ら組三番町大安売屋碧眼の魔術士

現実逃避の日記なのか、もしくは廃人暮らしの記録であるのか。
　
　
その瞬間、言葉が出なかった。
　
　
どんな結末もまた、コエリス神に与えられた定めであると覚悟はしていた。
　
天使の両手杖を手渡された時、
心優しき聖騎士と約束していたのだ。
　
例え失敗に終わったとしても、
決して絶望したり、悲嘆にくれることのない「祭り」にして欲しいと。
　
　
大陸という仮想の空間だからこそ、どんなことにも挑戦できる。
　
そして、共に歩く仲間たちと馬鹿騒ぎをしながらだからこそ、
喜びは何倍にもなるし、哀しみは癒されていく。
　
　
そのことを何よりも伝えたかった。
　
　

　
　
物欲に走り、金儲けに走り、そして何かを入手することは容易いことだろう。
けれど、違う生き方をこの大陸で求め続けてきた自分にはできない。
　
　
運のなさをただ嘆いていても意味がない。
負け組、勝ち組などと言って、人と人を比べることにも興味がない。
　
単純に強さだけを求めたり、最高の装備を求めたりにも興味がない。
　
　
人との関わりこそ、自分にとっては最大の財産であり、
そこに着目した社会学的見地の戦史を綴り続けることを選択してきた。
　
　

　
　
誇り高き悪魔の両手杖と出会えたのも、この人との関わりを通してだった。
　
敬愛する方向音痴な聖騎士が、大陸ではかなり早い時期にそれを入手し、
戦史閲覧室を通してそのことを知った。
　
　
今まで、借金とか割賦などしたことがなかった。
人から物を買うということもなかった。
　
自力で手に入れるか、極貧生活を気の毒に思った同僚から貸してもらうか、
「あれはすっぱい葡萄だ」と強がりを言って避けているのが常だった。
　
　
なぜ、あの時は素直に「欲しい」と言葉に出せたのだろう。
なぜ、敬愛する方向音痴な聖騎士はこんなにも安く、割賦で売ってくれたのだろう。
　
今になってみると、何もかもが神に導かれていたような気がする。
　
　

　
　
戦史で成長していく武器の楽しさを示せとばかりに、
相対する性格を持ってやってきた二人の両手杖。
　
所有者の能力や特性に依存するのかもしれないが、
天使と悪魔、どちらの両手杖も自分にstrength、強さを与えてくれた。
　
　
もはや、約束されたものを感じざるを得なかった。
　
　
そして、人との関わりの中で生きることを決めた自分である以上、
その成果を仲間たちと見極めることは自然の成り行きだった。
　
　
不思議な力が働いて、何もかもが決められた方向へと進んでいく。
そんな感じがした。
　
　

　
　
Ｄ　誇り高き悪魔が礎となり成功に　２２口　２．５倍
　
Ｃ　穢れなき天使が礎となり成功に　１３口　４．２倍
　
Ｂ　誇り高き悪魔だけが生き残るに　１０口　５．４倍
　
Ａ　穢れなき天使だけが生き残るに　　９口　６．０倍
　
　
連絡体制の確保のため、店内連絡網以外の回線を切り、
時折、耳をすませる他は、淡々と受付をすすめていた。
　
Ｄのブックメーカーを勤めていると、何人もの冒険者が激励をくれた。
　
　
確定オッズを見た瞬間には、もう確信にも近くなっていた。
　
ここに集い、そして、信じてくれている仲間たちの思いに支えられ、
その進むべき道を示されていることが。
　
迷うことなく、成功ジンクスがあるウーノスの泉ではなく、
多くの仲間たちと共に生きるサンツスミコの街を目指して歩き出していた。
　
　

　
　
天啓はただ一方的に与えられるものじゃない。
宿命は流されるためにあるものじゃない。
　
　
何もかも楽しもうとする心
こうありたいと願う心
人の思いの強さを信じる心
　
数多なものに行くべき道は示されるものなのだろう。
　
　
まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。