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カテゴリ:ブロニカ大好き
![]() オールドブロニカ巡礼の旅、今日はS2に次ぐ世代であるモデルECの系統からのご紹介です。 ブロニカ開発陣にとってS2後継機は大きな問題でした。「伝統の66」といえば聞こえが良いですが、早い話が「それしかない」。なにせS2以外はC2だけで、両者は実質同一モデルですから。だからニューモデルの失敗は経営の根幹を揺るがしかねない。そんな中で次世代ブロニカとしてデビューしたのがモデル「EC」でした。 ECはそれまでのメカニカルブロニカと一線を画すものでボディデザインもS系とは完全に変えてきました。S系ブロニカに空気を入れてパンパンに膨らませたようで、ローライSLRに似たスタイルは重厚感溢れるものです(実際、大きく重い)。 一見するとフルアルミダイキャストにみえますが外皮は従来と同じステンレスでマット加工されたものです。レザーも従来よりシボが荒めで無光沢のものが採用されました。全体的には落着いて高級感があります。 操作系はシャッターダイヤルが巻上と同じ側に配置されました。大きくてごついものなので見た目はあまりよくありませんが、操作性は歴代ブロニカでは一番優れています。レンズシャッターブロニカではスピードグリップとの兼ね合いからか再び巻上と反対側に移りましたが使用して見るとこの位置が理に適っている事を実感できます。 内部機構は違うメーカー製かと思えるほど変更されました。それはミラーメカニズム。従来のミラーダウン方式から上下二分割ミラー式への変更です。初代ブロニカはミラーを降下させるというSLRの常識を覆す方式でフランジバックの短いレンズでも使えるようにしました。 ECでは普通のSLRのようにミラーは上に上がります。そのままだとレンズに激突します。そこで下のほうで二分割しミラーの一部は従来のように下降させることでレンズとの激突をさけるようにしました。これにより従来のミラー降下式に比べ音、ショックとも軽減されました。またスクリーン遮光幕も不要になりました。 もうひとつの変革は電子シャッターの採用ですが、それだけではなくボディの大型化によりシャッター幕の助走距離が従来より伸びたことで、低速だけではなく高速側も従来より一層安定しました。 他にもミラーアップの採用、多重露出可能などS2で削られていた機能が付加され使い勝手は大きく向上しました。また「ベネチアンカーテンのようだ」と賞された内面反射防止策は歴代ブロニカでも最高の出来です。スクリーンも従来から大幅に改良され明るく見やすいものになりさらに交換可能となりました。 ![]() ![]() 小技としてはウエストレベルファインダーの開閉がワンタッチ式になりました。これはワンアクションでパタパタと閉じるもので、まるで手品を見ているようです。個人的にはこれを超えるウエストレベルファインダーは無いと思います。大きくなったボディを利用してフィルムバックに引き板格納用ポケットも採用されましたが、これもハッセルより遥かに進んでいました。 こうして見るとECは初代ブロニカの理想を今一度思い出し、フォーカルブロニカの集大成として開発されたのが分かります。優れた操作性、便利な機能、より安定したシャッターに完璧な内面反射防止策、全ては「より良い写真を得る為」だと思えます…しかし売れなかった…あまりにも現実は厳しい。 そして三年後に出たのがモデル「EC-TL」です。その最大の売りは「ボディ内測光によるAE可能」なことです。ミラーの裏側に3個の受光素子を配置することでTTL測光を可能にしました。しかも真中の一つは上向きになってます。つまりファインダーからの入射光を測り減算する為のものです。 だからEC-TLはTTL測光やAE撮影を行いたいとき専用のAEプリズムファインダーは不要です。AEは絞り優先。また瞬間絞込み測光を採用することで開放絞り値のボディ連動機構を持たないブロニカレンズでAEを可能にしました。 これを書くに当たって某雑誌のレビューを見ましたが、結論部分に「このクラスのカメラにEEは必要か」という一文があります。そうまだ時代は「EEカメラは初心者向けでプロやアドアマはマニュアル露出で」といった固定観念が幅を利かせていたのですね。 本当は露出の癖を把握すればマニュアルより正確な露出が可能です。マニュアルより細かくシャッタースピードが制御されるからです。先の記事を読むと当時のプロがAEを使いこなせていない未熟さを棚に上げてAE不要論を述べているのは明白ですが、まるでライカが当時のプロ達から「SLR不要論」を言われ続けNikonの後塵を拝したのを見るようです。 結局ブロニカはボディ内測光を次世代レンズシャッターモデルでは放棄してしまいます。初代SQではAEそのものが出来ないという仕様となってしまいました。しかし実際にEC-TLを持ち出すとウエストレベルファインダーでAE撮影ができる痛快さを堪能できます。TTL測光だけでも実に有用な機能です。 大きい重いというハンディを補って余りある使い易さがEC系の美点でしょう。ファンならメカニカルなS系か迷うところですが、なぁに両方揃えてしまえば大丈夫。迷いなし( ¨ )\☆ そんで今回装着したレンズはブロニカニッコールファンなら是非ともご家庭に一本置いておきたいというか神棚に祭りたい40mm。初期50mmも素晴らしくグラマラスでダイナマイトなレンズでしたが、40mmはさらにその上を行くど迫力レンズです。 どのモデルに付けてもお似合いですが、やはりレンズに負けない豊満なEC系のボディがバランスが良いですね(重さも素晴らしいです)。前回登場したコムラー45mmもECには実に良く似合うのですが、ニッコール40mmの迫力には負けますね。 そしてフォーカルブロニカの最後を飾ったのがEC-TLIIです。何とETRより後に発売されたんですね(二年後にSQが出たので場つなぎみたいなモデルですね)。 ![]() 特徴はデジタル制御、それに伴い何故かスペック的にダウン。ETRの陰に完全に隠れてしまい製造台数はどちらかというと少ない。しかしEL-TLより人気が無いから中古でもプレミアはつかない。うーん、誰かEC-TLIIを賛美してくれ、お願い。 今、当時のブロニカECのカタログを見返しています。いきなり善三郎社の顔写真が1ページ出てくるあたり気合が入っているなという感じですし善三郎フリークとしては「あぁやはりECは善三郎社長の流れのカメラだ」と一安心します。 そして社長の挨拶文に書かれている「スーパーフィニッシュによる高精度メカニズム」。スーパーフィニッシュですよ旦那。この時代はこんなコピーが使われていたんですね。少なくとも「人に優しい」というコピーより数段好きですね。 果たしてECはEC-TLを前提として開発されたのか、それともECの不振で急遽EC-TLが開発されたのか、ここんとこもファンとしては知りたいところです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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