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カテゴリ:本のこと
『おなべおなべにえたかな?』 こいでやすこ/さく 福音館書店
春の日のやわらかい光のなかで、一冊の絵本を開いた。 ページの中では、きつねのきっこたちが、おおばあちゃんに頼まれて、にんじんスープのおなべの番をしている。けれど、「味見」が止まらない。ひとくち、もうひとくち、と繰り返すうちに、気がつけばおなべは空っぽになってしまう。 空っぽになったおなべが、「お水を入れて」と話しかけてくる。おなべがしゃべるなんて、思わず笑ってしまう。叱られる前の緊張や、深刻な失敗の空気ではなく、どこかあたたかい余白があるのが、この絵本のやさしいところだと思う。 きっこたちは、たんぽぽの花とお豆を使って、新しいスープを作り直す。 たんぽぽの花なんて、食べられるのだろうか。そう思いながら読んでいたとき、先日読んだ『道ばたの食べられる山野草』のことを思い出した。そこには、たんぽぽの花には裏にだけ衣をつけて天ぷらにするとおいしい、と書かれていた。 道ばたの草を食べることに、どこか引っかかりを感じていた自分。あのときの、少しぎこちない気持ち。それが、この絵本を読んでいるあいだに、少しずつほどけていくのがわかった。 きっこたちにとって、たんぽぽは特別なものではない。困ったときに手を伸ばせばそこにある、春の材料のひとつ。失敗を埋め合わせるための、ささやかな工夫だ。 その軽やかさが、いい。 「道ばたの草なんて」と身構えていた気持ちが、少しゆるむ。食べられるかどうかよりも、「使ってみようかな」と思える余白が生まれる。 絵本の中のおなべは、ことこととやさしく煮えている。大げさではないけれど、たしかなあたたかさがある。 ページを閉じたあとも、その余韻はしばらく残った。 たんぽぽの花の天ぷら、作ってみようかな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2026.04.21 10:05:57
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