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この広い空のどこかで今日もいい日旅立ち

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Feb 8, 2009
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カテゴリ:映画
モジリアニは、既に「モンパルナスの灯」('58)という名作を知っているので、これを超えられるわけもなし、アンディ・ガルシアがもう既にミス・キャスト、ほとんど期待も出来ぬと、敬遠していた「モディリアーニ 真実の愛」(2004)をやっぱりモジリアニ、見過ごせずようやく観た。ほぼ予想通りモジリアニの映画としては用無しだった。

救いは映像が絵画的なこと、ジャンヌ・エビュテルヌを演じるエルザ・ジルベルスタインがところどころ絵画から抜け出たイメージを持っていたこと、この2点――しかし、いかんせんそれが少しもドラマに収れんしていかぬから、ちとお粗末なのである。
偶像破壊を目指しているのならそれはそれでやりようもあろうに、ここに出てくる芸術家とみられる面々、どう見ても金満ブクブクの俗物の宴、明日なき命のはずのモジにしたところで設定上そうだというだけで単なる狼藉者、自業自得の死も同情の余地なし。

まるでヤクザ路線時代の東映に間違って発注したかと思える内容だが、これが米英独仏伊羅の6カ国合作とは、船頭多くして船山に上るのたぐいか。冒頭にこれはフィクションとの断りも逃げのようにしか見えず、さらに続くジャンヌの真実の愛の自己申告、これまた無くもがなのつけ足し、本編で真実かどうかすぐに明らかになるわい、という感じ。

むかし三島由紀夫が自作「」の映画化で、その主人公を演じたTV版加藤剛と映画版市川雷蔵を比較し、よく演じているにしても加藤剛には<或るはかなさ>が欠けている、と言ったものだが、これと同じことがアンディ・ガルシアとジェラール・フィリップにも言えるわけで、市川雷蔵もジェラール・フィリップも、その早世によってその作品を不朽にした<或るはかなさ>が少なからず揺曳していたのである。

ここにおける悪役はピカソだが、ピカソを悪役にすればするほどこのモジリアニの俗物性がフィーチュアされるがごとくで、それは同じ悪役でもリノ・ヴァンチュラ演じる画商モレルの、無言で映画の背景を奏でるがごとくの存在感とくらべても明らかだろう。
ジャンヌもまた、その姿かたちを超えて、アヌーク・エーメが同じそのはかなさを体現し、殉じていく説得力は、遠く遥かに優ってしまうのである。
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Last updated  Feb 8, 2009 02:58:05 PM
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