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さくらが試験中、終了迄の数時間はひとりで過ごさねばならない。
と思っていたら、ばったりさくらのクラスメートのママに会った。 お互いにこの学校を受験することは知っていたけれど、会えるとは 思わなかった。待ち時間の長さにため息をついていたところ、 素直に嬉しかった。 学校の側のドトールでお茶を飲んで過ごす。 受験生のママなら分かると思うけれど、話が尽きないんだなあ。 あっという間の数時間だった。 (でも不思議なことに、今いくら思い出そうとしても、何を話したのか 全然覚えていない。) お昼近くなって、二人で学校へ向かった。 私が控え室に入ってからも待つこと30分以上。 ようやく出てきたさくらを迎える。 「お疲れ様」と声をかけるが顔つきが暗い。 「全然できなかった…」と少し涙ぐんでいる様子。 「そうか、でもさ、さくらができないってことは 他のみんなもできないってことだと思うよ。 がんばったんだからいいじゃない。何か食べて帰ろうね」 と励ましながら内心(これはだめかなぁ…)という 何とも言えない気持ちになる私。 自宅に戻ると、すぐに仕事が待っている。 気を紛らわすのにはちょうどよいが、疲れているのではかどらない。 明日の発表も試験も気になる、あさっても気になる。 緊張と疲労をかかえたまま、翌日を迎える。 2月2日、今日の学校はお昼をはさんで面接がある。 私も紺のスーツ、そして朝から雨だった。 試験開始前の校長先生のお話が胸を打つ。 「今、受験生の皆さん、保護者の皆さんはどんな気持ちで ここにいらっしゃるのでしょう。 まだ小学生ですね、辛い思いも乗り越えてようやくこの日を迎えたみなさん、 できれば全員いれてさしあげたい。 でもそういうわけにはいかないので、やむなく試験を致します。 試験をする以上、どうしても不合格の方が出てしまいます。 が、たとえどんな結果が出たとしても、全員が必ずこれでよかったという 結果になるのです。どうぞ何も心配しないで下さい。 皆さん一人ひとりが存分に力を発揮できるように私も祈っています。 落ち着いて試験を受けてください」 子どもに、母親に、思いやりあふれる言葉に思わず涙が出そうになる。 本当に泣いている人もいる。 さくらはまだ昨日の結果が出ていないが、この中に昨日の不合格を 胸に抱いている親子もいるに違いない。どんな気持ちでいるのだろう。 周囲の子はライバル? そんな気持ちにはならない。 まだ幼い子ども達、並んで会場へ向かう彼女達ひとりひとりを 見送りながら、どうぞ誰もが笑顔で受験を終えられますように、 そんな祈りにも似た気持ちを抱く。 私だけではないと思う。それくらい、普段とはちょっと違う感情に なっている。 午後の面談が終わると本当に疲れ果てた。 さくらは今日もできなかったと言う…。 今日は両方の学校の結果が出るのだ。昨日の学校の合格発表は 夫が見に行っている。 さくらには教えていないけれど、私と夫だけが知る結果。 帰りの足取りは重かった。 帰宅すると夫はまだ戻っていなかった。 発表時刻から逆算すると、まっすぐ帰っていればもう自宅に いるはずの時間。即座に不合格だったんだろうなと思う。 1時間ほどして夫が戻ってきた。顔をチラッと見て結果を知る私。 やはり不合格。 そして今日はもう一つ、昼間受けた学校も即日発表。午後9時。 1つだめでもう1つだめ?さすがにどんよりした気持ち。 だめだろうな、でももしかすると? でも今日の学校、500人近く受験生がいた。 番号順に並んだ座席。抜けた子が殆どいない。 第一志望の子も多いはずだが、昨日の結果が影響しているのだ。 もう少し受験生が減ると思っていた。今年は本当に厳しいことを実感した。 実質倍率を考えると、どう考えてもさくらは無理だろうなと思う。 きっと不合格だろう、そう思うと9時にネットを見る勇気がない。 ようやくパソコンの前に座ったのは…9時半近かった。 さくらの番号は…やはり無かった。 これで1日、2日、続けて不合格。 そうかもしれないと思っていても、現実に『不合格』が決まった時、 その現実はかなり重い。 2度とその学校への入学を夢見ることはない。 絶対に入れないのだ。決定なのだ。 さくらには発表は明日3日ということにしておいて本当によかった。 大人の私がこんなに疲れるのだ。 まだ11歳の彼女がこの事実を知ったらどんなにショックを 受けるだろう。一応、出来ないなりにも2年以上、がんばってきたのだ。 実力の結果だから仕方が無い。それはその通り。 でも…まだ明日、そのあともあるかもしれない。 なんとしても、できる限り、持てる力を出せるようにしてやりたい。 ショックを与えるのは試験が終わった後でいい。 K先生の「不合格を子どもの耳に入れるな!」そのアドバイスを 心底有難く思った、2月2日の晩だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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