ごっちゃんのマンション管理MEMO

マンション管理組合とペット問題

マンション管理組合とペット問題

  1.はじめに 集合住宅におけるペット飼育について

 最近の少子・高齢化にともないペットを飼育する方が増えています。
新築分譲マンションでも、最近は「ペット可」をうたった物件が出始めて
います。
 しかし、既存のマンションでは、依然としてペット禁止が多く、飼育者のマナ
ーが、問題になるケースがあります。
 国土交通省公表の「平成15年度マンション総合調査結果」によりますと、
約半数の管理組合でペット飼育に関するトラブルが生じており、前回調査より
微増しています。

<管理組合の犬・猫の飼育ルールについて>

 ・調査対象 1030管理組合(公共・民間合算、完成年度を考慮せず)
   飼育禁止             58.3%
   条件を限定して認めている   27.9%
   全面的に認めている       2.6%
     規則はない           11.3%

   ・調査対象 106管理組合(完成年度が平成12年以降を対象)
   飼育禁止             36.8%
   条件を限定して認めている   53.8%
   全面的に認めている       5.7%
   規則はない            3.8%

 ・調査対象 4763人の区分所有者(犬、猫の飼育に関する評価)
   管理規約や使用細則で禁止すべき        25.0%
   管理規約や使用細則で規制した上で認めるべき 71,8%
   各居住者従者の自由である            3.2%


2.ペット飼育に伴う問題点

(1)動物嫌悪者の存在  

 動物は触れるのはもちろん見るのも嫌という人もいます。動物が嫌いな人に
とっては、動物の鳴き声、臭気、汚物等に厳しい目を向けがちです。また、
「動物の毛」が原因となるアレルギー体質の人は、動物を避
けざるを得ません。

(2)鳴き声による騒音  

 ペットの鳴き声は夜間はもちろん日中でも乳児や、病気療養中、夜間勤務明
けの人達の就寝の妨げとなります。

(3)臭 気  

 ペットの糞、尿などの臭気は、風に乗って臭気が近隣の住戸内にただよって
くる、下階の風呂場での糞、尿の臭気が換気孔を伝わって上階に侵入してくる
などです。住戸内への臭気の侵入は、被害を受ける側では、ほとんど防ぎえな
い性質のものです。

(4)共用部分の汚れ、損傷等  

 エレベーター内、エレベーターホール、階段室、廊下等の共用部分や、マン
ション内の公園の砂場にペットの糞や尿がたれ流され、放置されていると、臭
気はもちろん、見た目にも大変イメージダウンになり
ます。
また散歩にでていた犬についていた泥などが廊下やエレベーターに落ちている
ことも共用部分の汚れの一因となります。

 ベランダなどの共用部分でブラッシングをすると、抜け毛が飛散するため、
他の居住者にとっては大変不衛生なことです。
またベランダの糞や尿を排水口に水で流すなどで腐食が加速するなどは、共用
部分への損傷にあたります。

(5)人に感染するペット病  

 ペットとして飼っている犬、猫、小鳥などの病気が人間に感染する
場合があります。特にマンションのように機密性の高い密閉された空間で人と
ペットが絶えず接触している状態は、ペット病に感染しやすい環境にあります。

(6)咬む事故 

3.ペット飼育の効用


(1)絆  

 人間の心に潤いを与えてくれ、それに触れることによって、人間の心がやす
らぐといいます。生きものを飼うことによって、人間に失われている自然との
ふれあいを実現させているのが動物です。
その人間と動物の深い粋が生れた結果、多くの人が動物を家族の一員としてい
ます。

(2)盲導犬  

 目の不自由な人にとっては、盲導犬は自分の体の一部(目)そのものといえ
ます。厳しい訓練を受けた犬ですから、他のペットと同様に取扱うことは、不
適切ですが、盲導犬であっても、周囲に迷惑を及ぼさないような配慮は当然求
められます。

(3)情操教育に寄与

 ペットを飼うことは子供がゆたかな感情、心を持つための情操教育に大きく
寄与するとともに、家族がペットを愛情をもって飼育することにより家庭をな
ごやかにするので人間生活の精神面で役立ちます。

(4)孤独のストレス解消  

 ペットは、人の心をなごませ、生きる喜びを与えることから、孤独に苦しむ
高齢者や身障者、離婚や死別による単身者に対して、孤独に起因するストレス
を解消させる効果もあります。

(5)病気の治療  

 欧米では、かなり以前から、老人ホーム、病院、特に子供のための病院、さ
らには精神病院、刑務所などで、動物の世話を通して病気の治療、リハビリ、
心の病気治療の効果を上げているといわれています。


4.マンションでのペット飼育の考え方

(1)区分所有法による使用する権利  

 分譲マンションの各住戸は、区分所有権の目的である建物の部分(専有部分)
ですから、区分所有者は、原則としてこの区分所有権に基づき、自分の住
戸を自由に使用、収益あるいは処分する権利を有しています。

(2)共同の利益に反する行為の禁止  

 しかし、各区分所有者が、自分の住戸で自由勝手な使用を行うことになれば、
騒音、悪臭等が発生するなどして、近隣者が快適に暮らすことができず、
ひいてはマンションの共同生活全般がおびやかされる事態も考えられます。

 他人に迷惑を及ぼす行為(ニューサンス)は、区分所有法第6条第1項で定め
ている「建物の管理又は使用に関し」、「区分所有者の共同の利益に反する行
為」に該当するものであり、その行為の程度により、同法第57条から第60条ま
でに定められた差止め請求などの措置を講ずることができることになっています。

(3)専有部分の使用方法の規制  

 ペット飼育は、区分所有者の専有部分である住戸での一使用形態ですから、
本来は自由であるはずのものです。しかし、マンションでのペット飼育は、マ
ンションの構造等からみてペットトラブルが発生しやすく、その影響も深刻な
ものとなるため、近隣者の快適な生活の障害となるおそれが高いものです。

 したがって、大多数のマンションでは、専有部分の使用方法に関する規制の
一つとして、ペットの飼育を規制する旨を管理規約・使用細則にあらかじめ規
定しています。

   ****************************
   * 区分所有法からみると、ペット飼育問題は専有部分の     *
   * 使用方法についての区分所有者相互間の調整の一事項   *
   * としてとらえられています。                    *
   ****************************
 
5.原則としてペット飼育を禁止している管理組合のトラブル対応

 管理規約においてペットの飼育を全面的に禁止しているマンションでは、ペ
ット飼育に伴う問題点は多く、トラブルが生じかねない以上、マンションでの
快適な共同生活の維持を図る観点から、原則としてペット飼育を禁止せざるを
得ないと判断しています。

(1)規約の定め方  

 ペット飼育の原則的禁止の定め方は、いろいろありますが、大きくは次の2
つです。

   イ.小鳥、観賞用魚類以外の動物の飼育を禁止する。

   ロ.迷惑、危害を及ぼす動物の飼育を禁止する。

 しかし、ロ.の規定では「迷惑、危害を及ぼす動物」が特定されておらず、
人により理解が異なることがあり得ますから規定としては問題があります。

(2)管理規約の趣旨の徹底  

 全面禁止の場合、管理規約の表現は簡単なものにしかならず、その周知
徹底を図ることはなかなか困難です。

  このため、会報等で、常に呼びかける努力が大切です。

<例>
    会 報

  当組合は組合規約により、犬猫の飼育は如何なる場合でも出来ません。
  まだ飼っている人がいる場合は、直ちにやめてください。
  やめない場合は、最終的には法的処置をとらざるを得ない事にも
  なりかねません。


 玄関・エレベータホール等に非常に目立つステッカーを貼っているマンショ
ンもあります。

(3)違反者への措置  

 犬、猫等のペットを全面的に禁止しているマンションでは、一部で飼育して
いることが判明しても放置することが多く、結果として“黙認”した形になる
ことが見受けられます。

「勧告書」を活用することにより成果を上げている管理組合もあります。

<例>
  (初回)
  先般、犬・ねこ等の動物禁止についてのご注意文書を配布(中略)、
  今でも○宅では○○を飼育されているように思われます。

  現在も飼育しておられましたら、直ちにおやめください。

  この「勧告書」は、規約第○条に基づくもので、この規約の基は、
  「○に関する法律」です。

  やめない場合は、法的手段をとらなければならない場合もありますので、
  ご留意ください。



   (2回目)
  (中略)
  ところが、管理規約を無視して貴殿は○の飼育を継続していると
  判断せざるを得ないのですが、如何でしょうか。

  組合規約に基づき、又○月○日に開かれた、(中略)会議の決議
  でもありますので、再度この勧告書を送付します。

  来る○月○日迄に、組合へご回答を賜りたく、この状を、第2次
  勧告書と致します。

 

6.現に飼育しているペットに限定している管理組合
のトラブル対応



 管理規約で犬、猫の飼育禁止を示していても、現実に飼育する人が増加して
いる場合、現に飼育しているペットにのみ限って認め、それ以後はペットの死
亡等によるゆるやかな減少、消滅を待つという対応もあります。
「一代限り」の飼育許可制です。

このペット規定には、次のような問題点があり、遵守させることは難しい面が
あります。

イ.「一代限り」だけ認めるにしても、どの犬や猫がそれに該当するか
     のチェックが困難なこと。

ロ.「一代限り」のルール設定後は新たな飼育は禁止といっても、飼育
  している人がいる限り、連鎖反応的に飼育する人がでてくること。


 掲示例
   当マンションでは、ペット(鑑賞用の小鳥・魚類は除く)
   の飼育はできません。
   但し、暫定措置として平成○年○月○日現在飼育中の
   ペットで犬・猫等については、平成○年○月○日まで
   に管理組合に届出があったものについてのみ条件付き
   で飼育を認可しています。

              ○○マンション管理組合


「一代限りのペット飼育」規定を厳格に運用するには、ペットクラブ又はペッ
ト飼育委員会を組織化し、会則の制定及びペットに関する苦情処理の対応から
「一代限り」のチェック機能までの役割を持たすことが必要です。

チェック機能を厳密に行うために飼育している犬・猫の写真等を毎年ペットク
ラブ・ペット飼育委員会に届け出る等の約束事とすることです。
新たな飼育許可希望者に対しては、飼育禁止である旨を通知するのは、
理事会の役割になります。

7.一定条件を満たす場合に限り飼育許可の場合の対応
 犬、猫などの飼育禁止を定めている管理規約を改正したり、管理規約はその
ままにして例外的に一定の条件のもとに限定的にペット飼育を認める管理組合
が見受けられるようになってきました。
近隣居住者に一切迷惑をかけないように飼育者が努力し、飼育による苦情が生
じないよう工夫するのであれば、ペット飼育を限定的に認めようとする解決方
策です。
マンション内での犬、猫等の飼育は、多くの問題点がありますから、ペット飼
育が認められる条件は必然的にかなり厳しいものにならざるを得ません。

(例)飼育承認の申請書・誓約書・近隣居住者の同意書様式(要旨)

**********************************
         ペット飼育承認申請書 

   私は、犬、猫を飼育したいので、ペット飼育細則に従い必要書類を
   添付の上、申請致します。
     種類:  性別:  生後年月数:  体長及び体重:
     色:    登録年月日:    登録番号:  
     予防接種年月日:

**********************************
              誓 約 書

   ペット飼育に当たっては、法定事項及び○○マンションペット
   飼育細則を遵守し、他に迷惑をかけません。
   万一、本細則に違反した場合は、ペット飼育を禁止されても、
   これに、従うことを誓約いたします。

**********************************
           近隣居住者の同意書

   上記のとおり飼育することを承認します。

        右隣   号         印
        左隣   号         印
        下隣   号         印
        上隣   号         印
           添付:ペットの写真・予防接種済みの証明書
**********************************

その他、細則に定める事項
・飼育できる動物の制限
 
 (例)JR西日本では、手荷物制限で以下のように取り扱っています。
  「犬、猫、鳩またはこれに類する小動物(猛獣やへびの類を除く)で、
   長さ70センチ以内で、タテ・ヨコ・高さの合計が90センチ程度の
   ケースにいれたもの及びケースと動物を合わせた重さが10キログラム
   居ないのもの」

 (例)体長50cm以下、体重10kgキログラム以下と、規定している
    管理組合もあります。

・ペットクラブ(飼育者組織)への加入の義務付け
   役割:ペットトラブルについては、飼い主だけでなく
       ペットクラブも連帯して対処することとする
     :飼育マナーの研鑽・向上
     :飼育希望者の審査 等

8.ペット飼育の実態把握のためのアンケート実施

 共同生活上のルールに関するトラブルでは、ペット飼育の実態把握と並んで
マンション居住者の意向を十分把握することが大切です。

 *******************************
   但し、実態・意向調査を実施するとペット規定を改正して、
   ペット飼育を認める方向に進む可能性が高いので、調査を
   実施するかについては、理事会でよく検討することです。
 *******************************

  アンケート調査結果は、早急に掲示板・広報紙等で公表します。

  以下は、犬、猫の飼育禁止である場合に、ペット規定を再検討する
 際のアンケートのモデル(案)です。(選択肢は、省略)

     問1  (中略)、あなたは、犬・猫の飼育についてどのように
         考えていますか?
     問2   マンション内でペット飼育により、被害・迷惑を受けた
         と感じたことがありますか?
     問3  お宅では、現在ペットを飼っていますか?
     問4  問3で飼っていないと答えた方へ
          ペットを飼わない理由は?
     問5  問3で飼っていると答えた方へ
          どんな動物ですか?


9.ペット規約と使用細則

 マンションの居室内での動物の飼育を禁止したり、一代限り以外は禁止した
り、一定条件以外は飼育を認めなかったり、いずれにしてもなんらかのペット
規定を定めた場合は、本来自由に使用できるはずの専有部分の使用方法に関す
る規制の一つとして、その旨を管理規約として明示する必要があります。

 国土交通省公表の「平成15年度マンション総合調査結果」の、
「犬・猫の飼育ルールを定めているもの?」の質問についての回答は以下のと
おり です。

 ◎ 調査対象712管理組合(民間合算、完成年次は考慮せず。)

    管理規約        28.1%
    管理規約及び使用細則  22,5%
    使用細則        45.2%
    その他          4.2%

 平成16年1月に公表されたマンション標準管理規約では、(抄)第18条(
使用細則)関係にてコメントされています。

(3) ペット飼育を禁止する場合、容認する場合の規約の例は、
  次のとおりである。

『ペットの飼育を禁止する場合』
  (ペットの飼育の禁止)
 第○条 区分所有者及び占有者は、専有部分、共用部分の如何を問わず、犬
・猫等の動物を飼育してはならない。ただし、専ら専有部分内で、かつ、
かご・水槽等内のみで飼育する小鳥・鑑賞用魚類(金魚・熱帯魚等)を、使用
細則に定める飼育方法により飼育する場合、及び身体障害者補助犬法に規定す
る身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬及び聴導犬)を使用する場合は、この限
りではない。

『ペットの飼育を容認する場合』
(ペットの飼育)
第○条 ペット飼育を希望する区分所有者及び占有者は、使用細則及びペット
飼育に関する細則を遵守しなければならない。
ただし、他の区分所有者又は占有者からの苦情の申し出があり、改善勧告に従わ
ない場合には、理事会は、飼育禁止を含む措置をとることができる。


10.ペット判例

裁判例では、横浜ペット裁判が有名です。
この裁判は、『犬・猫についての全面禁止規約について』争われました。

経緯

1985年(昭和60年)3月 ペット禁止規約のないことを確かめて入居(全26戸)
1986年(昭和61年)2月 ペット飼育を禁止する規約制定
1986年(昭和61年)11月 管理組合が犬の飼育禁止を求めて横浜地裁に提訴
    一代限りは認めるとの和解案も不調(理事会同意せず)

1991年(平成3年)12月 地裁判決 (横浜地判平成元年(ワ)第1101号)
 『ペット禁止規約は、社会的合理性があり、有効。犬飼育は、認められない。』

1994年(平成6年)8月控訴審判決 (東京高判平成3年(ネ)第4490号)
 『マンションにおいてペットである本件犬を飼育することは、その行為によ
り具体的に他の入居者に迷惑をかけたか否かにかかわらず、それ自体で管理規
約に違反する行為であり、区分所有法6条1項に定める「区分所有者の共同の利
益に反する行為」に当たるものといわなければならない』


『ペット等の動物の飼育は、飼い主の生活を豊かにする意味はあるとしても、
飼い主の生活・生存に不可欠のものというわけではない。 (中略) 盲導犬
の場合は別として、本件犬が控訴人の家族の生活・生存にとって客観的に必要
不可欠の存在であるなどの特段の事情があることを認めるに足りる証拠はない
。したがって、本件規約改正は控訴人の権利に特別の影響を与えるものと
はいえない。』


ペット全面禁止の規約の場合ですが、判例によりますと、
「飼っただけで共同の利益に反する。そして、客観的に必要不可欠の存在であ
ることが認められなければ管理規約改正にあたっての承諾も要しない。」
と、判断されました。

参考書籍類
国土交通省公表「平成15年度マンション総合調査結果」
マンション管理実務研究会編・著「ペット飼育編」
横浜ペット裁判の東京高裁判決についての判例時報1509号71項
著者 根本寛 「マンションで犬と暮らす幸福」
著者 井本史夫 「集合住宅でペットと暮らしたい」
      


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