューオーダー」 「あ、あれはちょっと」 「暗ければいいってわけじゃないんだ。U2は?」 「いまいち」 「なんとなく方向性が分かってきたぞ。日本のは?」 「古いけど村八分とか」 「村八分!君は年いくつだ!」 「あと非常階段」 「漫才師じゃないよね!じゃあ作家の町田康が昔やってた…」 「INUですね」 「あわわわ」 「裸のラリーズ」 「うぐぐ」 「スターリン」 「…まさかとは思うけど頭脳警察は?」 「発禁になったセカンド持ってます」 「パンタいいよねー」 「いいですよねー。でも驚きました」 「何が?」 「舎路人さんって見た目地味なのにパンクとか詳しいから」 そりゃこっちのセリフだよ! 2005年06月08日 今だけしか咲かない花 図書館で借りていた(っていつもだけど)森村誠一著『作家の条件』読了。 なんというか、…しんどかった。何がどうとはっきり説明できないのですが、分かりにくい文章じゃないのに何かギクシャクした違和感を感じるんです。クセのある作家の作品でも真ん中くらいまで読めばたいてい慣れるものですが、この本は結局「入れない」まま最後まで。なんだろうこの徒労感は。 たぶん、なんですけどやはりもう時代とずれてしまっているんじゃないかと。 文体が古臭いというのではなくて、作家の感覚が。たぶん著者も時代に遅れまいと日々情報収集しているんでしょうが、いくら新しいネタを拾ってもそれを整理する頭の中の抽斗が古いままなんじゃないかと。 たとえば携帯電話についてこんなことを言うんです。「そもそも電話など通話のための道具であるのに、これほどまでの機能を搭載する必要があるのか。あれは高価な玩具である」みたいな。まあワタシも同意できないわけではないですが、いまどきそんなことを大真面目に言って批判するのもちょっと。 でも少しは面白い部分もあって、それは著者のホテルマン時代の思い出話。著者が作家になる前に某ホテルに勤めていたのは有名な話ですが、やはりいちばん感受性が豊かだった時期の記憶はイキイキと残っているのでしょう。 ただ、面白いとはいえホテルの舞台裏をバラすというのはホテルマンとしてやってはいけないことのように思うんですけどねえ、元同業者として。 2005年06月09日 クールですか? クールビズ!どうですか皆さんの職場は。 「スーツにネクタイ」のオヤジ定番スタイルからネクタイをとっただけ、っていうのはいかにも締まらない格好ですが、この軽装の目的は「冷房を控えなさい」ってことですから、まあ大目に見るべきしょう。女の子がへそや背中まで丸出しにして、しかもジーンズにはボロボロに穴を開けて風通しを良くするなど工夫して頑張っているのですから、男も軽装で涼しくいきましょう。 しかし勘違いしている人もいるようで、ノータイ・ノージャケを奨励しているくせに冷房をガンガンかけている会社もあるんです。意味ないじゃん!それならちゃんとした格好をしなさいよ! 思わぬとばっちりを受けたのはネクタイ業者のようで、新聞などでは「こっちは生活かかってんだよ!」と抗議の声も。たしかに父の日が目前なのに、今の状況ではネクタイの売れ行きが悪くなるのは間違いないところでしょうから。 しかしなあ、そういうことを言うのって恥ずかしいと思うんですけどワタシなら。しょせん泣き言じゃん。ちょっと逆風が吹いたらギャーギャーと。「私ら自分では何も考えられませんねん」って言ってるようなもんじゃないですか。 暑くたってビジネスマンは仕事しなきゃいけないわけだし、裸で働くわけにもいかないし、それを少しでも快適にするような装いを提案すればいいじゃない。言い古されたフレーズですが「変化はチャンス」、変化とうまく付き合える企業でないと、そのうちもっと大きな波に呑まれて潰れますよ。 こじつけっぽいけど吉野家を見習ったらどうよ。もう一年以上も牛丼なしで頑張っているわけでしょう。あれに比べりゃ、ねえ。ネクタイ業者ってネクタイしか売っていないわけじゃないでしょうに。被害者意識から生まれてくるものなんて何もありゃしません。 そうだ、アヴリル・ラヴィーンをイメージキャラにしたらどう? 彼女みたいにタンクトップの上にネクタイってのは涼しげでいいじゃん。ダメなら「こまわり君」を復活させるとか。ダメ? それと今回の件でやっぱり引っ張り出されたのが「省エネルック」の羽田元首相。ある新聞によると、羽田氏は「省エネルックデビュー」して以来、夏はあの服装をずっと通しているんだとか。いや、ご立派。ちょっと尊敬してしまいました。スーパークール!(by 新庄) <追記> ralphさんの書き込みを見てひらめきましたよ!ネクタイ業界は宴会用の「はちまきとしてカッコイイネクタイ」を作ればいいんです!通常のやつはくくりにくいとか変なシワがつくとか問題がありますから(実体験)、これを解決して欲しいですね。 2005年06月10日 記録の重圧 あまり詳しくないんですが、サッカーのワールドカップ出場が決まったんだそうですね。良かったですね。サポーターの人は休暇の申請やチケットの確保でこれからが大変なんでしょうけど。 そういうわけで、今日はスポーツの話を書きます。 ワタシはさほど本格的にスポーツをやったことがないので「1勝の重み」とか「記録の重圧」とかいうものをほとんど知らないのですが、記録をかけて試合にのぞんだことが一度だけあります。 小学生のときなんですけどね。ワタシの小学校ではマラソン大会があったんです。4年生以上全員参加、当然順位も発表されます。 6年生のときのこと、ワタシのクラスにはなぜかスポーツ万能の人気者が揃っていまして、男子でクサカ君、女子でカンベさんはともに優勝候補として学年レベルで熱い注目を浴びていました。でもワタシのライバルは彼らではありません。 ワタシは「ある筋」(オタク系)から奇妙な視線を送られていました。 実はワタシ、4年、5年と2年連続で「56位」だったんです。これで6年も56位になったとしたら、おそらく破られることのないアンビリバボーな記録です。これは努力では手に入れられない神がかり的な記録です。でしょ? 当日、ワタシは入念にコンディションを整えてマラソンにのぞみました。調子が良すぎても悪すぎてもいけません。できるだけ去年、おととしと同じような体調を再現しようと考えました。もちろん56位狙いです。 コースは学校の周囲の住宅街をたしか3週するんだったかな? 最初はトップ集団の後ろあたりにつけていたのですが、これでは早すぎるかなと2週目は少しペースを落としました。「よっしゃ、いい感じで抜かれていくぞ」と順位を落としながらニヤケるワタシ。前に何人いるかなど数えることは不可能ですが、このままいけばもしかして大記録達成も夢じゃないと、妙なときめきに包まれていました。 そしてゴール。コースから校庭に戻ると先生が順位を書いた札を手渡してくれます。ドキドキしながら自分の札を受け取ると、63位! 抜かれすぎたか! まあでもいいか、と思い直して教室に帰ると、担任の先生が怖い顔をしてワタシを手招きしています。 「お前、走りながらニヤニヤしてただろ。なんで一生懸命走らない? 順位は悪くないが、そういうイイカゲンなことではそのうち痛い目を見るぞ!」 頭ごなしに叱りつけられ、大記録を狙っていたんですとは言えないワタシでした。 2005年06月11日 作家ごっこの代金 神戸で税理士をやっている義理の兄に税金のことで電話相談。身内に税理士がいるとほんと助かります。あとは弁護士が欲しいなあ。姉ちゃんコイツともし別れたら弁護士と再婚してね、とかムチャ言ってはいけません。 そのありがたい義兄にひと通りの相談を終えて受話器を置こうとしたところ、ほとんど仕事以外に話題のない(世話になっといてひどいねワタシも)義兄が珍しく話を振ってきました。 「実は僕の友人の奥さんが近いうちに作家デビューするらしいんですわ。よかったら本を買って上げてくださいよ。『○○○○』っていうタイトルらしいです」 「へえ、そりゃすごい。文芸雑誌の賞でも取ったんですか?」 「何か公募関係の本があって、それに載ってた賞に応募したらしいですよ」 「(嫌な予感)…で、もしかして、賞は取れなかったけど編集者から電話がかかってきて、見所があるから費用半額負担で自費出版しませんか?とかいう話じゃないですか?」 「うわ、さすが舎路人さんよう知ってはりますね。でも自費出版やないって奥さんははっきり言うてましたよ」 「協力出版?それとも共同出版ですか」 「…たしか協力出版とか」 「自費出版だったら自己満足で終わり。でも協力出版ならその出版社が全国の書店に自分の本を売ってくれるとか、奥さんは言ってませんでしたか」 「い、言ってました」 「それ詐欺ですよ」 「えっ、でもでもでも(口癖)自費出版も協力出版も同じような費用らしいんです。そやったら少しでも売れる可能性のあるほうを選んだほうが得やないですか?」 「売るのは出版社じゃなくて本屋でしょ。書店の棚に置ける本は限られているんです。有名な作家の本でも本屋で梱包を開けられもせずに返本されるのが多いんですよ。だれが無名の新人作家の本なんか置きますか。『編集王』ってまんが知ってますか?」 「いいえ」 「知ってるわけないか。まあいいです。その出版社も本を印刷して本屋に送ってはくれるでしょう。でも間違いなく返本100%です。きれいなまま帰ってきますよ。出版社は困りません。最初から売れないことを見越しての費用を作者に払わせてるんです」 「そうなんや…」 「しかも、です。自費出版なら印刷された本は全部自分のもの。でも協力出版だったら最初に献本される数冊以外は自分のものじゃないんです。だから知り合いに自分の本をあげようと思ったら返本されたのを買わなきゃいけない。自分の本をですよ!」 「怒鳴らなくたっていいじゃないか…(泣きそう)」 「すみません。でももっと言います。結局売れる本は作者が自費で買って知り合いに配る分だけ。お金を払って自分の本を売っているようなもんです。これなら自費出版のほうが100倍マシでしょうに。あ、大事なことを聞くの忘れてました。半額負担ってどのくらいですか?」 「200万円って言うてました」 「まあ相場ですね。出版社はこの200万円と作者が本を引き取る代金で二重に儲けられるわけです。さらに悪質な出版社は、200万円用意できない作者にクレジット会社を紹介してくれるんですけどね。大丈夫、本が売れたらすぐ返せますとか言って」 「あ、そうみたい…」 「アホか!アンタそこまで話を聞いてて詐欺と分からなかったのか!クレジット会社とグルの業者にまともな会社なんかあるわけないだろうが!税理士でゼニカネの世界に生きてるくせに、世間知らずにもほどがあるぞ!」 「もう、怒鳴らないでよう…」 とにかく義兄にはその「作家デビュー間近」の奥さんにワタシが話したことを伝えるように言いました。これは出版詐欺の典型的な手口で、ネットでもしょっちゅう被害談が出ています。なのにいまだに引っかかる人間がいるんです。 笑える話もあって、その出版社の「協力出版」には別料金のオプションで「ブログサービス」なんてのがあるそうです。作者のブログを立ち上げてくれるんだとか。自分でブログも作れないヤツが作家なんて目指すなよな…。 しかしその「作家デビュー間近」の奥さん、原稿のゲラチェックはもちろん装丁やオビや後書きなんかの打ち合わせで、いま人生でもっとも充実した時間を過ごしている(義兄談)のだそう。なんだかなあ、それだけの精神的満足を与えているなら出版社の「担当編集者」は、ある意味「いい仕事」をしているのかも知れません。打ち合わせはすべて電話とメールで、奥さんは編集者の顔を見たこともないそうですが。本格作家ごっこの代金200万円ナリ。そう思えばこれは詐欺ではないのかも。 奥さんは今、2作目の構想に入っているのだそうです。 2005年06月12日 うそつきが好きよ(と言ってほしい) 昨日の話です。 しとつく雨の中、仕事(これは本業か副業かきわどい)の打ち合わせでノートパソコンと資料をかついで大阪のはずれにある某企業へ。最近オープンした大型レンタルビデオ店の集客がテーマです。 集まったのはワタシを入れて6人。最近では珍しく全員が35歳以上の男という「化石メンバー」によるプロジェクトとなりました。やはりオトナは手際がいいですね。決めるべきことをテキパキと決めて、1時間弱で打ち合わせ終了。で、まだ昼間だというのに居酒屋に移動して二次会となりました。 酒場での話題はいろいろだったのですが、盛り上がったのが「女性に言われたくない言葉」。発端は最近激しい夫婦喧嘩をしたというリーダー格のE専務。 「女房がねえ、僕は家のことにまったく無責任やって言うんです。何言うとんじゃい、僕の稼ぎで食ってるくせに。そりゃ任せっきりなところはぎょうさんあるけど『無責任だけは撤回しろ』って譲らんかったわけよ」 一同「うんうん」。 というわけで、「女性にこれだけは言われたくない言葉」を一人ずつあげていくことになったのでした。酒場でもどことなくブレーンストーミング風になるのがこのオヤジメンバーの特徴です。 E専務の部下W君「やっぱ『バカ』ですかね。大阪人は『アホ』は平気なんですが」 一同「分かる分かる」 印刷業K氏「うーん、オレは『ブサイク』かな」 一同「おおー(コメントしにくいニュアンスを含む)」 店舗デザイナーM氏「家内に『マザコン』と言われたのはショックでした」 一同「なるほど」 コピーライターJ氏「やはり『ヘタクソ』でしょう」 一同「ギャハハハ!」 で、最後にワタシ。最後に落としてくれるのでは、という全員の期待に満ちた視線を感じながら言いました。 「『うそつき』かな」 一同「・・・・・・」 あれ?別に盛り下げるつもりはなかったんですけど? みんな身に覚えがあるんですね、きっと…。 というわけで、女性の皆様には参考になったでしょうか。 2005年06月13日 父と病気と県民性 気にしていることがあると、それに関するニュースを自然に拾ってしまうことがあるもので、こんな新聞記事を見つけてしまいました。 「徳島県、糖尿病死亡率12年続き全国1位」 ワタシの両親は徳島県人なんですが、父親は立派な(というのもヘンですが)糖尿病患者として通院治療を受けています。先日は突然胸が苦しくなって救急車で運ばれたりしましたが、それも糖尿に起因するものだとか。 じゃあ糖尿病になりやすい県民性は何かというと、記事は「マイカー依存率の高さ」だと説明しています。ちょっとした距離の移動にも車を使ってしまうので運動不足になりやすいと。 うわあ、うちの父親、まさにそうです。持っているものは使わないと損、が人生の基本姿勢なんですよ。車を使ったらガソリンを消費するのですから決して得はしていないのに、でも「使わないのはもったいない」と考えるんです。本当のケチなら使うことをためらうと思うんですが、うちの父親はケチなのか何なのか、息子のワタシにも理解不能です。 しかし興味深いのは、父親は高校を卒業したときから徳島を離れており、車の免許をとったのはたしか40歳前後。そのときは大阪に住んで20年近くたっています。 何が言いたいのかというと、徳島県人の「マイカー依存」というものを父親はほとんどその目で見ていないということです。それなのにきっちり県民性に沿った病気を患うとは、もしかしたら父親の奇怪なしみったれは地域の文化に起因するというよりも遺伝子レベルに刻み込まれているのではないかと。どうですか悠々先生? とにかく甘党で運動不足だとこうなる、という見本があるわけですから、ワタシは同じ目に遭わないように注意するのみ。まあ甘党はしっかり受け継いでしまっていますが、マイカーは持っていませんし、電車の駅の一つや二つは歩くタイプですから運動不足は当面大丈夫でしょうが。 それと関係ないですが最近ニョーボも病気を患ってしまい、お金がかかるのなんの。そんなわけで間食しないどころか一日一食の日もあるし、糖尿より先に栄養失調にならないか心配です。 2005年06月16日 そんな夜のこと その頃、ワタシはワンルームマンションに住んでいました。 洋間で、8畳くらいの広さだったかな。 借りたときはそこそこ広いと思ったんですが、 タンスやら書棚やらテレビやらを置いたら、 寝返りを打てば何かに触れるほどのスペースしか残りませんでした。 (昔はパソコンも大きかったし) 当時「彼女」だった女房は、 休日に遊びに来ては「アンタは部屋と一体化してるなあ」と 呆れていました。まるで飛行機の操縦席だと。 ある冬の夜、彼女から電話がかかってきました。 「今からそっちに行くから自転車で迎えに来て」と。 (「自動車」でないのが泣かせます) ワタシのマンションから彼女の実家まで電車で3駅。 自転車で二人乗りしても大した距離ではありませんが、 いつも電車で来るのにどうしたのかと不思議に思いつつ、 ワタシはママチャリで彼女の実家に向かいました。 彼女はダッフルコートを着て、家の前に立っていました。 足元には大きなスポーツバッグとリュックサックが。 「何それ?」 ワタシの質問には答えず、彼女はリュックを自転車の前かごに突っ込み、 バッグを胸に抱えて荷台にまたがりました。 「いいよ、行って」 「この荷物は?」 「着替えとか」 「え?」 「とりあえず冬物だけ。夏物とか本とかはおいおい運んでもらう」 「・・・操縦席みたいな部屋に?」 「うれしくないの?」 「う、うれしいであります」 「いいから早く。親は今寝てるから」 「大事な一人娘を奪って逃げる」という大役にいきなり抜擢されて ワタシは少しうろたえました。 「ご両親に一言ご挨拶を」という大人の分別が頭の中を一瞬よぎりましたが 「これがもし映画で自分が脚本家なら、ここでそんなセリフは入れないな」 という無茶苦茶な理屈で却下。 あとは野となれ山となれ、とばかりに自転車のペダルを踏み込みました。 しかし、大きな荷物を乗せて二人乗りしているというのに、 全然ペダルの重さを感じなかったですね。 そのまま世界一周でもできそうなくらい(ものの喩えです)。 もし「世界の幸福な男ランキング」があったら、 その夜のワタシはかなり上位にランクされたんじゃないかと思います。 それからワタシと彼女の実質的な新婚生活が始まりました。 意外に彼女の親からの文句はなかったのですが、ワタシの親からは 「非常識」のそしりを受け、マンションの管理人からは「入居時の約束 (同居不可)を守らないなら出て行ってもらう」と退去を迫られました。 「常識人」時代のワタシには耐えられない状況でしたが、でも平気でした。 平気な自分に驚いていました。 恋愛は「常識人」の価値基準を狂わせる危険な薬です。 実際、その年に世間で起こった出来事をワタシはほとんど知りません。 彼女しか見ていなかったですから。 一緒に住み始めて、いろんなものを手に入れ、 いろんなものを失いました。 ずいぶん遠くに来たような気もするし、 同じところをぐるぐる回っているような気もします。 どう思うよ?おい、あ、寝たか。 入院している女房を見舞った後、 二人が始まった夜のことを思い出しながらうちに帰りました。 ・・・・・・・・ 出張先からこっそり書き込みました。 久しぶりの出張は少し長くなりそうです。 しばらく日記はお休みしますが、皆様お元気で。 ジュリアオージェ facebook ジュリアオージェツイッター Twitter |