カテゴリ:碧眼の魔術士の独白
現実逃避の日記なのか、もしくは廃人暮らしの記録であるのか。
コエリス神は確かにいる。そう信じたくなってきた。 聖夜、同僚の戦乙女に誘われて、第2闘技場へと出かけた。 同業組合会館で何かが起こるらしい。 ところが待ち合わせ場所にいた彼女は聖騎士に姿を変えていた。 訝しげな自分に向かって、「彼」はにやりと笑う。 「パラがいなくちゃ、駄目なんですよ・・・フフ」 (いや・・・私はいつもパラがいてくれなくちゃ駄目なんだけど・・・) 長いトンネルを抜けると、そこは雪国だった。 数多のサンタクルークたちが群がっている。 『男のスキルミラーディフェンス』(C)波紋 ただそれだけが武器となる場所だった。 サンタ見物を一時中断して入浴してから戻ると、 自分の周りには同じ緋色の衣をまとう冒険者たちがいた。 こ組のネタな聖騎士やえ組の陽気な魔術士が、 会館前で呼び込みと服装チェックまでしているのだ。 クリスマスウィークと言うことで緋色の衣に身を包んでいたが、 気がつけば、周りはもうサンタだか緋色の衣の冒険者だか、わからない状況だ。 「赤装備に着替えてお入りください」 そう言ってはいるが、決して強制するわけではない。 「無ければいいですよ~。でも着替えるともっと楽しいですよ。」 そんな中、え組の陽気な魔術士は、自らの街に走り宣伝をしたり、 ターラの地へ向かって赤い装備を集め回ったり、と急がしそうに動いている。 彼の機転によって、え組の冒険者は次々と増え続け、 もちろん、緋色の衣に袖を通すものも格段に増えていった。 正直なところ、頭を一発叩かれたような気分だった。 彼だってずっとその場にいて、身近らが楽しむことだけに没頭できたはずだ。 けれど、彼は、自分の時間を割いてでも、 この楽しみを多くの人と共有する道を選択した。 誰かの代弁者を気取って声高に換言を飛ばすことより、 自分はこう思うのだと偉そうに言うことより、はるかに意味があることだ。 傍観者として物言わぬ存在でいた冒険者も、 声をかけられ、そして、装備を手渡されれば、当事者に転じていく。 主体的に楽しむ存在を増やすのは、こうした積み重ねが大事なのだ。 本当に頭が下がる思いだった。 緋色の衣の補充に出かけた魔術士から連絡が入る。 「レイが出ました・・・」 聖夜の奇跡、彼は言う。 いや、違う。 みんなで楽しもうと走った君への、コエリス神からのご褒美だよ。 まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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