|
カテゴリ:本のこと
田村信義/写真と文 偕成社 この本を、少し情け無い気持ちで読んでいる。著者は 田村信義先生。道ばたに生えている草花を見分けて、ちょっとした一品に仕立てる――そんな慎ましくも豊かな暮らしの知恵が詰まった一冊だ。 ページをめくるたびに、世界が少し広がる。今までただの雑草だと思っていたものに名前があり、季節があり、食べ方がある。ああ、こんなふうに自然と寄り添って暮らせたら、どんなにいいだろう。そう思う一方で、胸の奥にざらついた感情が引っかかる。 先日はヨモギを天ぷらにして食べてみた。意外と美味しかったのだが 「道ばたの草なんか食べ始めたら、私もおしまいだ」 どこかでそんな声がする。貧しさとか、行き詰まりとか、そういうものと結びつけてしまう自分がいる。豊かさとは、スーパーでパック詰めされた食材を買うことだと、いつの間にか思い込んでしまっているらしい。デパ地下だって大好きだ。 もちろん、 先生には何の罪もない。むしろ逆だ。足元にある恵みを見つける目を持ち、それを分け与えてくれている。問題は、私のほうにある。 私は、自然に近づくことを、どこかで「敗北」だと感じている。購入することから離れることに、不安を覚えている。けれど本当は、その逆かもしれない。名前も知らなかった草を知り、食べられると知ることは、世界を貧しくするどころか、むしろ豊かにするはずなのに。 ページの中では、道ばたの草が、ささやかな料理に変わっていく。おひたしや和え物、時には軽い炒め物に天ぷら。どれも派手ではないが、きちんと「一品」になっている。そのことが、妙に心に残る。 私はまだ、その一歩を踏み出せずにいる。ギシギシした気持ちのまま、本を閉じる。でも、次に道を歩くとき、ほんの少しだけ足元を見る時間が増えている気がする。 それだけでも、たぶんこの本を読んだ意味はあったのだと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2026.04.17 07:00:06
コメント(0) | コメントを書く
[本のこと] カテゴリの最新記事
|