111003 ランダム
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GUINの匣

GUINの匣

風の群れ

京都へ向かう日、最寄り駅までの道を歩く。

車ばかりでの移動の毎日、最近運動不足が祟り、太ってきた上に緩み始めている。駅までぐらいは平気な顔して歩けねば。。。で、駅までの道筋について息子と話すと、私が知っている道とは全く違うところを通っていると言う。これは是非歩いてみようと思い、試してみる。
さすが子供たちは心地よく歩ける道を自然に見つけるらしい。なかなか快適。

学校傍の並木から団地の傍らを抜けて、全く知らない公園を通る。幹線道路の上にまたがる橋を二つ過ぎた。随分と下って駅の近くのこれまた普段は入らない公園に来た。こんなところは子供たちが遊ぶ事もないだろうなと思い、広場のブランコの方に目をやった。
芝生は伸びきって、人が踏んだ様子もない。草むらになりかかっている。そこに黒い点がいくつか。。。
見ると鳩が、半分ほど草に埋もれる様に群れている。傍の立ち木にも何羽かの群れが羽を休めている。草むらに群れて、何か啄んでいる様子に見入ってしまった。
別に何と言う事もない風景。自分でも「なんで立ち止まってまで見てしまうんだろうね」とつぶやき先を急ぐ。

公園を出て歩道を進むと、長い登り坂の歩道橋が行く手に。。。「しまった、さっきの横断歩道を渡っていれば…」ちょっと後悔。い、いかん!こんな事でくじけては。たったかたったか坂を上った。上りきった風景も初めて見る。眼下の薮の向こうに大きめのため池が広がった。「こんなところに大きなため池。」
その時、魚?が跳ねて大きな波紋を作った。波紋は大きく広がって行く。波紋が消えかかった時、谷に風が強く渡った。風が私にとどいた時、一瞬、バンドネオンの高い音色が私の中に広がった。
20秒ほどの風景。自分の中に焼きつけた。

こんな一瞬の思いを描けないものだろうか。。。
駅までの足を早めた。


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