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2010年07月31日
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カテゴリ:シリーズ幕末史

旅や移動をすることを、厳しく制限されていた江戸時代の庶民。

それでも、伊勢神宮への参拝だけは例外で、
事前に許可を得ていない場合でさえ、叱責程度で済まされるというほどに、
お伊勢参りというのは、特別扱いされていたようです。

固定した身分社会の中、伊勢神宮への参詣というのは、
まさに、一生に一度の庶民の夢でありました。


そうした中、やがて、庶民の間に伊勢参りブームが起こり、
そして、これが、時に、しばしば集団化し、
やがて、幕末になると、世直しを求める庶民の声とあいまって、
「ええじゃないか」という民衆運動へとつながっていきます。

今回は、そうした、江戸時代、伊勢参りブームの背景と、
幕末の「ええじゃないか」についてのお話です。



江戸時代に巻き起こった伊勢参りブーム。
その中で、大きな役割を果たしたと云われているのが、
御師(おし)と呼ばれる人々だったと云われています。

御師とは、いずれかの寺社に所属して、
参詣者を寺社に案内し、参拝・宿泊などの世話をしていた人たちのことで、
今でいえば、さしずめ旅行代理店のような存在。

御師たちは、農民と強いつながりを持っていて、
商品経済の発達によって、ゆとりが出てきた富裕な農民たちに対し、
さかんに、伊勢神宮への参拝を勧誘してまわりました。

一方、農民の中でも、日常の生活から離れ、
新たな知識や見聞を求めて旅に出たいと考える人が増えてきており、
御師たちの勧誘は、そうした気運にもマッチしました。

農民が旅に出るための口実として、伊勢神宮参拝は、ちょうど、うってつけだったんですね。

御師たちは、伊勢を旅する参拝者に対して、下にも置かぬもてなしをしたといい、
宿泊と豪華な料理での接待、参拝作法の手ほどきから観光案内まで、
まさに、至れり尽くせりの歓迎ぶりでした。
こうしたことが、また、口コミを通して広がっていき、
伊勢参りをする人が、さらに増えていくこととなります。



ところが、やがて、この伊勢参りブームは、さらに過熱していき、
少し形を変え、集団化していくことになります。

これが、お蔭参りと呼ばれるもので、
数カ月で100万人を超えるほどの規模の参拝者が伊勢神宮に押し寄せるといった現象が、
しばしば、起こりました。

こうした現象は、自然発生的に起こったものであると云われていますが、
その陰には、やはり、御師たちの存在があったようにも思われます。

お蔭参りには、伊勢神宮に向かう時の決まったスタイルがあり、
出身地や参加者の名前を書いた幟を立て、
「おかげでさ、ぬけたとさ」と囃しながら、街道を進んでいったと云います。

それが、やがて、この幟やお囃子も、
思い思いに好きな事を書いて、好き好きに囃すといったように変化していったようです。

この、お蔭参りの特徴としては、
親や主人などに無断で、参加するといったケースが非常に多く、
そのため、お蔭参りは、抜け参りとも呼ばれたりしていました。

さらに、もう一つ、特徴的なことは、お蔭参りには怪奇な現象が起こると信じられていたこと。
死人が生き返ったという話や、天からお札が降ってくるという話など、
俗説といえるような話が信じられていました。

お蔭参りに参加すれば、不可思議な霊験を受けることができる・・・。
こうしたことも、また、多くの人を惹きつけていった要因であるのかも知れません。



そして、やがて時代は幕末へ。
幕末になると、このお蔭参りが、「ええじゃないか」という民衆運動の形へと変質していきます。

「ええじゃないか」というのは、
必ずしも伊勢神宮参拝を目的としたものではないのですが、
お蔭参りと同じようなスタイルを取っていて、
幟には、世直しを訴えるスローガンが掲げられ、
「ええじゃないか ええじゃないか」というお囃子に合わせ、民衆が踊り歩きました。


「ええじゃないか」が始まったのは、慶応3年の夏頃。

直接のきっかけは、天からお札が降ってきたという噂が名古屋で広まり、
これに端を発して広がっていったものでありました。

そして、それが、京・大坂や東海道、中国、四国にまで及び、
幕末の各地で繰り広げられるようになっていきます。

蓄積された民衆の不満や不安。
そうしたフラストレーションのはけ口が、
「ええじゃないか」という形をとって、現われたものだといえるでしょう。


しかし、その一方、
この「ええじゃないか」は、
討幕派が幕府の統治機能の混乱を生じさせるために起こさせた、
政治的策略であったのではないか、という説もあります。

実際、討幕派が仕掛けた王政復古のクーデターの時、
これをカムフラージュするのに「ええじゃないか」の喧騒が役に立ったとも云われています。

幕末の混沌とした世相の中、なんとか世直しを願う庶民たち。

これを、討幕派が利用しようとしたのかどうかは、判然としませんが、
大政奉還・龍馬暗殺事件・王政復古クーデター・・・
きっと、それら一連の事件の背景には、
「ええじゃないか」のお囃しが、BGMのように流れていたのだと思います。





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最終更新日  2010年07月31日 23時31分18秒
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Re:お伊勢参りとええじゃないか(07/31)   かめのこ* さん
お伊勢参りに数ヶ月で100万人とは、凄いですね・・!
人気があったという話は聞きますが、まさかそこまで大人気だった時期もあるとは驚きました。
しかも旅行代理店が存在していたとは(笑)

これからもいろいろな歴史談義、楽しみにしています!

p.s. 先日は当方の日記にコメント頂きありがとうございます。
実は今日までコメント頂いている事に気付いていませんでした・・・本当に失礼致しました。
遅ればせながら返信コメントを書きましたので、よろしければご一読下さると嬉しいです。
(2010年08月01日 02時41分32秒)

Re[1]:お伊勢参りとええじゃないか(07/31)   gundayuu さん
かめのこ*さん
おはようございます。

>お伊勢参りに数ヶ月で100万人とは、凄いですね・・!
>人気があったという話は聞きますが、まさかそこまで大人気だった時期もあるとは驚きました。

江戸時代に3回くらいピークがあって、60年周期の割りで発生したんだそうです。

>しかも旅行代理店が存在していたとは(笑)

江戸時代には、意外なくらい今と似たようなシステムがあったりしますね。昔の人も考えることは同じなんだと思います。

>先日は当方の日記にコメント頂きありがとうございます。

こちらこそ、かめのこ*さんの大河ドラマレポートは、いつも楽しみにしています。
(2010年08月01日 06時29分28秒)

へえええ~~~@@   グランマ・ケイコ さん
ほんっと、、ここでも、、
へえええ~~~~の連続です。

60年周期で、、100万人とは驚きです@@

お伊勢参りは、、
一度行きましたが、、
なにか、、こう厳かな気分になりましたし、、
気持ちが清清しくなったことを覚えています。

人間の心理や行動は、、
どの時代でも同じなのですね。
その心理を巧みに利用することで、、
歴史を動かした人々のしたたかさにも驚きです。

人間というのは、、
どの時代にあっても、、
基本形は同じなのかなとも思いました。

歴史は繰り返す!!

なるほど・・納得です。

ありがとうございました。

(2010年08月02日 01時04分15秒)

Re:へえええ~~~@@(07/31)   gundayuu さん
グランマ・ケイコさん
こんばんわ~

>お伊勢参りは、、
>一度行きましたが、、
>なにか、、こう厳かな気分になりましたし、、
>気持ちが清清しくなったことを覚えています。

そうですね。
日本を代表する氏神様。
古代からの祭祀の中心地ですからね。
とても厳かな気分になる神社ですね。


>その心理を巧みに利用することで、、
>歴史を動かした人々のしたたかさにも驚きです。

そうしたことを考えそうなのは、岩倉具視や大久保一蔵ですね。
この2人のしたたかさは、驚嘆に値します。

>人間というのは、、
>どの時代にあっても、、
>基本形は同じなのかなとも思いました。

>歴史は繰り返す!!

そうですね。
全くそう感じます。
現代でもそうした人たちが、社会を動かしているのかも知れませんね。
(2010年08月03日 23時18分38秒)

Re:お伊勢参りとええじゃないか(07/31)   マリア8765 さん
本当にお詳しいのですね。
6月に伊勢神宮に行ったのですが、崇敬会でのお話も同じようなテーマでした。

伊勢神宮は御師とかいて「おし」と読み、熊野大社では御師と書いて「おんし」と読むのですよね。
どちらも、いまのツアーコンダクターのもののようですね。

熊野大社では小栗判官のお話、伊勢神宮でもやはり蘇りやお金が落ちてくる話があるのですね。
やはり、そう行ったエピソードが人々を引き付けるのでしょうね。

私は、お伊勢参りでは犬の参拝の話が好きです。

お賽銭用の小銭とお神札(ふだ)を首から下げた犬が江戸時代には飼い主の代わりに「代参(だいさん)」したのだそうです。
何人もの手を経てちゃんと帰宅する犬のエピソードがいくつも残っているのだそうです。

ただし、現在は神宮はペットの立ち入りは禁止になっていますが。

我が家も、犬を飼っているのですが、絶対におしっことかウンチとかさせないので、出来ば一緒に参拝したいものです。
昔はおおらかだったのですよね。
(2010年08月05日 18時59分47秒)

Re[1]:お伊勢参りとええじゃないか(07/31)   gundayuu さん
マリア8765さん
おはようございます。

>本当にお詳しいのですね。

いえいえ、マリアさんこそ、こまめに神社仏閣に行かれていて、古代史にはとてもお詳しいので、そのあたりはとても私は及びません。

>伊勢神宮は御師とかいて「おし」と読み、熊野大社では御師と書いて「おんし」と読むのですよね。
>どちらも、いまのツアーコンダクターのもののようですね。

そうみたいですね。「おし」という呼び方は伊勢神宮だけで、他は「おんし」なのだそうですね。

>熊野大社では小栗判官のお話、伊勢神宮でもやはり蘇りやお金が落ちてくる話があるのですね。
>やはり、そう行ったエピソードが人々を引き付けるのでしょうね。

俗信とは言うものの、当時の人は真剣だったのでしょう。
戦前くらいまで、特に地方では色々なことが信じられていたみたいですね。
それが全くなくなったのは、経済高度成長の頃くらいではないですかね。

>お賽銭用の小銭とお神札(ふだ)を首から下げた犬が江戸時代には飼い主の代わりに「代参(だいさん)」したのだそうです。
>何人もの手を経てちゃんと帰宅する犬のエピソードがいくつも残っているのだそうです。

へええ、そんな話があるんですか。
賢いワンちゃんですね。

>ただし、現在は神宮はペットの立ち入りは禁止になっていますが。

ペットの管理をちゃんとできる人だけなら良いでしょうけど、その線引きは難しいですしね。
でも、確かに昔はおおらか、また、今ほどものごとに神経質ではなかったのかも知れませんね。
(2010年08月06日 06時04分02秒)

おはようございます。^^   picchuko さん
お伊勢参りのお話が、幕末の世の立て直しにまで繋がってくるとはとても興味深い話ですね~。
すごくワクワクしてきました。
こういう表だってではないけれど、時代を動かす話って大好きです!
いつの時代も結局時代を動かすのは民衆なんでしょうね。
そして、その影に思いもよらぬ人物が存在している。
う~、ワクワクしちゃいます。^^

お伊勢さんは私も大好きな場所で、あの五十鈴川のほとりに立ち、あの深い木立の中を歩いていると、それこそ霊的な体験もできそうなくらい、神聖な気分になれますよね。
そのお伊勢参りの背景に御師の存在があったとは驚きましたし、読みながら納得もしました。

そして、香川に住む私は、お伊勢参りと同じようなことが金毘羅参りでもあったのだろうと、それも想像しながら読ませて戴きました。
私の町がその金毘羅参りの海の玄関口であったものですから、、、そして、それこそ金毘羅さんのご神体が最初に流れついた場所が私の家から徒歩10分足らずの場所にあります。
gundayuuさん、是非いつか金毘羅さんについても教えて下さいね~。^^ (2010年08月08日 05時11分30秒)

Re:おはようございます。^^(07/31)   gundayuu さん
picchukoさん
こんにちわ~
いつも有難うございます。

>いつの時代も結局時代を動かすのは民衆なんでしょうね。

そうですね。
今のように民主主義という考え方がなかった時代であっても、世論の動向は無視できないものです。
民衆の後押しが歴史を左右していることは、間違いないです。

>お伊勢さんは私も大好きな場所で、あの五十鈴川のほとりに立ち、あの深い木立の中を歩いていると、それこそ霊的な体験もできそうなくらい、神聖な気分になれますよね。

日本の古代からの祭祀の中心地ですし、
天皇家の守護宮ですからね。
私の時代は、小学校の修学旅行といえば、必ず伊勢神宮でした。

>そして、香川に住む私は、お伊勢参りと同じようなことが金毘羅参りでもあったのだろうと、それも想像しながら読ませて戴きました。
>私の町がその金毘羅参りの海の玄関口であったものですから、、、そして、それこそ金毘羅さんのご神体が最初に流れついた場所が私の家から徒歩10分足らずの場所にあります。
>gundayuuさん、是非いつか金毘羅さんについても教えて下さいね~。

金毘羅さんにも、きっと御師がいたのだろうと思いますね。
それが、金毘羅さんが栄えた要因なのかもしれません。
金毘羅さんの歴史というのは、私もほとんど知りません。
♪こんぴらふねふね 追い手に帆かけて しゅらしゅしゅしゅ
の唄の響きは、とてもユニークで興味がありますが・・・。 
でも、picchukoさんゆかりの神社なんですから、ちょっと調べてみようかな。
(2010年08月08日 12時34分32秒)

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